瀬戸内、鹿児島、沖縄のほとんどの離島を訪れた。ところが、それは日本全国7000島のひと握りにしかすぎず、有人離島のさらに先にある無人島へと興味が移っていった。
秘島には清水さんならではのこだわりがあり、以下の6つの条件を満たした33島が、この図鑑に収まっている。
1 “遠く離れた感がある”
2 “孤島感がある”
3 “ものいいたげな佇まい”
4 “行けない”
5 “住民がいない”
6 “知られざる歴史を秘めている”
そんななかでもおすすめの秘島を教えてもらった。
1:南硫黄島(東京都小笠原村)
「ピカイチなのが、南硫黄島(東京都小笠原村)ですね。人が住んだことがなく、上陸者も一部の漂流者と研究者のみ。だからネズミもいないんです。形もいちばん格好いい。普段は頂が雲で隠されていて、周遊したさい、一瞬見える頂がまた、感慨深い」
年1回おがさわら丸で実施されている硫黄3島クルーズに参加すれば、島をじっくり遠望できるチャンスがあるそう。
2:沖大東島
「もう1島がラサ島の愛称で知られる沖大東島(おきだいとうじま)。ラサ工業という企業の私有地なんですが、戦前はリン鉱石採掘で島がボコボコになり、戦後は射爆撃場として、さらにボコボコに。なんとも悲哀たっぷりでしょ。でも、近づけないから仔細な現状がわからない。惹かれますねー」
(出典/国土地理院)
そんな話だけでも、いろいろ想像力をかきたてられる。島の姿形や場所だけではなく、歴史が丁寧に辿られ、読むだけで旅心が満たされてしまうのが、この『秘島図鑑』だ。
ほかにも、番外編として、“本籍を移す”、“浜辺の漂着物をチェックする”、“ネズミと島の関係を考える”など、行けない秘島を楽しむ15の秘策を掲載。
「秘島図鑑には入れませんでしたが、1950年代までニホンアシカが確認された久六島(青森県深浦町)や、日本最大の無人島である渡島大島(北海道松前町)なども気になります。好奇心とロマンを入り口に、秘島のことをどんどん調べてみる。そこには美しさだけでなく、今日を考えるための、日本の縮図が見えてくるはずです」
◎文・構成/大石裕美 撮影/中村文隆