8月15日、土星が衝(しょう)、地球に一番近い日に
2022年8月15日、土星が衝(しょう)となり、見頃を迎えます。衝とは地球から見て土星が太陽の180度反対側の位置に来ること。地球にいちばん近づく時期であり、8月中なら日没から日の出まで、暗いうちはほぼ見られます。火星、木星、土星など、地球の外側を回る惑星だけに起こる現象です。
土星といえば環(リング)ですね。天体写真で見るようなカッコイイ環を見るなら、この夏は大チャンスです。
環を見るには望遠鏡が必要です。口径5センチくらいの望遠鏡でも環の存在は見分けられるかもしれませんが、もし、これを機に天体望遠鏡の購入を考えたいという方には、口径10センチをおすすめします。レンズは倍率100倍くらいから試してみましょう。望遠鏡の性能や、空のコンディションによりますが、環が見つけられるはずです。
今年の土星の見どころはまさに環。傾き具合がちょうどよく、幅も広いです。実は土星の環は毎年、見える角度が変わります。今年はいかにも土星らしくカッコイイのですが、来年はもっと平べったくなり、25年には環が真横になって消えてしまいます。土星の環は幅は数万キロメートルありますが、厚みが100〜200メートルしかないからです。まるで環などないように見えるので、「環の消失」といいます。私も初めて土星に望遠鏡を向けたときがこの状態でした。
もし観測会に参加する機会があれば、環の筋に注目してください。土星の環は氷の粒やチリが集まってできていますが、物質が集まって濃く見えるところと、粒が少なくてすきまが空いたように見える「間隙」があります。いちばん太く黒く見えるのが「カッシーニの間隙」と呼ばれます。1675年、イタリア出身でフランスで活躍した天文学者のジョバンニ・カッシーニに発見されたことからこの名がつけられました。
ちなみにカッシーニといえば、NASAが飛ばした土星探査機の名前でも知られます。1997年に地球を出発し、スイングバイを繰り返して土星まで飛行、数多くの観測データを送ってくれました。2017年にその役目を終えています。
見えなくても楽しい! 生命がいるかもしれない土星の衛星たち
土星には80個以上の衛星が発見されていますが、大きなものでさえも天文台の観測会などでないとなかなか観測するのはむずかしいと思います。それでも、ぜひ覚えてほしい有名な衛星をいくつかご紹介しましょう。
ひとつは太陽系の中でも最大級のタイタン。木星の衛星ガニメデに次ぐ大きさです。タイタンには大気があります。現在、はっきりとした大気の存在が確かめられている衛星は、太陽系広しといえどもタイタンだけです。しかもその大気圧は地球以上とされています。さらに大気のほとんどが窒素。地球と同じです。窒素以外には有機化合物が多いので、それを材料にして生命が生まれているかもしれない、と注目されている衛星です。
そんなこともあって人間が住めるかもしれない「ハビタブル(Habitable)」な天体候補に挙げる人もいますが、いかんせん寒すぎるため人間が住むのは難しいでしょう。
もうひとつ生命がいるかもしれない衛星として注目を集めているのがエンケラドス。ここはなんと! 間歇泉があります。もちろん温泉が湧いているわけではありませんが、液体が存在していることは確かです。エンケラドスは土星の近くを回っている衛星です。土星の重力を強く受け、しょっちゅう引っ張られているため内部に摩擦が生まれてその熱で液体が蒸発して吹き出しているようです。その液体の中に何か生命がいるかもしれないと期待されているわけです。
もうひとつ。とても小さくて、公転周期が1日未満しかない衛星がミマスです。何が有名かというと、この形です。何に見えますか?
言わずと知れたデススターですね。クレーターの真ん中にある山も、ビーム発射口のようで、よくできています。
いて座の目印はティーポットだ!
土星はしばらく、やぎ座のあたりにいます。やぎ座のひとつ西側にあるのが、いて座です。東京かからだと高度が低めなせいか、ちょっと見つけにくいかもしれません。
しかし下の図をご覧ください。いて座はティーポットの形を目印にすれば、簡単に見つけられます。ポットのフタから上に伸びていく線が、矢になります。
いて座は天の川のいちばん明るく見えるところ、つまり天の川銀河の中心の方角にある星座です。夏休みには土星と天の川、たっぷり楽しんでください。
構成/佐藤恵菜