水辺でキャンプを楽しむなら、釣りをしないのはもったいない! 琵琶湖なら小鮎(こあゆ)釣りがおすすめ、とはキャンプ自転車店を経営するサイクリスト・佐藤聖司さん。優雅で口福感満点の佐藤さんの釣りキャンプスタイルをご紹介します。
子どもでも簡単に釣れる小鮎釣りがおすすめ
「今年は、雨が少なかったから、あんまり釣果が、あがってこないですね。去年は、1日で何百匹も釣れたのになぁ」
琵琶湖に流れ込む小川の隅に立ち、仕掛けに撒き餌を詰めながら佐藤さんはそう話した。
広い空、遠くの山並み、そして、ゆっくりと流れる清流。そこに潜む体長10㎝ほどの小鮎を狙っている。
小鮎とは、一般的な鮎の稚魚とは異なり、成魚でも10㎝程度にしか育たない琵琶湖特有の魚種だという。例年、5~7月末までが最盛期で、9月1日から11月20日までが禁漁となる。
「小鮎は、子供でも簡単に釣れて数も出る。だから飽きずに楽しめます。しかも食べたら美味しいんですよ。琵琶湖に流入している河川なら、たいていのところで釣れるし、入漁料もいらないから、こんな手軽な釣りはなかなかないんじゃないかな」
絵に描いたように穏やかな小川で小鮎釣りを楽しむ佐藤さん。「琵琶湖の小鮎は、ほんと美味しいからクセになりますよ」
佐藤さんの小鮎釣り道具
振出式の渓流竿を2本。長さは、2.7mと5.4m。川幅に合わせて使い分ける。仕掛け、ウキなどは、おかきの缶に入れて収納。これが一番使いやすいそうだ。
「仕掛けは市販品もありますが、好みのものを自作するのも楽しいですよ」
針の下に付けた小さなカゴなどに入れる撒き餌は、シラス、エビ、小麦粉などを配合。
良型の小鮎を次々と釣りあげる佐藤さん。自然と子供のような笑顔になる。
釣りをしている間は鮮度を保つため、バケツなどに入れて生かしておく。
自転車を楽しむコツは「急がないこと」
竿を出してから1時間ちょっと。かなり厳しい状況から脱し、最初の1匹が釣れた。続けて少しだけ流れが速くなった川の隅に仕掛けを投入する。すると、またまた釣れた。
「モテ期が来たよ~」とご機嫌の佐藤さん。そこから1時間ほどでなんとか8匹を釣りあげた。
「今日はキャンプだし、こんなもんで十分だね。じゃ、キャンプ場までサイクリングを楽しみましょうか」
近くに停めていたロングテールバイクという大量の荷物を積める自転車に、釣り具を収めたら出発だ。
通称「ビワイチ」の低速ルートにも指定されている湖畔を通る道を行く。佐藤さんは、水辺の景色を楽しみながら静かにペダルを踏んだ。
「自転車を楽しむコツは、急がないこと。自分のペースで自由にゆっくりと走ればいいんじゃないかな」
ロングテールバイクなら道具も楽々積める
「バッグがデカいから、ホイホイ放り込めるのがロングテールバイクの魅力です」。1泊程度のキャンプ道具は、片側のバッグに収納できる。
釣り具は、すぐに取り出せるよう、カゴに入れて収納している。「ストラップは廃チューブをリサイクルしました。これが一番ですよ」
キャンプ料理はシンプルに素揚げが一番
この日の目的地である湖畔のキャンプ場に到着。自転車の後方に取り付けられた特大のバッグからキャンプ道具を取り出し、手際よく組み立てた。続いて、先ほど釣ったばかりの小鮎を食べる準備に取りかかる。
「キャンプも料理もシンプルに限るね。小鮎は、素揚げにするのが一番。うまそうでしょ」
キャンプ場にいい香りが漂ってきた。海のように広い湖面を眺めながら、佐藤さんは琵琶湖の恵み=小鮎を食べ、のんびりと水辺の休日を楽しんだ。
小鮎は、腹をさばき内臓を出す。水洗いして、小麦粉をまぶして油でじっくり揚げるだけ。シンプルなのだ。
材料で味が変わる
使った材料は、小麦粉、油、塩だけ。油と塩は、いいものを使うと、味が格段に変わるそうだ。この日は、オリーブオイルと岩塩を使用。
「メスティンは片側に油を寄せて揚げられるから、油の量を節約できます。小鮎サイズで便利です」
これぞ琵琶湖の味!
「プリップリに柔らかく味もしっかりとして、ほんと美味しいです。これぞ琵琶湖の味です!」春先や余裕があるときには、山菜や野草を摘んで一緒に揚げて食べるそうだ。
自転車釣りキャンプの旅道具
テント、シュラフ、マット、テーブル、チェア、コンパクトストーブ、メスティン、ランタン、食器など。釣り具もたっぷり。竿2本、仕掛けセット、エサのほか、釣った魚を入れる折りたたみバケツ、小さなクーラーバッグもあり。
釣り×キャンプを楽しむ3か条
- 食べられる魚種を釣る
- 時間にゆとりを持つ
- 簡単な装備で気軽に楽しむ
※構成/山本修二 撮影/奥田高文 協力/六ツ矢崎浜オートキャンプ場
(BE-PAL 2022年8月号より)