熊本県、阿蘇の南麓に位置する南阿蘇村は、泉質多彩な温泉や日本名水百選の白川水源などがあり、水の生まれる郷としても親しまれています。この夏、筆者が家族3人で旅した南阿蘇の高原に建つ、ウッディなペンションでのひとときをご紹介します。
暮らし始めて36年、毎日、空の色に感動
大阪から阿蘇に移住してきて36年になるという酒井清行さん、由美子さんご夫妻。今でも買い出しの車中から見る、空の色に毎日感動しているという。「紫やオレンジ、彩り豊かな阿蘇の空を毎日見られることが何より贅沢」とおっしゃいます。食品メーカーの営業として全国を飛び回っていた酒井さん、いろんな所を見てきた中で、阿蘇の広大な景色に魅了されて、移住を決めたそうです。
「flying jeep」って、どんな意味?
航空会社のグランドホステスとして働いていた由美子さん(以下、お母さん)から「flying」、車好きの清行さん(以下、お父さん)から「jeep」という名前をとって、飛ぶはずのない車を、二人の力で飛ばしていこう!との想いを込めて「flying jeep」と名付けたそうです。ちなみに、お母さんは小学5年生の時には、もう航空会社で働くことを決めていたというから驚きです。当時、ANAの飛行機に乗った際、窓から差し込む太陽の光が、あまりにも優しかったと。その時に、この会社で働きたいと心に誓って勉強に励まれたそうです。感性豊かなお母さんのエピソード、素敵ですね。
たくさんのドラマが詰まったペンション「flying jeep」
竜馬のように生きる!脱サラして阿蘇でペンションを始めることに
大阪で生まれ育った幼馴染のお二人が、なぜ阿蘇でペンションをやることになったのでしょうか?そこには驚きのエピソードがありました。昔から本が好きなお母さんは、ある日「これ面白いから読んでみて」と、一冊の本をお父さんに手渡します。それまで全く本を読んでこなかったお父さんは、すっかりその本の世界にのめり込みます。そして「竜馬になりたい!脱藩じゃ!」と4年勤めた会社を退職し、独立を決意します。本への免疫がなかったからこそ、司馬遼太郎が描く『竜馬がゆく』の世界に入り込んでしまったんだよ〜と、しっかりとこちらの笑いもとりながら、当時を振り返るお父さん。
当時、食品メーカーの営業として働いていたお父さん、ご実家が自営業であったこともあり、会社都合による突然の転勤や、会社での働き方に違和感を覚えていたタイミングでもあったそうです。司馬遼太郎の本を読み漁り、「竜馬になりたい!失敗を恐れずチャレンジしたい!」との想いから、阿蘇でのペンション開業を決意したそうです。
バブルがはじけて、リーマンショック、熊本地震、コロナ……
36年前、当時は阿蘇にペンションが沢山できている頃。70~80軒はあった阿蘇のペンションも、熊本地震以降、30軒ほどに減ったそうです。バブルがはじけて、リーマンショックが起こり、熊本地震、コロナ禍と、いくつもの困難を乗り越えて、今まだペンションを続けていられるのは、支えてくれた沢山の人たちがいたからだと語られます。熊本地震では、棚や食器も倒れ、電気も水道も通らない、もう全てがどうでもいいと思えてしまうくらい呆然とする中、市役所の人たちやお客さんたちが、片付けを手伝いに来てくれたそうです。沢山の応援をもらい、頑張らないわけにはいかない!と立ち上がり、震災後、どこよりも早いタイミングでペンションを再オープンすることができたそうです。
ダイナミックにチャレンジし続ける“竜馬”のようなお父さん、それを温かい眼差しで見守り、やってみなはれ!と勇気づける“おりょうさん”のようなお母さん。そんなお二人の元気な掛け合いを見ていたら、私たち家族も元気になってきました。創業からお二人を支えてきた周りの方たちも、お二人から元気をもらっているんじゃないでしょうか。
寝るまで続く“美味しい時間”
こちらのペンションの特徴はなんと言っても、お父さんが作る本格的なフルコース!アットホームなお宿で、ゆっくりとした時間を過ごしながら、しっかりとしたコース料理がいただけるなんて最高です。フルコースといっても、畏まった雰囲気ではなく、お父さん・お母さんの二人が最初から最後までサーブまでしてくださいます。先にお風呂を済ませて、リラックスした格好で、子供も一緒に食事ができるのがとっても嬉しかったです。
雰囲気あるお食事スペース
お父さんの挨拶でフルコースが始まります
子供も大満足のミニフルコース
お腹いっぱい食べたら、お部屋でまったり時間を過ごします。
22時の焼きたてチーズケーキ、という幸せ
フルコースの夕飯の後、もう一つの楽しみがやってきます。お父さんが、もう25年焼き続けているというチーズケーキです。食事スペースに足を運べば、焼き立ての温かいチーズケーキとドリンクをいただくことができます。珈琲やソフトドリンクに加え、お父さんが旅先で見つけた焼酎など、アルコールのドリンクバーも楽しみの一つです。
夜はお腹いっぱいという方には、翌朝、冷たいチーズケーキをサーブしてくれます。焼き立てのチーズケーキはフワフワしっとりで美味しかったのですが、冷たいチーズケーキも今度は食べてみたいです!
見てください、この美味しい割れ目〜!
22時の焼き立てチーズケーキ、家で叶えるのは難易度高いですよね!ぜひ、flying jeepに食べに行きましょう!
目が覚めたら、また美味しい時間
朝になると、今度は手作りの焼き立てパンが登場します。定番のスクランブルエッグにウインナーもうれしいですね。
コンパクトなキッズルームにも楽しみがいっぱい
子連れには嬉しいキッズルームもあります。漫画やDVD、オセロや将棋、おままごとセットまで。食事スペースの横にあるので、子供の食事が早めに終わったら、キッズルームで遊んでもらって、親はゆっくり食事を楽しめるのも嬉しいですね。
南阿蘇の大自然に佇むペンション「flying jeep」。
そこには、誰もが肩ひじ張らずに、リラックスしてフルコースを味わえる“美味しいひととき”がありました。そして何より、お客さんとの交流を心から楽しんでいる、酒井さんご夫妻との楽しいひとときも、旅に彩りを添えてくれました。
「また、すぐ帰ってくるね!」と、別れがちょっぴり寂しくなる、そんな心の故郷のような場所です。
南阿蘇にお越しの際には、ぜひ訪れてみてくださいね。
flying jeep
住所:熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽4732-9
HP:https://flyingjeep.jp
予約:https://fryingjeep.rwiths.net/r-withs/tfi0010a.do
宿にも家族風呂が2つありますが、車で2~3分のところに温泉センターウイナスもあります。