クワガタのライフサイクルと寿命の定義
クワガタが卵からかえって死ぬまで、どのようなライフサイクルを送るのか、しっかりと知っている人は少ないかもしれません。
一般的に考えられているクワガタの寿命の定義について解説します。
クワガタの寿命の定義
産卵時期と環境で幼虫で過ごす期間が変わる
クワガタは、夏の終わりから秋にかけてふ化し、1~2年間を幼虫として過ごし、夏の終わりに成虫になります。
幼虫で1年過ごすものを『1年型』、2年過ごすものを『2年型』と呼びます。
例えば、今年ふ化した幼虫が、来年の夏の終わりに成虫になれば1年型、再来年の夏の終わりに成虫になった場合は2年型です。
産卵時期や産卵された環境によって、幼虫の成長スピードが異なることから、同じ種類のクワガタでも、1年型と2年型に分かれます
成虫になっても基本的に一冬は木の中で過ごす
クワガタは、さなぎになる際に餌となる木の中で『蛹室(ようしつ)』と呼ばれる部屋を作ります。
夏の終わりに成虫になりますが、そのまま蛹室の中で冬を越すケースがほとんどです。そして、次の年に野外での活動を開始するのですが、このようなライフサイクルを『1越型』と呼びます。
一方、オオクワガタ・マルバネクワガタ・オニクワガタなどは、初夏に成虫となり、夏の終わりに野外での活動を開始する『1化型』と呼ばれるライフサイクルです。
なお、1越型・1化型を先ほど紹介した1年型・2年型と組み合わせて呼ぶこともあり、『1年1越型』『2年1化型』といった呼び方をします。
クワガタの寿命は野外活動が始まってから数える
昆虫の寿命と聞くと『卵がふ化してから、幼虫・成虫として生きて死ぬまでの期間』や『成虫に羽化してから死ぬまでの期間』のいずれかを考える人は多いでしょう。
しかし、クワガタの寿命はどちらでもなく、一般的には『成虫になり蛹室から出て、野外での活動を開始してから死ぬまで』の期間を指します。つまり、屋外での活動期間がクワガタの寿命です。
したがって、『〇〇クワガタの寿命は半年』だとしても、実際には幼虫から成虫になるまで少なくとも1年(1年1化型)、長いものだと3年(2年1越型)生きていることになります。
日本国内で生息するクワガタの種類別寿命一覧
クワガタの寿命の長さを決めるのは、野外活動後に越冬ができるかどうかです。越冬ができる種類は寿命が長くなりますし、反対にできない種類は寿命が短くなります。
種類別寿命一覧
越冬ができるので寿命が長いクワガタ
日本で生息するクワガタの中で寿命が長い5種類と特徴を一緒に紹介します。
<オオクワガタ:およそ2~5年>
非常に大きなクワガタで、繁殖も含めて大人気です。野生個体はどんどん減っており、自然界で出会うことはほとんどありません。
<コクワガタ:およそ1~3年>
北海道から九州まで生息し、日本で最も見かける機会が多く採取も簡単なクワガタです。一般的に販売されている用具をそろえれば飼育も簡単です。
<ヒラタクワガタ:およそ2~3年>
自然界では樹皮の裏などに潜んでいることが多く、採取には手間がかかりますが人気の高いクワガタです。大アゴの力が非常に強く攻撃性も高いので、単独での飼育が基本です。
<アカアシクワガタ:およそ1~3年>
その名の通り赤い足が特徴のコクワガタに似た中型のクワガタです。自然環境ではやや標高の高い地域に生息しているので、飼育する際はクーラーなどで涼しい環境を準備する必要があります。
<スジクワガタ:およそ1~3年>
コクワガタよりもさらに小型のクワガタです。見た目もコクワガタに似ていますが、大アゴの形で見分けられます。やや標高の高い環境を好むので、飼育する際は室温に注意が必要です。
越冬ができず寿命が短いクワガタ
飼育しても越冬ができないために寿命が短いクワガタ2種類を紹介します。
<ノコギリクワガタ:およそ2~3か月>
日本のクワガタを代表する、子どもたちからの人気が高いクワガタです。自然でも捕まえやすく、クヌギの樹液やヤナギの木などに集まります。成虫になった個体の多くは蛹室の中で一冬を越す1越型です。
<ミヤマクワガタ:およそ1~3か月>
ノコギリクワガタに比べると涼しい環境を好み、標高の高い場所が生息地となるため市街地ではなかなか見られないクワガタです。その希少性や東部にある独特の突起のカッコよさから子どもたちにも人気です。高温には弱いので、夏場の飼育にはクーラーが欠かせません。
クワガタを長生きさせるための飼い方
家庭で飼育するクワガタを長生きさせるには、適切な環境を与えることが大切です。飼育用品と温度管理・餌管理について解説します。
長生きさせる飼い方
クワガタが快適に過ごせるような飼育用品
簡単に手に入るものでも、しっかりと道具をそろえれば、クワガタにとって快適な環境が作れます。4種類の飼育用品を使用上の簡単な注意と一緒に紹介します。
<飼育ケース>
クワガタのサイズに合わせて準備します。オス同士、メス同士だとけんか、オスメスのペアだと繁殖活動によって余計な体力を消費します。いずれも寿命を縮める原因になるので、1ケースに1匹ずつ入れるようにしましょう。
<飼育用のマット(土)>
清潔なものが必要ですが、専用の飼育用マットを購入すれば間違いありません。飼育ケースの4~5分目まで入れて、クワガタが潜れる環境を作ってあげます。マットには湿り気を与えます。食べかすや排泄物で汚れて黒くなり匂いがしてきたら交換が必要です。
<枯れ葉・樹皮・のぼり木>
クワガタが飼育ケース内で転倒し、起き上がれないと死んでしまうことがあります。枯れ葉・樹皮・のぼり木などをマットの上において、転倒した際につかまって起き上がれるようにしておきましょう。
<餌>
市販の昆虫ゼリーを与えましょう。スイカなどのフルーツは、水分が多く排泄物の量が増えて飼育ケース内が汚れるのが早くなるので、避けた方が無難です。
越冬を可能にする温度管理と餌管理
越冬飼育する機会の多い、オオクワガタ・ヒラタクワガタ・コクワガタの3種類共通して、基本的にしっかりと寒い環境を与えて、冬眠させることで寿命を長くできます。
10度Cを下回ると、本格的な冬眠に入ります。0~10度C(平均して5度C前後)が冬眠には最適です。
室温が15度C前後だと、クワガタが餌を食べることがあるので、餌の残量には注意が必要です。餌の食べ残しを放置すると飼育環境の悪化につながるので、1週間に1度の頻度で交換しましょう。
まとめ
クワガタは種類によって寿命の長さが異なり、オオクワガタのように数年生きるものもいれば、ノコギリクワガタのようにひと夏の命のものもいます。
自宅で飼う際には、適切な用具をそろえ、冬眠に適した環境を与えてあげることで、寿命を延ばすことが可能です。長く楽しく飼育しましょう。
<参考文献>
- 小林俊樹「カブトムシ&クワガタムシ 飼い方のポイント 幼虫・成虫の見つけ方から育て方まで」、メイツ出版、2022年、88-96項
- 佐々木浩之「長生きさせる!繁殖させる!カブトムシ・クワガタ飼い方&原色図鑑」、コスミック出版、2020年、58-91項