人にも環境にも優しいエシカルライフの実践者たち。工夫をこらした生活は、無理なく真似できるポイントがたくさんあります。日々の暮らしに少しだけ取り入れてみたら気持ちに変化が生まれるかも。
心豊かな「エシカル」な暮らしの実践者たち
旭山ろくふぁーむ
録澤洋介さん(42歳)、録澤真実さん(35歳)、録澤穂乃実ちゃん(9歳)、録澤慧醒くん(2歳)

旭山動物園と同じ山で暮らす。洋介さんは山の暮らしの傍ら、ボーリング工事や大工仕事も請け負う。真実さんは野菜や卵の配達をし、穂乃実ちゃんはひな鶏のお世話。慧醒くんは、今のところ遊ぶのが仕事。
録澤さんのエシカルヒストリー
2010年 大阪から北海道に移住し、農場で働き始める
2013年 旭山に土地を購入して、家を建て始める
2014年 環境を意識した無農薬有機野菜づくりを始める
2018年 ボーリングで水源を掘り当てる
2018年 家が住める程度になり、動物たちと引っ越し
2019年 自然の冷蔵庫、室を完成させる
北海道東旭川町の山の中に住む録澤さんファミリー。洋介さんは自然のなかで育った経験から“環境にインパクトを与えずに暮らすこと”を、家族を持った今でも実践している。そんな洋介さんは「百姓」になることを目指しており、その理由は「百の姓を持つ、いわば百の仕事ができること。父も百姓ならぬ五十姓を目指していた」から。
#01
古材や廃材でセルフビルド
森へのダメージもコストも削減

4ヘクタール(東京ドームの広さ8割ぐらい)もの土地を切り開き、自宅や小屋などをセルフビルドした。写真に見えているのは3つの鶏舎。平飼いで育てている。

この土地のそばに仮暮らしをしながら建てた家。農作業の合間にコツコツと作業し、現在の完成度は80%ほど。
木材のコストは1/10
人にも森にも優しい家づくり

新しい小屋づくりのために保管している古い電柱。

古材も大切に保管し、造作に使用する。

フリーの大工としても依頼を受ける洋介さん。「大工仕事は貴重な現金収入」。仕事の幅はとても広い。
実際に洋介さんは何でも自分でつくる。野菜も然り、住まいも然り。山を切り開いて自宅を6年かけてセルフビルドし、納屋も鶏舎もヤギ小屋も手がけた。家づくりでは商品価値が低い曲がった木材などを購入して材料にあてた。「手間は増えるけど工夫すれば問題なく使えますよ」。丁寧に造作された家は、材料が訳アリとは思えないほど。見た目以上に本質が大事だ。
#02
エネルギー負荷を考えたら薪と灯油にたどり着いた
ガスを使わない暮らし

間伐した白樺、ニセアカシア、ナラ、ニレ、ドロノキの木を薪にする。薪割りに機械は使わず、斧を振る。雪が降る前の大事な仕事だ。

自宅は断熱効果をできる限り高めた。豪雪地区でも小さな薪ストーブひとつで家中を暖めることができ、ローコスト&ローインパクトにつながる。

台所にあるコンロは灯油が燃料。低燃費で、ひと月に使うのは8ℓほど。

太陽の光がたっぷり入るので、日没まで電気の明かりを使うことはない。夏は風通しが良く涼しい。省エネを考慮したつくり。
また、納屋や小屋では、古材や役目を終えた木の古電柱を用いることで、木材ロス削減にもつながるという。木の電柱は強度がしっかりしていて、絶好のリユース資材なのだ。
家づくりのテーマは「太陽光がたくさん入り、仕切りをなくしたひとつながりの家」。家の中の空気が循環し、夏は涼しく気持ちいい。冬は熱効率が高まってエネルギーの削減にもつながる。北海道の厳しい冬にも耐える家、小屋づくりには、洋介さんのアイデアと技量が詰まっている。
#03
フードマイレージを減らす自給自足のおいしいごはん
地産地消が一番簡単なエシカルライフ

食卓には自宅で採れた野菜、卵を使った料理が並ぶ(ときには鶏肉、ヤギ肉や乳製品も)。近隣からのおすそ分けもあるが、それでも足りないときは地元の食材を購入する。

育てている野菜は50種類ほど。

家族みんなが安心して食べられるものだけを、いただきます!
少量多品目の野菜、養鶏、ヤギの飼育を手がける録澤家では、食材の多くを自給自足でまかなえる。そのため、食品輸送のフードマイレージは低く、二酸化炭素排出量は敷地内を軽トラックで走る分ぐらい。何より、抜群の新鮮さはそれだけでごちそう。穂乃実ちゃんも慧醒くんも、おいしそうによく食べる。
#04
生活排水は土で循環
ダメージになるものは摂らない、使わない

排水はそのまま敷地内の土に還す。落ち葉と腐葉土で浄化され地中に戻る仕組み。

木の食器は油を吸ってくれるため、手洗いだけで済む。

がんこな汚れはナノプラスチックが出ないセルロース製のスポンジを使用。

洗濯洗剤は環境に優しい「海へ…」。
生活用水は、洋介さんが自らボーリングで掘って見つけた地下水を使用している。ただし、決して豊富な水源ではないので、使う分は必要最低限に。また、排水は敷地内にそのまま流す。
「そもそも山にダメージを与えるものは摂らないし、洗剤も使わない。排水は落ち葉や腐葉土でろ過され、再び地下に還るよう工夫しています」
#05
電力消費を抑える自然の冷蔵庫

電気は最小限に。自宅の山に作った室は、夏でもひんやり冷蔵庫代わり。

自家製の保存食料もここに保管する。なお、自宅にある冷蔵庫は超小型だ。
トイレは外バイオ型で貯め式。頻繁に肥溜めに運ぶことで、家の中ににおいは残らず、土の肥やしにもなる。普段の食事から添加物を避け、化学調味料を使わないから排泄そのものがクリーンなのだ。
電気も生活に必要な分だけ。「長女が小さいときは、洗濯機もテレビも、冷蔵庫さえありませんでした。令和の時代に昭和の三種の神器がない生活です」
今は、子供たちの成長に合わせて少しずつ変化を受け入れている。無理をしない、させない。できる範囲でエシカルライフを楽しむのが、長く続けるコツだ。
#06
動物と共存しゼロウェイストな生活へ
発酵飼料以外に食べ残しも雑草も与える

鶏の卵は近隣へ配達も行なう。育てているのはさくら種、もみじ種、烏骨鶏、アローカナ種。

鶏の餌は発酵飼料と野菜くず。鶏糞は畑への堆肥にもなる。

山の雑草を与えることも。鶏が食べられる草を選別するため、機械を使わず手で刈り取る。
子供も動物も山を駆け回る
草が、う"メ~"

食事で残った肉や骨は犬の餌になるので、無駄が出ない。

イネ科の雑草はヤギたちがモリモリ食べる。近隣からもらった古米やゴミが入った生米は、ヤギたちにとってごちそう。
「外で買うものが少ないから、ゴミはあまり出ません。野菜もあるし、鶏やヤギから動物性たんぱく質も摂れる。山で暮らすと、自然と脱プラスチック生活になって、それができる限りのゼロウェイストにつながっていると思います」
地中を温め、雑草を抑制する畑の黒マルチもプラゴミになるので使わず、もみ殻を焼いた燻炭を畑にまく。手間こそかかるものの、環境負荷を考えた結果、この方法にたどり着いた。
#07
小さな畑をたくさんの人が作れば環境負荷が減る

すべてが手作業の畑だけあって、採れる量には限りがあるが、必要な分だけつくることは、食品ロス削減にもつながる。

雨水を貯めて野菜に与える。

子供たちは自生した桑の実をパクリ!

「そのまま食べられておいしいよ!」
また、畑の広さは「家族が暮らす分には5~7畝ぐらいがちょうどいい」と、洋介さんは語る(7畝で約694㎡)。たくさん野菜を作ろうとすると手が回らず、その結果大きな機械や農薬、マルチビニールなどが必要になってしまうからだ。
生活はできるだけシンプルにわかりやすく。野菜をつくり、生ゴミは動物たちが食べる。その動物の排泄物は畑の肥料になって土に栄養を与え、新たな野菜の成長を促す。鶏やヤギの肉は食料になり、毛皮は敷物として活用する。骨は犬が食べるので、無駄が出ない。
「手間がかかり、苦労することもありますが、それも含めて楽しむことが大事だと思います」
循環型エシカルライフをおくる録澤家。ただ自然の中で暮らすだけではない、環境を考えた生活の知恵が、そこにあった。
録澤さんのエシカルライフ3か条
- 生活のなかに、循環を取り入れる
- ゴミにせず、再活用を見つける
- 便利さよりも環境負荷を考える
※構成/早坂英之 撮影/森口鉄郎 協力/伊藤芳一
(BE-PAL 2022年9月号より)