朝6時。外はまだ薄暗い。空気が肌寒いを通り過ぎて寒すぎるほど。そんな中、私は大介さんの運転する車に乗っていた。遠足当日の子どものように起きられてしまったのである(安堵)。
同乗者はオーナーと私以外全員海外の方。アメリカ人男性2人組と同じくアメリカ人のカップル。そして、ルクセンブルグからの男性1人。富士山インバウンド真っ只中! ネイティヴな英語が車内を飛び交う。
英語力ゼロの私には何を話しているのかちんぷんかんぷん。もはや、自分が海外旅行に来ているかのような錯覚に陥るのだった。
あたりが明るくなって来た頃、車が止まった。東屋以外に人工物が何も見当たらない。私たち以外、誰もおらず、鳥の声もまだ聞えない。ひたすら静寂に包まれた場所。
目の前には大きな田貫湖は広がる。そして、湖の向こうに…富士山! 十二単をまとっているかのように裾がスラッと遠くまで伸びている。
「あ~、山頂に雲がかかっちゃっていますね~」と大介さん。スカッとした空の方が絵的には良いのかもしれない。でも、朝日に照らされながら雲の隙間に見え隠れする富士山も、なんだか恥じらいがあってかわいらしい。
数枚だけ写真は撮るものの、後はじっくりと富士山を眺めるアメリカ組。三脚を立て、ベストな瞬間を待つルクセンブルグの方。皆、声も出さず、じっと富士山を見つめている。まるで、瞑想をしているかのように「無」になれる。こんな景色と時間を毎朝過ごしたら、日々新しい1日をがんばれてしまうんじゃないだろうか?
「よかったら、お茶どうぞ~」
大介さんがあたたかいお茶を入れてくれる。ふわふわと白い湯気が立ち上がる。はぁ~♪ 今日はなんていい日なんだろう♪
「今からなら、もう一箇所の日の出に間に合いそうなんで、行ってみますか!」
車に乗り込むなり、大介さんの口から飛び出したひと言!
え? もう一箇所? サービス精神旺盛すぎやしないか!?
それとも、富士宮市民の富士山愛がそうさせてしまうのか!?
車で更に進むコト15分。少し山側へ来たからか、足元にはうっすらと雪が積もっている。ココからの富士山はシュッと背筋を伸ばして立ち上がっているような凛々しさ。見る場所によって、こうも姿が違うものなのか。
頬にあたる風もいちだんと冷たい。けど、それを、清清しく感じさせるほどの富士山。1日に2回も富士山からの日の出を見るなんて、人生で初めて。は~♪ 満足だ♪
一路、宿へ…と、思いきや、「もう一箇所、いいトコロがあるんですよ」と、大介さん。
なんと! まだ続くのですか日の出ツアー!? 留まるトコロを知らない大介さんのおもてなしづくし。