イタリアのキノコといえば、ポルチーニ茸(和名:ヤマドリダケ)でしょう。食感が良く、香り高いこのキノコはリゾットやパスタソースにピッタリ。品種や地域にもよりますが、夏から秋にかけてが最盛期で、決して栽培されることのないこの高級キノコを探しに、筆者はアルプスの森に入るのが大好きです。そこで、今回はポルチーニ茸の特徴から探し方、下処理方法も含めてご紹介します。
ポルチーニ茸の生える秘密スポットへ
キノコ狩りはアルプスの山々において楽しめるアクティビティの一つ。広大な自然の中をむやみに探しても見つからないので、家族代々伝わる秘密のスポットへと繰り出します。適度に雨が降って地面が湿った後、太陽が出るとチャンスですが、気候にかなり左右されるため、見つかるかどうかはそのとき次第。それでも、森の中を歩くこと自体が気持ちいいものです。
針葉樹の周りなどを中心に、時には急な斜面を上ったり下りたりしながら、木々をかき分けて進みます。大きめのものは遠くからでもわかりやすい反面、生長が進んで古くなっていることも多いもの。見つけて嬉しいのはやはり地面からひょっこり顔を出している程度のフレッシュなキノコですが、枯れ葉と色合いが似ているので、しっかり目を凝らして根気よく探すのが重要となります。
太い柄とスポンジ状の傘の裏がポイント
ポルチーニ茸の最大の特徴はずっしりした太い柄と、スポンジ状の傘の裏。
スポンジ部分が黄緑色に変化していても問題ありませんが、柄が赤っぽくなっているものはニセモノなので注意が必要です。
また、ポルチーニ茸を探す際に目安となるのが別のキノコの存在。特に「ポルチーニ茸と同じ環境で育つ」と言われる毒キノコ、ベニテングタケは色鮮やかですぐに目につくため、その周辺をくまなく探してみる価値はあるでしょう。
フレッシュなポルチーニ茸はパスタソースに
さて、ポルチーニ茸がたくさん採れたら、選別します。比較的小さく新鮮なものは切ってそのまますぐに調理するのが一番。汚れを落とす程度に軽く洗い、切ったときに断面に虫が付いていないことを確認してから使用します。外見は綺麗でも、中に小さな穴がたくさんあったら、虫食いの証です。
おすすめの食べ方はパスタと和えること。オリーブオイルを引いたフライパンに細かく切ったニンニクを入れて風味を出し、そこにざっくり切ったポルチーニ茸を加えて炒めるだけです。仕上げにバターも混ぜて塩で味を調え、お好みでパセリをかけたらパスタソースの出来上がり。シンプルですが、採れたてキノコそのものの味を堪能でき、最高に美味しいのです。
古いものは乾燥ポルチーニとして長期保存可
一方で、手のひら以上に大きく生長したポルチーニ茸はうじゃうじゃと寄生虫の住処となっていたり、スポンジ部分が黒ずんできたり、とそのままでは食べられないことも多いです。そのため、熱を加えて寄生虫を追い出しつつ、乾燥させてから保存するのに適しています。
まずブラシを使ってポルチーニ茸の表面の汚れを落としてからスライス。ここで、ドライフルーツメーカーを使うのが簡単で一般的ですが、筆者の家では網の上に並べ、下からストーブで一晩中、熱を送り続けます。パリパリに乾燥したら瓶に入れて保存。1年以上は持ち、調理の際は20分ほどぬるま湯に浸して戻せばすぐに使えるので便利なんです。ポルチーニ茸のリゾットやポタージュなどで独特の香りをいつでも味わうことができ、急な来客時にも重宝しています。
森歩きとポルチーニ茸探しを同時に楽しめ、さらに食べて美味しい一石三鳥のキノコ狩り。イタリアまで来るのは難しくても、日本で国産ポルチーニと呼ばれるヤマドリダケモドキを探しに行ってみてはいかがでしょうか。
※本記事はイタリア在住の記者が2022年現地で取材した内容を元に構成しています。
東京のテレビ局で報道記者を務めた経験を活かして食やワイン、伝統文化、西洋美術等を取材し、ガイドブックにはないイタリアのあれこれやマンマ直伝のレシピを紹介中。訪れた国は45か国以上、47都道府県制覇の旅好きでもある。休日には登山やキャンプ、キノコ狩りなどのアウトドアを楽しみ、いつかアルプスの麓で山小屋を営むのが夢。海外書き人クラブ会員https://www.kaigaikakibito.com/