ザンスカールの南の果て、聖山ゴンボ・ランジョンへの旅路
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    2022.11.13

    ザンスカールの南の果て、聖山ゴンボ・ランジョンへの旅路

    ルンナク川沿いの岩塊の上に建つ、バルダン・ゴンパ。

    世界各地を飛び回る著述家・編集者・写真家の山本高樹氏。今年、ライフワークとするインド北部の山岳地帯を訪ねた。美しく、険しい秘境の旅をレポートする今回は、仏教僧院や大小の村落が点在するルンナク渓谷。そして、神の住まう山、ゴンボ・ランジョンへ。

    渓谷沿いの道を辿って、最奥の僧院へ

    ザンスカールの中心地パドゥムの町から、僕はロブザンの友人スタンジン・プルブーの運転する車に乗せてもらって、ルンナク川沿いの道を南東へと向かいました。ルンナク渓谷には、バルダン・ゴンパやムネ・ゴンパなどといった仏教僧院のほか、大小の集落が点在しています。

    ツァラプ川沿いの細い道を徒歩で遡る。

    ザンスカール最深部に位置する僧院、プクタル・ゴンパ。

    ツァラプ川とカルギャク川が合流してルンナク川となる地点のすぐ近くにある村、プルネで1泊した僕たちは、翌朝、ツァラプ川沿いの細いトレイルを辿って、プクタル・ゴンパと呼ばれる僧院を目指しました。断崖にある巨大な洞窟の周囲に建てられた、無数の僧坊。見る者すべてを圧倒する迫力を持つ僧院です。

    本のページをめくりながら笑い合う僧侶たち。

    今回、プクタル・ゴンパを訪ねた動機は、3年前の冬にこの僧院を取材して書いた拙著『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』を献本するためでした。炊事場に集まっていた僧侶の方々に見せたところ、最上階の護法堂で読経中の座主に見せに行きなさい、と促され、おそるおそる護法堂にお邪魔して、読経が終わった後にお渡ししてきました。緊張しました……。

    ひさしぶりに再会した、プクタル・ゴンパの黒犬。

    ここでは、うれしい再会もありました。『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』の中にも登場する、プクタル・ゴンパの黒犬。3年前の祭礼の儀式で僧院の守り神となり、今は赤くてカッコイイ首飾りをつけられていましたが、相変わらず元気で人懐こくて、何だかとてもほっとしました。

    カルギャク川沿いの新道を南へと進む。

    神の住まう山、ゴンボ・ランジョン

    プルネを発ち、カルギャク川沿いの道をさらに南下していきます。ほんの数年前まで、この一帯には車道がありませんでしたが、最近は新道が開通して、南のヒマーチャル・プラデーシュ州まで車で行き来できるようになりました。今も行程の大半は未舗装の悪路ですが、ラダック以外の地域から車で行き来できるようになったことは、ザンスカールの社会に大きな影響をもたらしつつあります。

    聖山ゴンボ・ランジョン。

    この新道の行程の途中には、ゴンボ・ランジョンと呼ばれる山があります。標高5320メートルに達するこの巨大な岩山は、古くからザンスカールの人々にゴンボ(大黒天)の住まう聖なる山として崇められていて、徒歩でしか行くことのできなかった時代から、多くの巡礼者が訪れていたそうです。

    ゴンボ・ランジョンの麓にある簡素な茶店。

    きれいに整理整頓されている茶店の内部。

    新道が開通した後、ゴンボ・ランジョンの麓には、石造りの茶店ができていて、簡単な食事が取れるようになっていました。茶店のそばには、アウトドア用のテントもいくつか張ってあって、頼めば安い料金で泊めてもらえます。

    車のフロントガラスに降りかかる、季節外れの雪。

    標高5080メートルの峠、シンゴ・ラ。

    ゴンボ・ランジョンを後にした僕たちの車は、標高5080メートルの峠、シンゴ・ラを目指します。この日は天気が崩れ、吹雪とぬかるみで立ち往生しそうになる中を、どうにかこうにか切り抜けて、峠を越えることができました。

    ラダックとザンスカールを離れ、ここからはヒマーチャル・プラデーシュ州での旅が始まります。

    私が書きました!
    著述家・編集者・写真家
    山本高樹
    1969年岡山県生まれ、早稲田大学第一文学部卒。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地方での取材をライフワークとしながら、世界各地を取材で飛び回る日々を送っている。著書『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。最新刊『旅は旨くて、時々苦い』(産業編集センター)発売中。

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