ニュージーランドはアウトドア好きにとっては天国のような国です。
荒涼とした火山、巨木が生い茂る原生林、何百万年も前から存在する氷河など、バラエティ豊かな自然環境を目にすることができます。
国中に素晴らしいトレイル(歩くための道)が多数あり、その中に「グレートウォーク」と呼ばれる特別なトレイルが10か所整備されています。そのどれもがニュージーランドの大自然を満喫できるトレイルです。
今回は実際にグレートウォークのひとつ、アベルタスマンコーストトラックを歩いた著者が、その魅力とグレートウォークを歩く際の注意点をあわせてお伝えいたします。
グレートウォークとは?
ニュージーランドにはトレイルが多数あります。その中でもDOC(ニュージーランド自然保護局)が定めた、特に景観が素晴らしい10か所のコースは、グレートウォークと呼ばれています。グレートウォークは南島に7か所、北島に3か所が整備されています。
グレートウォークではシダが生い茂る原生林、透き通った湖や川、森林限界を超えた荒々しい岩肌の山々など、多様な自然を満喫できます。歩いている最中に野生動物を目にすることも珍しくはありません。実際に著者もハリネズミやケア(kea)と呼ばれるオウムの一種の美しい鳥など、様々な野生動物を目にすることができました。
グレートウォークは平均して3日~5日で歩くことができるコース設定になっています。コースの全てを歩くにはやや体力が必要ですが、コースによっては部分的に日帰りで楽しめる場所もあります。
グレートウォークは海外からの観光客にも人気が高く、年間を通して多くの人が訪れるトレイルです。そのため、他のマイナーなトレイルよりも、道が歩きやすく整備された場所が多いため、初心者の方にもおすすめできます。
アベルタスマンコーストトラック5つの魅力
アベルタスマンコーストトラックは、全長約60kmのトレイルです。無理なく走破するには、1日4〜5時間ほどで、かつ4泊5日の日数がかかります。
主に歩くのは海岸線と、海岸線に沿った丘陵地帯です。アップダウンはありますが、最も高い場所で標高200mほどです。1日中登り続ける、といったルートではないので、歩くことに慣れていれば景色を眺めながらゆったりと旅を楽しめます。
魅力1.多様な景観
アベルタスマンコーストトラックは海沿いを歩くトラックです。高台からは美しい海岸の景観を目にすることができます。
コースのすべての箇所が砂浜ではなく、つり橋を渡ったり、川を渡ったりと変化に富んだトレイルを楽しむことができます。ニュージーランドのトレイルではおなじみの、シダが生い茂る森を歩く箇所もあり、森の中は南国を感じさせるジャングルのような雰囲気です。背丈が20メートルを超える巨大なシダが生える森は、圧巻の風景。中に入ると、まるで自分が小人になったかのように感じます。
トラックの最中には、川を横切る箇所もあります。両足を水につけて、ジャブジャブと川を横切る体験は、トラックの中でも一大イベント!干潮時ならば川の流れがゆるいので、アトラクション感覚でチャレンジできます。
満潮時に川を横切った場合、水量が多いため、川に流される恐れがあるため危険です。事前にDOCのホームページ内にある潮汐(ちょうせき)表を調べて、干潮時に川を横切るようにしましょう。
アベル・タスマン・コースト・トラック:アベル・タスマン国立公園、ネルソン/タスマン地域 (doc.govt.nz)
魅力2.海から昇る朝日
海沿いを歩くので、場所によっては海から昇る朝日を眺めることができます。
1日の始まりを感動と共にスタートできます。
魅力3.海水浴や川遊びも
海岸線を歩くので、水が透き通ったビーチで海水浴を楽しむことができます。著者は試しませんでしたが、シュノーケリングにも最適な場所です。水着や水中眼鏡を持っていきましょう。
トレイルの脇に小川がある箇所も多いので、海遊びだけでなく川遊びも楽しめます。トレイルから少しだけ足を延ばして、往復40分ほど歩けば、「クレオパトラ・プール」と呼ばれる岩に囲まれた天然のプールのような場所もあります。
ただし、ニュージーランドの川は真夏でも水温が低いため、入るのには気合が必要ですよ。
魅力4.通年楽しめる
アベルタスマンコーストトラックは、ニュージーランドの中でも気候が温暖な南島の北西に位置しています。
最寄りの都市であるネルソンの6月〜8月(ニュージーランドの冬の時期)の最高気温は12〜13度Cほど、最低気温は2~3度Cほどです。真冬でも0度Cを下回ることはめったにありません。
ダウンやフリースなどの防寒着を持参すれば、真冬でもアベルタスマンコーストトラックを歩くことができます。
参考:https://www.travel-zentech.jp/world/kion/New_Zealand/Nelson.htm
魅力5.日帰り散策も可能
アベルタスマンコーストトラック上には、水上タクシーやシータクシーと呼ばれるボートが運航しているビーチがあります。そのため、ボートを利用した日帰りの散策も可能です。
「全行程を歩く予定でスタートするも、中断したくなった場合」には、ボートを利用して起点の町まで戻ることができます。体調を崩した時など、万が一の場合も安心ですね。
グレートウォークを歩く際の注意点4つ
グレートウォークを歩く際には注意点があります。
1.キャンプ地や山小屋は事前予約が必要
グレートウォークはそのどれもが人気のあるトラックなので、トラック上で宿泊するためにはキャンプ地かハット(ニュージーランドの山小屋)の事前予約が必要になります。利用できる人数には限りがあり、人気のルートはシーズン前には予約でいっぱいになるので、余裕を持ったプランニングが必要です。
ニュージーランドのトレイルはDOCによって管理されています。予約はDOCのホームページ、もしくは現地の主要な町にある観光案内所で行いましょう。
2.日本とはトレイルの状況が違う
ニュージーランドのトレイルは、日本のアルプス山系のトレイルとは異なるのでご注意ください。
自然保護の観点から、山道に段差を作ったり、危険な箇所に柵を作ったり、といった整備はされていないことが多いです。グレートウォークのような人気のエリアでも、道しるべの標識が少ない箇所もあります。日本のアルプス山系のトレイルを想像すると面食らうことがありますので、事前にしっかりとルートを確認し、地図を持参して歩くようにしましょう。
3.日本とは天候が異なる
ニュージーランドは南半球に位置するため、北半球に位置する日本とは四季が逆になります。トレッキングのベストシーズンは、ニュージーランドの夏に当たる12月~2月です。ニュージーランドの夏は日が長く、20時を過ぎても空が明るいため余裕を持った行動ができます。
しかし、ニュージーランドは「1日のうちに四季がある」と呼ばれるほど、天候の変化が激しい土地です。真夏でも急に冷え込んだり、晴れていたと思ったら急に雨が降ることも少なくありません。
そのため、気温や天候の変化に対応できるように、しっかりとした衣類の対策が必要です。雨風を防ぐレインウェアや、急な寒さに備えるダウンジャケットやフリースなどの防寒具を用意しておきましょう。
4.サンドフライには要注意
ニュージーランドには「サンドフライ」という日本のブヨに似た吸血昆虫がいます。海岸や山間部の水場の近くに多く生息しています。
刺されると非常に痒く、人によっては2週間以上も痒みが続くこともあります。
サンドフライが多い場所では
- 長袖長ズボンで皮膚の露出をさける
- サンドフライに対応した虫よけを用意する
- 刺された時のために軟膏を用意する
等の対策が必要です。
ニュージーランドでは最高の自然体験ができる
ニュージーランドのグレートウォークを歩く体験は、山歩きが好きな方にとって「生涯忘れることのできない素晴らしい体験」になるはずです。
中でもアベルタスマンコーストトラックは日帰りの散策が可能なので、山歩き初心者の方にもおすすめできます。記事を参考にして、ニュージーランドの自然を満喫していただければ幸いです!