高校生で『やながわ有明海水族館』館長に!投網で魚を捕まえて展示する姿に密着
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    2023.08.04

    高校生で『やながわ有明海水族館』館長に!投網で魚を捕まえて展示する姿に密着

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    高校生のとき、水族館の館長に

    福岡県柳川市の『やながわ有明海水族館』で館長を務める、亀井裕介くん。川の生き物の奥深さに目覚めたのは小6のころだ。

    「身近な川に未知の生き物がたくさんいることを知り、驚きました。地味だけどそれぞれ絶妙な個性があって、面白いって!」
     
    深遠な淡水魚の世界を知りたくて、自宅のある福岡市から『やながわ有明海水族館』に通いつめ、こどもボランティアに。
     
    展示生物もすべてスタッフが採集しているため、先輩からガサガサや投網などの採集方法も教わった。

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    やながわ有明海水族館館長・亀井裕介くん

    掘割、矢部川、有明海を擁する水郷、柳川の水辺の自然環境の豊かさを発信するとともに、環境保全活動にも取り組んでいる。

    柳川の生き物の種類の多さは国内トップクラス!

    取材日も採集をするとのことで、同行させてもらうことに。まず向かったのは、水族館の裏手を流れる掘割(ほりわり)だ。

    「深くて透明度が低いので、投網で捕るのが効率的」と、慣れた手つきで投網を繰り出していく。観光船が往来する掘割は魚は少なそうだが……。

    「柳川の掘割は生物多様性では国内トップクラス。50種類以上はいると思いますよ」
     
    掘割は護岸が石積みで魚が隠れる場所が多いこと、ヨシなどが茂っていること、タナゴの産卵に必要な二枚貝が多いことなど、生き物が育つ条件が整っているのだという。

    柳川の掘割に棲む生き物

    ニッポンバラタナゴ

    日本固有亜種。平野部の河川や水路などに生息。体長約4㎝。福岡県では絶滅危惧ⅠB類。

    ハス

    コイの仲間。自然分布は琵琶湖水系などだが、全国に移植され定着。体長約30㎝。

    カワヒガイ

    日本在来種。コイの仲間で、砂礫底を好む。体長約7~13㎝。福岡県では絶滅危惧Ⅱ類。

    ブルーギル

    北米東部原産で全国に分布。特定外来生物に指定。体長約25㎝。飼育は意外と難しい。

    ニゴイ

    日本在来種。コイに似ているのが名前の由来。河川全域に生息。体長は最大で約70㎝。

    住宅街でガサガサ。近所の人の反応は?

    次に向かったのは、住宅街を流れる水路。水深が浅く、透明度が高いのでガサガサで採集する。

    一見、不審者っぽいが、近所の人は

    「あら、館長さん? がんばって」と受け入れ態勢万全だ。

    住宅街の水路でもガサガサは楽しめる。

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    取材日は増水していたため条件が厳しかったのだが、コンクリート護岸ながら、ホウライモロコやフナを捕獲。

    矢部川水系の小川の生き物

    アリアケギバチ

    日本固有種。ナマズの仲間で、4対の口ひげがある。九州に分布。体長は12~25㎝。

    ヤマノカミ

    国内では有明海とその流入河川にのみ分布。絶滅危惧種ⅠB類。体長約10~15㎝。

    ニホンウナギ

    海で産卵し川に戻る回遊魚。かつては柳川の掘割にも数多く生息。体長50~60㎝。

    採集した生き物は『やながわ有明海水族館』で飼育&展示

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    水族館には干潟、淡水などの環境別に約80種類の生き物を展示。

    恵まれた自然環境のため柳川周辺に6種類生息しているタナゴも全種展示しており、専用の水槽もある。

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    『やながわ有明海水族館』で会える有明海の生き物

    ムツゴロウ

    有明海を代表する干潟の生き物。トビハゼに似るが、体に青い斑点がある。体長約15㎝。

    シオマネキ

    オスは左右どちらかのハサミが巨大化。求愛行動では大きなハサミを振る。甲幅約35㎜。

    ショウキハゼ

    ずんぐりした体が特徴のハゼ。有明海では珍しくないが、他地域では希少。体長約12㎝。

    ワラスボ

    "有明海のエイリアン"と呼ばれるハゼの仲間。大きな口から歯が露出している。体長約30㎝。

    飼育後に逃がすのはNG!

    採集した生き物は展示飼育するが、上手な飼育のコツは?

    「肉食と草食の魚を同じ水槽で飼わないことと、隠れ家を作ることかな。あと飼育後に逃がすのはNG。国内外来種になるので、死ぬまで飼う覚悟がなければ飼ってはダメだと思います」
     
    採集から飼育、広報活動まで、精力的に館長業をこなす亀井くん。超多忙だが、休日にはタモ網と胴長を自転車に載せて、県内の川に遠征し、ガサガサをしているとか。

    「高校生になって、自分の目で色々な湿地帯生物の棲家を見てみたいという好奇心が生まれてきました。生き物を知るには、実際に捕まえて図鑑と見比べ、形質を覚えていくことが大切だと思うんです。ガサガサは効率がいいし、淡水貝類など、関連する生き物も同時に観察できるのも魅力です」

    ※構成/松村由美子 撮影/江藤大作 

    ●やながわ有明海水族館 https://www.spera-morisatoumi.com/

    (BE-PAL 2022年10月号より)

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