メリノウールはどんな素材?
そもそも、メリノウールとはどのような素材なのでしょうか。まずはメリノウールの特徴を見ていきましょう。
メリノ種から取れる羊毛素材
メリノウールとは、羊毛の中でも主にオーストラリアに生息する『メリノ種』という羊から取れるウールです。通常のウールは直径約0.025mm以上あるところ、メリノウールは約0.0245mm以下、中でも細いものだと0.0145mmと半分近くの太さしかありません。
毛の細さは肌触りの良さにつながっており、肌に触れるアイテムの素材としてよく使われています。毛の太さによって4段階にランクが分かれており、毛が細くなるほど高級素材という証拠です。
参考:Why is Merino wool so soft | Woolmark
メリノウールが優れているポイント
通常のウールよりも細いメリノウールには、優れたポイントがいくつもあります。メリノウールの魅力から、代表的なものを見ていきましょう。
優れているポイント
吸湿性・通気性が高い
メリノウールのメリットの一つに、高い吸湿性と夏でも蒸れない通気性を兼ね備えている点があります。その秘密はメリノウールの性質です。
メリノウールの表面は疎水性で、内側の繊維は親水性になっています。肌に触れるのは疎水性の外側なので、肌が湿り気を感じにくいでしょう。
メリノウールの表面には、湿度によって開閉する『スケール』と呼ばれるウロコが付いています。湿度が高いとスケールが開き、水分を内側に吸収します。親水性の内側に水分を取り込んで大気中に放出することより、汗をかいても蒸れずに素早く蒸発させることが可能です。
ウール素材は秋から冬にかけて着るイメージがあるかもしれませんが、メリノウール製のウェアは夏でも着られます。また、内側の親水性によって水分を含みやすいため、静電気も起きにくくなっています。
保温性が高い
保温性の高さもメリノウールの魅力です。肌に触れる表面は疎水性であり、水分は親水性の内側に取り込まれます。これにより、肌に触れる部分をドライに保ち、汗冷えを起きにくくします。
それだけでなく、メリノウールには『クリンプ』と呼ばれる縮れがあり、空気の層を作っていることも特徴です。クリンプによる空気の層があることで、高い保温性を実現しています。
吸湿性も暖かさも兼ね備えたメリノウールは、着回しによってオールシーズン使える素材といえるでしょう。
防臭性がある
メリノウールには防臭性もあります。その理由は、吸湿性が高いメリノウールの特性と構造です。
衣類に臭いが付く原因は、衣類に残った汗を養分にバクテリアや雑菌が繁殖することにあります。しかし、繊維の外側に水分が残りにくいメリノウールでは、臭いの元となる雑菌が繁殖しにくいのです。
繊維の中に汗や皮脂といった臭いの元を閉じ込められるメリノウールの構造も、防臭性が高い理由の一つです。このように天然の抗菌作用があるので、洗濯の頻度も少なく済み手入れもしやすくなっています。
参考:ウールの天然の耐臭効果|THE WOOLMARK COMPANY
肌触りが良い
メリノウールが人気を集める大きな理由は、肌触りの良さです。メリノウールの毛はカシミヤとほぼ同じといわれるほど細いため、滑らかな肌触りを実現しています。「ウールはチクチクして苦手…」という人でも着やすいでしょう。
素材自体の滑らかさに加え、吸湿性の高さもメリノウールの着心地を良くしている理由です。また、クリンプによって弾力性が生まれるため、快適性と型崩れの起きにくさを両立しています。
メリノウールの弱点
メリットの多いメリノウールにも、弱点はあります。紹介するメリノウールの注意点を、購入時やメンテナンス時の参考にしましょう。
弱点
ぬれると乾くまでに時間がかかる
メリノウールには、内側に水分を吸収する性質があります。これは通気性や保温性につながっていますが、その分だけ乾くのに時間がかかってしまうことも意味します。速乾性は、ナイロンやポリエステルをはじめとした化学繊維の方が高いでしょう。
メリノウール素材のウェアは、たくさん汗をかくような激しい運動には向いていません。ただ、登山のようなこまめに休憩を挟むアクティビティでは、速乾性の低さによって保温性が高まるため、このデメリットがプラスに働きます。
長所がうまく発揮される使用シーンを選ぶと、メリノウールの魅力を存分に感じられるでしょう。また、メリノウールと化学繊維との混紡なら、速乾性を兼ね備えている製品も存在します。まずは『どんなシーンに使うか』をイメージして、ウェアの素材を決めるのがおすすめです。
虫食いが起きやすい
メリノウールは羊毛なのでたんぱく質が含まれており、虫に食われやすくなっています。穴が数カ所空いていたら、虫食いの可能性が高いでしょう。
そのため、保管方法には注意が必要です。まずは洗濯してからよく乾かし、アイロンがけをします。特に食べこぼしを付けたままで放っておくのはNGです。
また、虫は湿気を好むため、風通しの良い場所に保管するか圧縮袋に入れて保管するのがおすすめです。長期間保管する場合は、乾燥剤や防虫剤を入れておきましょう。ただし、防虫剤は密閉状態でないと効果を発揮しないことには注意が必要です。
価格が高い
メリノウールは高級素材であるため、普通のウールよりも高価です。メリノウールは一般的に次の4ランクに分かれており、上から順にランクが高くなっています。
- スーパーエクストラファインメリノ
- エクストラファインメリノ
- ファインメリノ
- ストロングメリノ
スーパーエクストラファインメリノが1番高級で、毛が最も細くなっています。その分、肌触りは特に滑らかです。ランクの高いメリノウールはストールやインナー、セーターなどに多く使われており、ストロングやファインは毛布やニットによく使われています。
通常のウールのTシャツは5,000~7,000円で販売されているのに対し、メリノウール製は1万円前後のものが主流です。
メリノウール製のおすすめのTシャツ
メリノウール製のおすすめメンズTシャツを紹介します。メーカーがそれぞれ独自の技術によって工夫を凝らしているので、製品ごとの特徴にも注目してみましょう。
アイスブレーカー「メリノ 150 テックライトIII ショートスリーブ ティー」
1平方メートル150gという軽量設計を誇るテックライトシリーズで、メリノウールを100%採用したTシャツです。素材の強みを生かした滑らかな肌触りを存分に感じられるでしょう。
ショルダーのシームには摩擦を防止する加工が施されており、不快感を軽減してくれます。デザインもシンプルで、他のウェアと合わせやすいのも魅力です。薄手ながら温度調節に優れているため、アウトドアシーンから普段使いまで活躍します。
アイスブレーカー メリノ 150 テックライトIII ショートスリーブ ティー
ウールパワー「クルーネック ライト」
丸首で長袖のTシャツです。フィット感が高く、インナーとしても使えるでしょう。メリノウールは80%配合されています。
着心地を良くするため、縦方向の縫い目を背中側に配置しているのもうれしいポイントです。首周りから斜めに入れるラグランスリーブで、リュックを背負ったときに縫い目が当たらない設計も実現しています。
カラーはブラック・ノルディックブルー・パイングリーンの3色展開です。秋から冬にかけて重宝するアイテムとなるでしょう。
ウールパワー クルーネック ライト
メリノウール製のおすすめのインナー
保温性と肌触りにたけたメリノウールは、インナーにも適した優秀な素材です。メリノウールを使ったおすすめのインナーを紹介します。
モンベル「スーパーメリノウール L.W. ラウンドネックシャツ」
スーパーメリノウールの中でも、太さ0.0185mmの希少な『マルチクリンプウール』を採用したインナーです。通常のメリノウールよりもストレッチ性に優れており、着心地は抜群でしょう。ウォッシャブル加工を施しているので、手入れもしやすくなっています。
また、生地は薄手になっており、登山やハイキングのときに着るインナーとして最適です。メリノウールならではの吸湿性と保温性により冷えを防いでくれるので、オールシーズン活躍する1枚となるでしょう。
モンベル スーパーメリノウール L.W. ラウンドネックシャツ
ファイントラック「メリノスピンライトロングスリーブ」
ポリエステル63%、メリノウール37%を混紡したインナーです。ポリエステルの特性で汗蒸れしにくくなっています。ウールならではの保温性と化学繊維の強みである速乾性を併せ持ち、オールシーズンで活躍する優れものです。
ヘタりにくく手入れがしやすいので、長く使えるアイテムとなるでしょう。洗濯を繰り返しても防臭効果が落ちない工夫が施されているため、期間の長い登山におすすめです。
袖のデザインはトルネードスリーブを採用することで、動きやすさを確保しています。
ファイントラック メリノスピンライトロングスリーブ
アイスブレーカー「200 オアシス ロングスリーブ クルー」
中厚手で使い勝手の良いインナーです。シンプルなクルーネックで、幅広いファッションスタイルに合わせやすいでしょう。素材はメリノウール100%のため、素材の強みを最大限に感じられます。
汎用性が高く、アウトドアだけでなく部屋着や普段着のインナーとしても活躍するでしょう。ショルダーシームには摩擦を防ぐ加工が施されているので、着心地も抜群です。カラーは8色が販売されています。
アイスブレーカー 200 オアシス ロングスリーブ クルー
まとめ
メリノウールは、ウールの中でも高級と名高い素材です。4ランクに分かれており、特にスーパーエクストラファインメリノウールは毛が非常に細く、肌触りが抜群に良くなっています。
吸湿性や保温性にも優れており、体温を奪われたくない登山やキャンプなどのアウトドアシーンで活躍する素材です。防臭性に優れているところも魅力といえます。
ただ、速乾性には劣るため、メリノウール100%のウェアは激しいスポーツに向きません。また、動物性の繊維で虫食いが起こりやすいので、保管には気を付ける必要があります。
秋冬用の登山・キャンプウェアを探している人は、注意点も押さえた上でメリノウールのアイテムを取り入れてみましょう。