今年のオリオン座流星群は月がなくて好条件
10月22日の3時ごろ、オリオン座流星群が極大(流星の数が最も多くなるタイミング)を迎えます。オリオン座流星群は、それほど流星の数が多いわけではありません。それでも毎年、この季節に話題に昇るのは、突発的に大出現したことがあるのと、流星群の元になる彗星(母彗星)がハレー彗星だからかもしれません。
今年は極大の時間に月がなく、流星群観察の条件としては最高です。が、もともと大規模な流星群ではないので、暗い場所でも1時間に数個、見られるどうかだと思います。
オリオン座流星群がひときわ注目されたのは2006〜2007年のことです。ペルセウス流星群やふたご座流星群なみに、たくさんの流星が出現したからです。前回、母彗星のハレー彗星が地球の軌道を通過したのは1986年と、ずいぶん前のことです。それから20年も経ってなぜ大出現したのか。
ここでダストトレイル理論をご紹介しましょう。
ダストトレイルとは、彗星が残していったチリの軌跡のことです。ここを地球が通過するとチリが地球に衝突して流星群になるわけです。流星群の出現数の予測をするとき、20世紀後半まではひたすら母彗星が通過した時期に注目していました。しかし、通過して間もない年でもあまり出現しなかったり、通過して何年も経ってから大出現したり、予測が外れることがよくありました。なぜでしょうか?
ダストトレイル自体が地球やその他の惑星の動きに影響されて動いているからだという「ダストトレイル理論」を提唱したのが、イギリスの天文学者デイヴィッド・アッシャーとロバート・マックノートです。1999年のことでした。
その直後の2001年、ダストトレイル理論を使って予測された「しし座流星群2001年大出現する」説は、見事的中。21世紀に入って、流星群の予測的中率は格段に上がりました。
それでも2006年のオリオン座流星群大出現を事前に予測した人はいませんでした。後から計算してみた結果、ハレー彗星が紀元前に通過したころのダストトレイルが2000年以上の時を経て地球の軌道付近まで移動したのではないかと考えられています。
話を今年に戻しますと、ダストトレイル理論的にも、今年のオリオン座流星群の出現数は多くありません。しかし、10月の新月の夜、東の空に昇りはじめたオリオン座の姿を見るのはいいものです。1等星のベテルギウスは変光星で、一時、とても暗くなって話題になりましたが、今年はどうでしょうか。また、ベテルギウスの近くには、おうし座のアルデバラン、明るさを増す火星と、赤い星が3つ並びます。赤さ比べも楽しんでください。
天の川観察するなら秋が最適なワケ
この季節、ぜひおすすめしたいのが天の川観察です。天の川にはなんとなく夏のイメージがあるかもしれません。たしかに、天の川がいちばん濃く見えるいて座方向は、夏の夜によく見えますね。
ただ、夏は大気中に湿気が多くて空気の透明感が低いのが難点です。その点、秋は空気の透明感が上がります。台風シーズンも終わる10月後半は晴天率が上がり、天の川観察にぴったりです。
日没後、この時期の西の空にはまだ夏の大三角形(こと座、わし座、はくちょう座)が残っていて、はくちょう座が見事な十字架を描いていいます。このはくちょう座のほうから天の川をたどっていくと、カシオペヤ座、ペルセウス座、ぎょしゃ座、オリオン座と、秋から冬にかけての星座が連なります。
ぜひ天の川に双眼鏡を向けてみてください。小さな双眼鏡でかまいせん。6,7倍くらいの低倍率のレンズを向けると、肉眼で見えない星々が視界に広がります。星だけでなく、マイナーな星団も目に入ってきます。
特に、ぎょしゃ座のあたりには散開星団(数十から数百の星のあつまり)がたくさんあります。
また、ぜひトライしてほしいのが、カシオペヤ座とペルセウス座の頭の間にある二重星団です。初心者も見つけやすいと思います。双眼鏡を三脚に固定して探してみましょう。
天の川は日没後、薄明が終わる19時ごろからが見頃です。一晩、蚊にも刺されず、寒くもなく、ゆっくり楽しめるのも、この季節のいいところです。
構成/佐藤恵菜