イングランド北西部カンブリア州に位置する湖水地方。ピーターラビットの生みの親であるビアトリクス・ポターが愛したこのエリアの魅力は、ロンドン周辺の景観とはまったく違ういくつもの湖と山が連なる大自然です。湖水地方を満喫してみたいならウォーキングやハイキングをしながら楽しむのがベスト。町の素敵なホテルやB&Bに滞在するのも良いのですが、この大自然を丸ごと楽しみたいなら、グランピングがオススメです! 英国在住の記者が2泊3日で体験してきた模様をレポートします。
※2022年秋に取材した内容を元に構成しています。
「ポッド」で楽しむ英国式グランピング
自然の中でも快適に過ごせるのがグランピング。キャンプ用具を持ち運ぶ必要もなく、初心者でも気軽にアウトドアを楽しめるので、ここイギリスでも大人気です。グランピングの形にもキャビン、トレーラー、サファリ型ベルテント、遊牧民のテント型ユルトなどと様々なものがありますが、今回ご紹介するのはポッドと呼ばれるものです。
「ポッド」とはもともと「(ソラマメやエダマメなどの)さや」とか「蚕(カイコ)の繭(まゆ)」のように「中をやさしく守る丸みを帯びた外皮」のこと。今回の「ポッド」もまさにそんな感じの建物です。
湖水地方にあるグランピング・ポッド
今回利用したのは、ケンダルの町西部にあるクロスウェイト村の「ダムソン・ヴュー・グランピング」。村には学校、民家やパブもあり、周辺はのどかな田舎でとても静かです。広い敷地には、大人2人が滞在できるサイズの5つのポッドが程よい距離で並んでいます。到着すると、オーナー夫妻がちょうどポッドの外にいて迎え出てくれました。オーナー夫妻とロンドンからの道のりなどをおしゃべりしてから、施設やポッドを案内してくれそのままチェックイン。ちなみに施設名にある「ダムソン」とはこの地方で採れるプラムのような果物で、グランピング場にもダムソンの木があります。
ホテルのようなポッド内
ダムソン・ヴュー・グランピングはホテルに滞在するように清潔で快適!ポッド内にはキングサイズのベッド、コンパクトなキッチン、シャワールーム、テーブル&チェアやソファ、Wi-Fiなど完備しています。キッチンには冷蔵庫、電子レンジ、セラミックコンロ、電気ケトル、トースターなども揃っているので、自炊も手軽にできます。
もちろんタオルや寝具は揃っているので、持参する必要のあるのは食材のみ。イギリスでは夕食は各自でするのが常となっていて、ホテルなどでもB&B(ベッド&ブレックファスト)形態がほとんどです。グランピングの場合は朝食が付いたりするところもありますが、ここではパンやミルク、紅茶、インスタントコーヒーなどが用意されている程度です。
イングランド最大のウィンダミア湖
グランピングの醍醐味は大自然!ウィンダミア湖は湖水地方だけでなく、イングランド最大の湖でウォータースポーツも楽しめるスポットです。たくさんの人たちがボートなどを楽しんでいるのを横目に、私たちは湖周辺の景色を楽しみながらウォーキングを楽しみました。
湖畔に沿って歩いていると、シュッシュポッポとどこか懐かしい音が聞こえてきました。もしや、とその方角をジッと見ていたら、木々の間から汽笛を鳴らしながら蒸気機関車の姿が現れました!
ウィンダミア湖沿いを走るレイクサイド・アンド・ハヴァスウェイト・レイルウェイの蒸気機関車です。レイクサイド駅から出発したところにちょうど通りかかったようで、タイミングが良くてラッキー!この蒸気機関車も、湖水地方でぜひ楽しんでいただきたいアクティビティーです。
ワインと焚き火と星空の夜
そしてグランピングのもう一つの愉しみといえば、夕食とそれに続く夜。豪華な品々でも良いですが、私たちはゆったりとした時間を満喫したかったので手軽でおいしいものを用意しました。1日目は具材たっぷりのスープ、2日目にはステーキや野菜のバーベキュー。
じつはここ、各ポッドの脇には専用のバーベキュー兼用の焚き火台が設置されています。おいしく食事を終えたあとも、そのまま残ってワイン片手に焚き火を満喫。何か特別なことはしていないのに、焚火とワインがあるだけで、贅沢な時間が流れますよね。
見上げると満天の星空。キャンプ同様、このままワインと焚き火と星空と夜を過ごすか。はたまたグランピングの良さであるふかふかベッドにつつまれるか。なんともぜいたくな悩みですね。
イギリス在住ライター(海外書き人クラブ)ディキンソン恵子
1994年からイギリス・ロンドン在住。日系会社、英系出版社を経て、家具作りコースや食品衛生コースなど履修。環境問題やSDGsに興味あり、D.I.Y.が得意。大手旅行会社ウェブサイトでイギリスのガイド記事を2007年から13年間担当した他、新聞、各種雑誌などに寄稿、ラジオ出演などもあり。ブログやメールマガジンでもイギリス情報発信中。世界100か国以上の現地在住日本人ライターたちの集団「海外書き人クラブ」の会員。 https://www.kaigaikakibito.com/