晩秋の東海道を走る車中泊旅
夏は車中泊のオフシーズン、なんて言ったりしますが、家庭用エアコンを搭載したハイエンドキャンピングカーを除くと、暑さは安眠の大敵です。
ちょうど11月くらい、昼間は適度に気温が上がり、朝夕にはしっかり冷えて寝つきやすくなる晩秋が、キャンピングカー旅には最適かもしれません。
などと誰にともなく理由をつけて、10月から11月にかけて長旅に出てきました。旅の相棒はトヨタ/ハイエースベースのバンコン(バンをベースに、おもに内装を加工したキャンピングカー)。家族もペットも連れず、完全なる女性ひとり旅です。どこへ行こうか、どんなテーマにしようかとあれこれ悩んだ末、今回は東海道を走ることにしました。
旅のテーマ&ルールは
江戸時代、庶民のあいだで日本初の旅行ブームが起こったと言われます。それまで大名行列など限られた人が行うものだった旅や遠出が身近になった時代です。宿場町の風景を描いた浮世絵『東海道五拾三次』のほか、旅行記にあたる「道中記」や、ガイドブックのような「用心集」が発行されたりしました。
江戸と京を行き来する主要な街道だった「東海道」は、東京都中央区の日本橋から京都市東山区の三条大橋までおよそ500kmの道のり。当時のおもな移動手段はもちろん徒歩。昔の人は夜明けから日暮れまで歩き、2週間で踏破したそう。そしていま、東海道を自転車や徒歩で巡る旅がひそかな人気なのだとか。
私はクルマですし、まったくもってストイックなタイプでもないので、「なるべく高速道路を使わず、だいたい東海道沿いを2週間で走る」という緩いルールで進めたいと思います。大都市を結んで走ることになりそうですが、果たして運転は大丈夫でしょうか。
旅のスタートは日本橋から
江戸時代にならって旅のスタートは日本橋に!
とはいえ、この周辺でクルマを駐車する場所を探すのはさすがに大変だったので、少し離れたところから電車と徒歩で来ました。都市部では、目的地から多少距離があっても公共交通機関の駅の近くに駐車場所を見つけることがポイントになりそうです。キャンピングカーだと、平置き駐車場であることや周辺道路に幅があることも大事。
首都高速道路に覆われて橋からは空が見えず、ずいぶん縮こまっている印象ですね。江戸の中心地だった頃の姿はちょっと想像できません。
往時の姿を見たい!となれば、墨田区の「江戸東京博物館」には実物大で復元した展示がありますが、大規模改修工事のため長期休館中。再び見られるのは2025年度以降の予定です。
今回の旅の終点となる京都の「太秦映画村」になら、セットとして半分だけ作られた日本橋が。下に川はなく、裏側は階段になっていますが、曲線を描く木の橋だったことがイメージできます。
さて、出発までしばらく所用で東京に滞在していたのですが、実のところ大変に疲れました。人とクルマであふれた街路の運転は気を遣い、あちこちに自然発生する渋滞で残り10kmに1時間以上かかることもざら。予約や待ち合わせがあるときなどは冷や汗をかきっ放しでした。
東京を発ってようやくクルマ旅らしくなり、ホッとした一面もあります。反面、キャンピングカーで東京滞在するコツなども見つけたので、また別の機会にお伝えしたいと思います。
日本橋を出発したら品川、川崎、神奈川と南下していくのが東海道ですが、このエリアは都市化が進み、往時の面影を残すところは少ないようです。本陣跡も石碑がひとつ残るだけといった具合。なので、一気に箱根の関所まで進みましょう。
キャンプも観光もしない「なんでもない」一日
箱根までは観光もせず移動中心だったため特筆すべきハイライトがないのですが、そんな「なんでもない日」をどのように過ごすか、ちょっとだけご紹介します。
十分な資産がある、不労所得があるなどの場合を除けば、長旅には「生活の糧(仕事)をどうするか」という問題がつきまといます。多いのは、定住して資金を貯める期間と、旅する期間を交互に繰り返すというパターン。転職のタイミングなど、人生の節目に旅をするという人もいますね。
変形バージョンとして、農業など人出が必要とされる時期に季節性の短期アルバイトをしながら移動して歩く人もいます。フードデリバリーの配達員など全国で請け負える仕事もあるので、アドレスホッパーのハードルが下がっているかもしれません。
もうひとつの方法は、コロナ禍で一気に普及した「リモートワーク」をしながら旅をするという方法です。もとからライターやイラストレーターなどの自由業には馴染みが深いスタイルです。
私はそのパターンですが、旅先で仕事をするのにどうしても必要なもの、それはインターネット環境。スマートフォンやモバイルルーターもありますが、固定回線に比べるとどうしても非力なため、定期的にWi-Fiスポットを探すことになります。
数日に一度はインターネットカフェやスーパー銭湯などに入りびたり、仕事中心の一日を作ります。とくにスーパー銭湯は、出資は少々かさみますが入浴、洗濯、Wi-Fi利用などが一度に済むので欠かせません。
バンライファーの中には、クルマの中で仕事をする人もかなり多いようなのですが、私は少々苦手です。どうしても「寝室」の感覚なのでついついベッドに誘惑され、だらけてしまいます。クルマの中で仕事ができるようになれば、かなり節約できますし、時間の効率もいいのになぁというのが目下の悩みです。
さて、高速道路ならひとっ飛びの道のりも、一般道では渋滞にはまったり、信号のたびに減速・加速を繰り返したりと亀の歩み。
とくに私は、ひとり旅であることや、運転が得意な方ではないことから夜には走らないようにしています。いまの季節だと活動限界は16時といったところ。途中でスーパー銭湯タイプの「湯YOUパーク」に滞在するなどしながら、のんびり3日かけて箱根にたどり着きました。次回は箱根での車中泊スポットなどをご紹介します。