日常のタイを自転車でのんびり走って見えた現地の素顔
タイを自転車旅行して気が付いたこと。それは、ご飯が、とても美味しいということ。
海外でアウトドアな遊び、体力を使う遊びをするときに、現地のご飯が美味しいのはとってもありがたい。本当に疲れたときは食べ物がノドを通らなくなってなったりするけれど、タイならそんなこと起こりません。だって、美味しいんだもん!
バンコクの中心部を抜けて走るのは、ひたすら道路の両脇を緑が覆う田舎の道路。「ゾウ横断注意」の黄色い看板が立っている場所から、そう遠くないところに見つけた古い東屋を野宿スポットに決めました。きっと、東南アジア特有のスコールに見舞われたときなど、緊急退避に使われているのでしょう。
東屋のベンチの上に張った蚊帳の中で迎えた朝。
自転車で少し走ったら、発見しました。朝ごはんの定番スポットを。
タイのチャリ旅、空腹は美味しいコンビニ飯で満腹に
タイにもあるんです。セブン-イレブン。
実は海外でも健在のセブンイレブンですが、私が以前住んでいたアメリカのセブンは、ポテチやジュース、ぱさぱさのサンドイッチが売っているだけで、日本とはまったくの別物。
だけどタイのセブンは、もう、ほとんど日本です。ランチパックみたいなパンも売ってるし、スイーツやライス付きの弁当類も充実。なんとなく「食べたことある味」で食欲モリモリ。
屋台メシも最高に美味い
そこから2時間くらい走ったら、またまた美味しいお店に出会いました。
道路わきの屋台で出会ったチャーハン・スープセット。
お値段40バーツ(当時約160円)。バンコクの中心部の約半額です。添え物の生野菜はお腹を壊しやすいと聞きますが、私は幸い大丈夫。濃い味付けのチャーハンに、ライムのしぼり汁がベストマッチ。
私はタイ語がまったく分からない。お姉さんは英語がまったくわからない。
「今、自転車で来たの??」「うん、そうだよ」
身振り手振りで会話します。
少し町らしい賑わいのあるところまで出ると、朝早くから営業している食堂もあります。ここでも言葉は通じないからガラスケースの内側に並んでいるお惣菜を指さして注文します。
煮卵入りの豚の角煮と、魚のすり身のカレー炒め。どちらもお米が進む味。タイのご飯は何でも辛いイメージがあったけれど、実際には、辛い物とそうでないものの差が激しく、カレー煮は水なしでは食べられない辛さだったけれど、角煮風の方は辛味なし。
これで1皿40バーツ(約160円)。
タイといえば、あれを食べなきゃ!
本格的な海老入りトムヤムクンは、ちょっぴり高くて、130バーツ(約520円)レモングラスがガツンと聞いた爽やかなトムヤムクン。激辛ではなく、むしろ出汁と香辛料の香りが深イイ味わい。スープというよりガッツリ米が進むメインディッシュです。
これは幹線道路沿いのパーキングエリアにあるフードコートで食べた米粉麺。これも赤いから辛そうに見えるけれど、意外や、ちょっぴり甘口のトマトスープみたいな味わい。右端に浮かんでいる黒いのは、豚の血をゼラチンで固めたもので、タイの麺料理によく載っている定番食材。味はあんまりなくて、トゥルンとした食感を楽しみます。
アユタヤ王朝ナレースワンとニワトリの謎
カンボジア国境を目指し、ひたすら自転車を走らせていると、こんなものがありました。
タイのアユタヤ王朝を束ねていたナレースワン大王の記念碑です。たくさんのニワトリに囲まれています。
階段を上がると、地面を埋め尽くさんばかりにニワトリの像が立っています。
これはいったい何なのか。これは、ビルマの王子との戦いに勝利しアユタヤ王国を復興させたナレースワン大王の闘鶏好きを記念したもの。一説によると、ビルマ王子との戦い前にも、ゲン担ぎのために闘鶏で賭けをしたとか。
嘘か本当かわかりませんが、大事な場面に闘鶏って…。そんな破天荒なエピソードが語り継がれるタイ国王ですが、歴史的にみると、タイの外交力ってすごいみたいなんです。
ナレースワン大王がまだ在位していた1602年、タイの南に位置すがインドネシアがオランダの植民地になります。その後、1800年代にかけて、東のカンボジア、ベトナムはフランス領に、西のビルマ一帯はイギリス領になったそう。周辺国すべてが植民地として支配されていくなか、タイだけは独立を維持したのです。
当時の西側諸国は、あえて、タイを手付かずのまま残すことで、他国の植民地と隣接することを回避するための緩衝地帯にしたのかもしれません。とはいえ支配を免れたのには、米の積極的な輸出などで微妙な力バランスを保つ外交力が、きっとあったはず。
ちなみに第一次世界大戦では、ギリギリまで中立を保ち、ドイツの劣勢がハッキリすると連合国側に加わり戦勝国に。そして第二次世界大戦では一旦日本側に加わってビルマ侵攻の後ろ盾を得るも、終戦するとすぐ「宣戦布告時の書類不備」を主張し、また戦争で獲得したビルマ領土を、もともと植民地支配していたイギリスに返還するなどして、宣戦布告を無効化。敗戦国になるのを免れたそう。
微笑みの国、タイ。
人は優しく、ご飯は美味しい、のんびりした国。
だけどその統治者は、なかなかにクレバーかつしたたかだった様子。
普段はあまり歴史に興味がない私ですが、自転車旅のおかげで、ちょっぴりタイの歴史を学ぶことができました。
タイでモーテルに泊まってみた
ところで基本的には野宿で旅をするつもりでいたものの、シャワー、Wi-Fi付き、クイーンサイズのベッドを置いてもまだ余る広い個室で1泊350バーツ(約1,400円)のモーテルを見つけたから、泊まってみることに。場所はカンボジア国境の街、ポイぺトのタイ側です。
そうだよね、自転車旅行だからって、必ず野宿しなきゃいけないわけじゃないもんね。宿に泊まれば、洗濯できるし、充電できるし。
そして宿の近くで出会っちゃいました、タイで食べた中でもダントツに美味しいガパオライスに。目玉焼きが載って70バーツ(約280円)。
ひき肉の粒が大きくて食べ応え満点。オイスターソースっぽいとろみがついて、ニンニクガッツリ。そしてなにより、ガパオライスに欠かせないあの食材、バジルの風味がハッキリ香ります。美味しーっ!
これもしかして、キャンプ飯でも作れるのでは?
国境の自転車屋さんでチェーンに注油
さて、いよいよ自転車で初めての国境越えです。
ここはカンボジア国境ポイペトの手前、タイ最後の町にある市場、通称ボーダーマーケット、つまり国境市場。コロナ禍の影響か、すっかり活気がなくなってしまった市場ですが、ここでひとつ、国境を越える前にやっておきたいことがあるのです。
見てください、この足。靴下を境に日焼けしているのはそうですが、結構、泥が跳ねています。
私がこの自転車旅行をした9月下旬のタイは雨季で、毎日雨が降っていました。雨季って、1日中降っていることは少なくて、その代わり、激しい雨が毎日短時間降るみたい。
道路を走れば泥水が跳ね返り。路肩が巨大な水たまりになっていて、避けられずに突っ込んだこともありました。
自転車の方は、そういえば買ってからチェーンに油を差していません。少しでも錆と不具合を防ぐべく、油を差しに自転車屋さんへ。
「今ちょっと油を差したいだけでしょう?買わなくていいよ、これ使って」。タイの自転車屋さんはどこもとっても親切です。
人生初!自転車で国境を越えてみた
肝心の国境ですが、越えてみると案外あっさりしています。
これはタイ側の入国管理局。ここでパスポートに出国スタンプをもらいます。
そして、これがカンボジア側の入国管理局。ここでも同様の手続きでパスポートに入国スタンプをもらいます。
入国手続きの窓口は2階だから、自転車は階段脇に停めます。警備員のおじさんが、さも「大丈夫、見といてあげるから」という風に駐輪場所を指定してくれますが、手続きが終わって戻ると忽然と姿を消しています。野良犬が番犬替わり、ということでしょうか。
旅してわかったカンボジア入国の注意点
気を付けなければいけないのは2点だけ。
カンボジア入国には事前にビザが必要なこと。入国管理局で当日アライバルビザを申請する場合は、タイバーツはもちろん日本円では支払いができず、米ドルもしくは国外にほとんど流通していないカンボジア貨幣リエルが必要になります。
もう1点は、入国手続きを終えた人は、通常、窓口のゲートの向こう側に通過します。しかし1階に自転車を停めている人は、その旨を伝えて、窓口の向こうに流れようとする列に逆らって1階に戻らなければなりません。
入国スタンプを押してもらたったのにUターンするのは不思議な気分。
果たして私がカンボジアで出会う景色とは?
カルチャーショック満載の次回をお楽しみに!