今回は、いつものように里山の上まで走った後、子ども達にロープをばらまいてみた。何にでも興味を示してくれる子ども達は、バーゲン会場のおばさま達のようにロープを奪い合い、そして森のあちこちへ消えていった。
里山の上に到着すると、1月だろうが何だろうが子ども達は上着を脱いで一カ所に積み始める。恐ろしいほどたくましい。
野生児達は、ロープを手に入れただけで様々な遊びが発生する。定番は大縄飛びや綱引きだろう。面白かったのは、朴の葉にロープを束ねて置いた焼きそば屋さんごっこだ。ロープを上手にクネクネ巻いて葉の上に乗せ、そして調味料や肉、野菜のかわりに落ち葉や木の実を混ぜ込んでいた。
秘密基地を作っている子どももたくさんいた。大きな木を結びつけるのにロープを使っていたり、ロープ自体を骨組みとして活用する子どももいた。
完成した秘密基地の前でご満悦のポーズ。ここには仲良しのお友達しか入れてあげないのだとか。
子ども達の創造力は無限に広がるのだが、時には技術が追いつかないことがある。僕はそのお手伝いをするのが今回のミッションだ。
「はせべ先生!ロープを上に投げてほしんだけど。」
女の子3人組が間違いなく何かを企んでいるニヤニヤした顔で迫ってくる。
「ん??ロープを上に投げる?」
「そう。早く投げに来て!あっちだから・・・・」
女の子達の説明ではいまいち何がしたいのかよくわからない。現場に行ってみると大きな倒木を二人で抱え、枝が横に伸びた木の下で待っていた。それを見て一発で答えがわかった。彼女たちはブランコを作りたかったのだ。
早速ロープを木にかけ、女の子達と一緒に大きな倒木を結びつけた。試し乗りではロープがすぐにほどけてブランコが女の子達ごと落下。大笑いとともに試行錯誤を繰り返すこと数回、やっとブランコが完成した。
完成したブランコにちゃんと乗れるか実験中・・・のはずが、すでに楽しくなってしまっている。
「はせべ先生ありがとう。バイバイ。もういいよ。」
と素っ気ない扱いを受けたので、早々に立ち去り、遠目に彼女たちの遊びを眺めることにした。
彼女たちの目的は、“ブランコをつくる”ことではなく、普段保育園では座面が小さいため禁止されている“ブランコの二人乗り”をするために頑張っていたのだ。
嬉しそうに叫びながらブランコの二人乗りをする女の子達。それを楽しそうに見つめる保育園の先生達。よしよし。今日のミッションはコンプリートだ。
待ちに待ったブランコの二人乗り。成功した瞬間に出た一言は「キャー!!気持ちいい〜」。
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長谷部雅一
アウトドアプロデューサー。
アウトドアイベントの企画・運営を手がける「Be-Nature School」スタッフ。人と自然をつなぐインタープリターとしても活躍中。
著作に『ネイチャーエデュケーション』1300円+税 みくに出版