東南アジア雨季の自転車旅行の途中、道路が冠水…!? プノンペンへの道はトラブル続き
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    2022.12.23

    東南アジア雨季の自転車旅行の途中、道路が冠水…!? プノンペンへの道はトラブル続き

    自転車旅で訪れた各地でお世話になったのがお寺のお坊さんたち

    自転車旅で訪れた各地でお世話になったのがお寺のお坊さんたち。記念に写真を1枚。カンボジアにて。

    プノンペンへ

    タイ・バンコクからベトナム・ホーチミンを目指す東南アジア自転車旅行。

    カンボジアのアンコールワットを通過し、旅も後半戦に差しかかろうというとき、私にはひとつ悩みがありました。それは、シュムリップからホーチミンまで、どのルートで行くかという問題。

    私の秘策は、シェムリップ郊外から出ているというフェリーに自転車を載せて、カンボジアの首都プノンペンまで行くというもの。しかしこのフェリーは、かなりのボロ船として知られていて、そもそもコロナ禍以降は運休していることが判明。

    シュムリップからホーチミンまで最短距離は約450km。間にプノンペンを経由する場合は約530km。

    プノンペンへ行くか、行かないか。

    迷いに迷って、やっぱり行くことに。

    その理由は、以前、東京でたまたま立ち寄った古本屋さんで手に入れた、1冊の本「ライカでグッバイ」。この本の題材である戦場カメラマンの沢田恭一さんが、凶弾に倒れたのは、ベトナム戦争中のプノンペン郊外の国道1号線でした。

    沢田さんが撃たれた現場の詳細な位置を私は知りません。だけどシェムリップからプノンペンへ自転車で向かうときに走る国道6号線の景色は、きっと国道1号線とあまり違わないはず。私はそれが、見てみたい。

    そうして一念発起してプノンペンへ向かうも、道路はプチトラブルの連続でした。

    えっ。道路が冠水してるじゃん!?

    水没した田畑で浮き輪で遊ぶ子供たち

    「ハロー!!」と子供の声がして振り返ると、浮き輪をつかむ子供たちの姿が。道路の高さギリギリのところまで、田畑が水没しています。

    私が旅したのは、2022年9月下旬。カンボジアはまだ雨季で、あちこちの村で床上浸水が起きていました。

    家を行きするためにボートを浮かべている村もあれば、水没した田畑をプールみたいにして、はしゃぐ子供たちの姿も。

    そしてついに、道路が冠水しているエリアに到達しました。

    冠水した道路

    これでも水かさは引いてきた様子で、長距離バスなどは少し遅延しながら運航していました。

    深さは、一番深いところでもひざ下程度。道路の真ん中のほうが端っこより若干浅いため、みんななるべく端っこを避けてソロリソロリと通行しています。

    自転車は押せば問題なく通行可能。だけどチェーンとか歯車とかが錆びつく予感。

    冠水した道路を自転車で進む

    巨大な水たまりに足を浸して、「ピッチピチ・チャップチャプ・ランランラン♪」。

    慣れない自転車旅で大転倒

    カンボジアの車は右側通行。それはひとまず置いておくとしても、道路事情は日本と比べるとかなり特殊。

    まず、国内を貫く主要な国道でも、郊外は片側1車線ずつしかありません。追い抜くときは反対車線に出るのですが、すれすれのところで正面衝突を回避しています。絶妙なタイミングです。

    だだし、車線は片側1本ずつしかない代わりに、路肩の幅は普通の車線の半分くらいとかなり広め。主にバイクと自転車が通行するのですが、バイクは頻繁に逆走していて、たまに静かにバックしてくる乗用車もいます。

    道路の様子

    そうはいっても、路肩が広いので自転車でも走りやすい。

    そしてある時、路肩に転がっていたのが大きな古タイヤ。車道は車列が続いていて、脇には大きな水たまり。その大きな水たまりの端っこギリギリを通ろうとして、ツルんと滑って大転倒。

    後続のバイクが上手にかわしてくれたので良かったけれど、あわや大惨事。

    大の字に派手にコケたけれど、不思議と擦り傷はなし。自転車にゴムひもで括り付けたザックも吹っ飛ばされずに固定されたまま。良かった良かった。

    再び自転車にまたがって、ペダルを踏む。

    あれ…。あれれ…?

    真っすぐ進みたいのに、どうして自転車が曲がっていく…。

    あっ。

    手元を見て気がつきました。転倒の衝撃で自転車のハンドルが曲がっています。

    修理キットから六角レンチを取り出して回してみるも、もともと中古自転車で六角の穴がサビついているせいか、うまく嚙み合ってくれません…。

    バイク屋さんでハンドルを直してもらう

    ハンドルはバイク屋さんで直してもらうことに。

    自分で修理することは早々に諦めて、最寄りの町までUターン。忙しいだろうに、地面に工具を広げて作業していたバイク屋のおじさんがすぐに直してくれました。

    初めてのパンク

    トラブルはまだまだ終わりません。現場はプノンペンまであと110kmくらいになったころに泊まったお寺の東屋でした。

    プノンペンまでの残りの距離を示す看板

    国道脇にはときどき、プノンペンまでの残りの距離を示す看板が立っている。

    「前にね、君と同じように自転車旅の人が何人か泊まりに来たんだよ。彼らは確か、インド人だったかな」。英語が話せる人があまり多くないカンボジアですが、お坊さんの中には話せる人がいるのです。まだ幼い子供のころからお寺に出家したというお坊さんもいるなか、実はお寺でしっかり学問を習える仕組みがあるそう。

    ありがたく泊めていただいて、翌朝起きると、なんと後輪がパンクしているではありませんか。

    雨が降ったら自転車が濡れてしまうからと、昨晩お坊さんが東屋の中に自転車を入れてくれたのですが、東屋の床のところどころに小さな釘が出てて…。運悪く踏んでしまったのです。

    パンク修理してくれたお坊さんたち

    世話を焼いてくれた年長のお坊さんと、それにくっついて周る小坊主たち。お世話になりました。

    パンク箇所を見つけるため、たらいに水を張らせてもらうと、わらわら集まって手伝ってくれた小坊主たち。修理用パッチはライターで炙ってくっつけるんだよ、と近所のおじさん。だけどなんだか、うまくいかない。とりあえず直すより交換した方が早いからと人生初のチューブ交換に踏み切り、なんとかプノンペンまでたどり着きました。

    カンボジアのパーティー宿

    都会に入ると、かえって安心して野宿できる場所が見つかりにくいのは、どこの国に行っても共通の悩み。ここプノンペンではドミトリー式のバックパッカー宿を利用することに。

    バックパッカー向けの安宿マッド・モンキー

    バックパッカー向けの安宿を世界各国に展開しているマッド・モンキー。おサルのマークが目印です。

    利用客のほとんどが外国人で、スタッフも外国人ばかり。カンボジアであってカンボジアでない空間です。

    同価格帯の安宿と比べて、ベッドルームの大きさや清潔感が格段に良いというわけではありません。

    でも、バー・レストラン・スペースがあること。毎晩のようにパーティー音楽が流れて、週末にはDJも来てくれること。そして小さいけれどプールがあること。

    旅人同士のパーティー感を求めて、若いバックパッカー達がこの宿に集まってしまうのです。それは実際、カンボジアじゃなくて自分の国でもでもできる遊びでしょう。だけど海外にいながら、あえてそうやって時間を潰すことが贅沢なのかもしれません。

    ドラゴンフルーツ

    ちなみにバーのおつまみはアメリカンなメニューが多いため、少しでも東南アジアを感じようと、外の屋台で売っていた果物を食べることに。味はスイカ、食感はキウイ。

    プノンペンのあの場所に、自転車で行ってみた

    宿の若者を観察してしていると、連日ダラダラと宿で時間を潰している様子。その理由のひとつは、正直、プノンペンに観光名所が少ないことが原因でもあります。

    観光名所、といってしまうと不謹慎かもしれませんが、プノンペンの観光客が必ず行く場所のひとつがトゥールスレン博物館。

    トゥールスレン博物館

    トゥールスレン博物館。世界各国の観光客だけでなく、カンボジアのお坊さんも慰問に訪れていました。

    カンボジア国民の平均年齢は約24歳。白髪頭のおじいちゃん、おばあちゃんを町で見かけることはほとんどなく、お寺にお邪魔しても、みんなをまとめている年長のお坊さんが30代程度だったりします。

    その原因のひとつが、ポルポト政権時代に行なわれた大量虐殺です。

    トゥールスレン博物館はその歴史を伝える資料館。もともと高校だったところを収容所にして、自国民を大量虐殺した現場です。

    教室の小さな窓の外、有刺鉄線の向こうに見える中庭。虐殺された人たちが眺めたであろう中庭。写真のお坊さんたちが歩いているのが、その中庭です。

    ここは、海外旅行をしようと思い立って、真っ先に思い浮かぶ場所ではないかもしれません。自転車旅行のおかげで、私は来ることができました。

    次回、いよいよ東南アジア自転車旅行最終回!ベトナム国境の意外な景色とは?

    私が書きました!
    剥製師
    佐藤ジョアナ玲子
    フォールディングカヤックで世界を旅する剥製師。著書『ホームレス女子大生川を下る』(報知新聞社刊)で、第七回斎藤茂太賞を受賞。山登りも好きで、アメリカのロッキー山脈にあるフォーティナーズ全58座(標高4,367m以上)をいつか制覇したいと思っている。

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