週末だけの田舎暮らし、自分だけの遊び場……住んでいる場所とは別に、拠点をもうひとつ設ける2拠点生活が楽しい!
どこから何から始めたらいいのかわからないという人も、大丈夫。おためし体験などができる、施設や自治体が心強い味方となってくれる。
長野県飯綱町「いいづなコネクト」の記事「泊まれて、 集えて、 仕事もできる 元廃校『いいづなコネクト』で2拠点デビュー!」に続き、ここでは「人と地域のコネクター」として2拠点生活をサポートする取り組みの実例を紹介しよう。
移住体験を提供
リモートワークの環境を整えながら、町は住宅の提供にも力を入れてきた。
「移住を希望する人がいても、住宅がなければ移り住むことはできません。また、町としても活用されない空き家が増えるのは望ましくない。そこで地域と密に連携し、空き家が出たら持ち主にお声かけして新しい入居者へと引き継いでいます」
そう話すのは飯綱町役場人口増推進室の篠原大也さんだ。
「さまざまな情報をもとに空き家の所有者にコンタクトを取れるのが町の強み。しかし町は不動産取引を行なえません。そこで所有者の同意が得られたら、資格をもつ事業者に引き継ぎ、住宅の仲介やリフォームを行なっていただいています」
町から空き家を紹介された不動産業者は、町の運営する空き家バンクを通じて物件を周知。希望者へと家を引き渡す。
「空き家には築年数が高い古民家もあります。雪深い地域の古民家の暮らしは未経験者には想像がつかないので、移住を考える方には古民家を貸し出す移住体験も行なっています」
移住体験住宅は今秋リフォームが完了。指定管理者のカンマッセいいづなへ申し込むと利用ができる。
移住気分が味わえる
宿泊無料の移住体験住宅
賃貸も売買も!
お値打ち空き家バンク
ツチクラ住建 西村啓大さん
長期泊向け宿泊施設
移住者が営むアウトドア派の宿
The Nook Lodge
民間の工務店や宿泊施設も移住希望者を後押ししている。町内で古民家を改装した宿と一棟貸しのコテージを営む「Cafe のらのら」は農的暮らしを志す若者を対象にゲストハウスの個室を格安で提供している。
「菜園の草むしりを手伝いながら、いいづなコネクトでリモートワークをしています」
と話すのは、このサービスを利用している河唯貴さん。
「現在の私の仕事はパソコンがあればどこでもできる営業職。ヤギの世話をしたあとにWeb会議に出席、といった感じで自由に働いています」
飯綱町で育った若い世代も民宿を通じて町の活性化を図る。牟礼駅から徒歩1分の場所にある「まちやど丸為旅館」を切り盛りするのは佐々木彩花さん。オーナーの松田さんはビジネスマンや工事現場で働く人を対象に宿を営んできたが、コロナ禍で利用が激減。体制を素泊まりに変えたタイミングで佐々木さんが加わり新サービスを開始した。
「長期泊の方を対象に1週間2万円、1か月6万5000円でお部屋を提供しています。このプランを作ってみたところ、移住先を探す人やアウトドアを楽しみたい人、北信地域をじっくり旅したい人のベースとして使われるようになりました」
移住体験住宅、援農ゲストハウス、素泊まりサブスク……。旅行以上定住未満の宿泊施設が充実した飯綱町は、2拠点生活の体験にぴったりの町だ。
宿を手伝って援農ロングステイ
Cafe のらのらゲストハウス
利用者 河 唯貴さん
サブスクで暮らすように泊まる
まちやど丸為旅館
※構成/藤原祥弘 撮影/柳沢牧嘉
(BE-PAL 2022年11月号より)