BE-PALおすすめの書籍をご紹介。今回は「言語」と「農業」をテーマにした2冊。探検家的視点で習得に取り組んだ様々な言語の話、そして転換期を迎えた農業のあり方という、どちらも一見難しそうにみえて、興味深く読み込んでいける内容だ。
BOOK 01
これはもはやオタクの域
痛快なる言語探検譚
『語学の天才まで1億光年』
高野秀行著 集英社インターナショナル ¥1,870
現在、世界で話されている言語(手話も含む)は、7000〜8000あるといわれる。著者がこれまでに学んで実際に現地で使ってきた言語はなんと25を超える。本書は著者が19〜29歳までの約10年間のできごとを言語をテーマに振り返りまとめたもの。
アフリカのコンゴでは幻獣ムベンベを追い、南米アマゾンでは幻覚剤を探し、ミャンマー北部ではケシ栽培(アヘン)に潜入-。誰も行かない辺境で誰もやらないことをしたい著者にとって現地語の習得は欠かせず、その学習法は並々ならぬものがある。
言語の法則を独自に見出し、(その言語に)文字がなければ発音をアルファベットで書き起こし、入門テキストまで自作。習得へのハードルが高いほど探検要素は増し、著者は俄然やる気になっていく。ネイティヴに習うこと、話すときは現地の人を真似たノリが大切など言語学習のアドバイスも満載だ。
そして、著者が各地で感じた人びとの言語観は、暮らしや文化、歴史背景を推し量る術となり興味深い。相手がどこの国か? よりも何語を話すのか? に注目したことはあまりなかったように思う。日本語はどの言語の系統にも属さないいわば辺境言語であるということにも改めて納得。
BOOK 02
農家はかわいそう?
そのレッテルに物申す!
『農家はもっと減っていい
農業の「常識」はウソだらけ 』
久松達央著 光文社 ¥1,144
戦後、農家数は減少の一途だが、これは危機か。全農業産出額の8割弱を、数では1割強の農家(売上高1000万円以上の層)の売り上げが占める。つまり大半は売上高500万円以下の兼業農家。農業は大淘汰の時代を迎えたと著者はいう。
著者は’98年に一般企業から農業に転身。自身の経験を元に農業の実態を詳らかにし、未来に一石を投じる。ビジネス書のような側面もあり、農業志願者は一読を。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2022年11月号より)