東京の車中泊スポットは希少
東京、大阪、名古屋など多くの人が住む大都市でありながら、旅行者を惹きつける観光地としての魅力を併せ持った街が国内にはたくさんあります。
しかし一般的に、大都市になればなるほど車中泊は難しくなります。「道の駅」のような自動車ユーザー向けの休憩施設も少なく、RVパークの登録もほとんどありません。そもそも土地が貴重なので、のんびりとクルマを停めておける場所自体がないと言えるでしょう。
そんな中、希少な東京都内の車中泊スポットをご紹介します。いずれも私が実際に利用したことがある場所で、「車両サイズ」「滞在スタイル」などの条件さえ合えば、自信をもっておすすめできるスポットです。
くるま旅パーク東京オートキャンパー王子神谷(東京都北区)
ひとつめは北区の「くるま旅パーク東京オートキャンパー王子神谷」。マンション駐車場の一角を「くるま旅パーク」にしているスポットです。くるま旅クラブ会員に限らず、誰でも利用できます。
※くるま旅パークとは……キャンピングカーのオーナーズクラブ「くるま旅クラブ」が推進する、余剰駐車場や空きスペースを車中泊スポットとして活用するシステム。RVパークよりも登録要件が緩やかで、トイレなどの設備はまちまちですが、飲食店や民宿など多様な施設が登録されています。
赤い鳥居のお稲荷さんが印象的ですが、「屋敷稲荷」と言って家や土地を守る神様だそう。最初は神様の隣で寝るなんてちょっとドキドキしましたが、地域猫も闊歩(かっぽ)し、のどかで穏やかな空気に包まれています。
現状では3台+αのスペースがあり、予約状況によって駐車できる場所が異なります。
オーナーさんは敷地内に居住しています。日程を変更したいときや、相談ごとがあるときなどすぐに対応してもらえ、また私は車中泊スポットの治安をかなり重視しますがその点でも安心でした。
ゴミ処理に対応しているほか、簡単な調理に使える外水栓あり。別途料金で電源も利用できます。
トイレや洗面所の利用には、ユニークなシステムを採用しています。所定の追加料金を支払い、ルームキーを受け取ります。
すると、マンションの1室でトイレやバスルームを利用できるんです。1グループ1室の利用で、チェックアウトごとに清掃を徹底しているとのことで、衛生面でもまったく不安はありません。
電子レンジや洗濯機などの設備の整った部屋もあり、料金によって選べます。ただし法律上、就寝目的での利用はできません。
さらに特筆すべきは、その立地。徒歩5分で地下鉄南北線の王子神谷駅へ行けるので、そこから都内どこへでも足を伸ばせます。
昔ながらの商店街、東十条銀座もすぐそこ。スーパーマーケット、コインランドリー、八百屋、弁当屋と生活に必要な店舗が揃っています。
徒歩圏内に「平和湯」「やなぎ湯」と銭湯も複数あり、下町情緒にあふれています。マンション内のバスルームを利用するのもよし、地域の銭湯を利用するのもよし、好みによって選べますよ。
コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、地下鉄駅とすべてが揃った便利な立地と引き換えに、施設は交通量の多い幹線道路沿いにあります。クルマの走行音が途絶えることがなく、人によっては騒々しいと感じるかもしれませんが、私はまったく気になりませんでした。
都会の生活音が気にならず、便利に東京滞在できる車中泊スポットを求めている方にはおすすめです。料金体系がかなり細かく分かれており、オーナーさんがライフワークとしている盲導犬支援活動への寄付もあるため、趣旨に賛同できる方ならなおよいでしょう。
施設詳細
- 名称:くるま旅パーク東京オートキャンパー王子神谷
- 住所:東京都北区神谷1-10-7
- 料金:1泊1台2500円程度から(会員種別、利用備品により異なる)
- 台数:3台
- 備考:電源1泊400円、ゴミ処理・給水・汚水処理無料
東京下町キャンピングカー駐車場(東京都荒川区)
続いては「タイムズのB」が仲介する「東京下町キャンピングカー駐車場」です。場所は荒川区、まさに下町と呼べるエリアです。
「タイムズのB」は、個人宅や事業所などの余剰駐車場を希望者に貸し出す駐車場予約サービス。こちらの「東京下町キャンピングカー駐車場」も、まさに一般住宅の駐車場なので、初めて利用するときはびっくりするかもしれません。
スペースはちょうど1台分が停められる三角地。周辺道路は細い一方通行ですが、標準ボディー・ハイエースの私の場合、慎重に運転すれば危険なく入出庫できました。とくに前後には十分な余裕があります。
軽キャンパーやコンパクトバンコンならまったく問題ないでしょう。キャブコンも何度も利用実績があるそうです。ただし、現地までの道は徐行が推奨されるほか、通学路のため入出庫不可の時間帯もあります。
一見するとごく普通の駐車場ですが、設備は充実。水道、電源、排水溝が利用可能です。オーナーさんもキャンピングカーユーザーだそうで、必要なものを知り尽くしています。
周辺マップなどが載った丁寧な利用手引きが用意されているので、初めてでも使い方に迷うことはありません。
敷地内トイレはありませんが、徒歩1分の場所に公衆トイレがあります。私が利用したときにはきちんと清掃、整備されていました。
そして立地の利便性はこちらも抜群。
徒歩2分で「ジョイフル三ノ輪商店街」に到着。下町情緒あふれるアーケードで、映画『万引き家族』のロケ地ともなったそう。ノスタルジーを感じさせる昭和レトロな雰囲気で、コインランドリーも銭湯もあります。
商店街から少し逸れると都電荒川線の三ノ輪橋駅に着きます。普段の移動には、同じく徒歩圏内の地下鉄日比谷線・三ノ輪駅が便利でした。
歴史ファン必見なのが、駐車場に隣接する円通寺の史跡「旧上野の黒門」。移築されたものですが、幕末の上野戦争の弾痕が残る大きな門です。車中泊地から徒歩で史跡を見に行けるなんて贅沢!
敷地内であれば柔軟に活用して欲しいというオーナーさんの意向ですが、住宅に隣接する立地だけに車外でくつろぐことは少し難しい印象です。
また、日中は車両のすぐ脇をたくさんの歩行者が通過したり、自動販売機を利用する人が立ち止まったりするので、落ち着かないと感じる人もいるかもしれません。
しかし夜は大変に静かで、地域の住民になったような気分で安眠できました。日中は都内観光に出かけ、夜は寝るだけ、といった使い方なら利用価値大です。
施設詳細
- 名称:上野浅草へGO!東京下町キャンピングカー駐車場
- 住所:東京都荒川区南千住1-57-14
- 料金:1泊1台4500円
- 台数:1台
- 備考:電源・給水無料
RVパーク東京 よみうりランド(東京都稲城市)
23区ではありませんがユニークな滞在ができるのがこちら、「RVパーク東京 よみうりランド」です。
ご存じ、遊園地「よみうりランド」の敷地内に位置します。遊園地で車中泊ができるスポットというのは日本初!
広大な砂利の敷地がRVパークになっていて、アトラクションのレールが目の前を走る非日常的な環境です。乗客の歓声が間近に聞こえ、昼間は大変に賑やかですが、閉園後には静寂に包まれるのでご安心を。
電源、水道、ゴミ捨て場の利用が料金内に含まれていて、車中泊スポットとしては申し分ない環境が整っています。トイレは園内のものが24時間利用可能です。高規格キャンプ場ならぬ、高規格RVパークと言えるでしょう。
屋外調理や火気使用は不可ですが、自サイト内であればサイドオーニングを展開したり、イス・テーブルを出してくつろぐこともOK。
徒歩圏内に入浴施設「よみうりランド丘の湯」もありますよ。夕食は「よみうりランド」に複数のレストランがありますし、宵っ張りの方は入浴後に「丘の湯」の食事処で食べるのもおすすめ。
なにより特徴的なのが、RVパーク利用料に「よみうりランド」「HANA・BIYORI」の入園料(アトラクション料金は別途)が含まれていること!利用人数によって料金は変動しますが、いずれも普通に入園するよりもかなりお得な設定になっています。
昼間は「よみうりランド」で遊んで、夜は車中泊、翌日には「HANA・BIYORI」に入園。そんな夢のような滞在が実現します。なお、冬期間は営業を縮小する予定があるため公式サイトで最新情報をご確認ください。
施設詳細
- 名称:RVパーク東京 よみうりランド
- 住所:東京都稲城市矢野口4015-1
- 料金:1泊1台1名5,000円(2名以上の場合は1名につき追加料金1,000円)
- 台数:10台(変動する場合あり)
- 備考:施設入園料込み、電源・給水・ゴミ処理無料
東京での車中泊スポット利用のポイント
今回ご紹介した車中泊スポットは、最後の「よみうりランド」を除くと住宅街の一角であったり、一方通行でしか到着できないなど大都市らしい立地となっています。また、車両サイズ○mまでといった数値の目安は、頭の中だけでは具体的にイメージしにくいです。
車体の大きいキャンピングカーの場合、道を1本間違えただけで転回できなくなるなど、リカバリーが難しいことがあります。誤って路地に入ってしまう、行きすぎてバックするといったケースはなるべく避けたいもの。
そこでおすすめしたいのが、Googleマップの航空写真モードとストリートビュー。
ルート決定に地図アプリを利用する人は多いと思いますが、もう1歩進んで航空写真を確認。鳥の目線で真上から撮影した画像は、駐車場の通路幅や駐車スペースをイメージするのに大いに役立ちます。
また、到着までの道順をストリートビューで確認することは、道路の雰囲気を体感できるとともに、施設の入口や、曲がるべき角を覚えることができます。現地に行ったとき「見たことがある」のと「まったく初めて」では冷静さがまったく異なりますよ。
撮影時期に気をつける必要がありますが、隅切り(車両の通行のため、角地にあたる土地の角を切り取って空地にすること)の有無などもわかり、曲がりやすさの判断に使えます。
そして安全運転の最大のポイントは「混雑する時間に運転しない」、これに限ります。歩行者や自転車が縦横無尽に行き来している、後続のクルマが迫っている、人が注目している、といったシチュエーションはドライバーに焦りを招きます。
私は、初めて行く場所で不安だったり、駐車しにくそうな場所だったりというときは、早朝に移動するようにしています。複雑な車線変更も、狭い場所への駐車も、周囲に誰もいなければ難しいことはありません。大都市・東京での一風変わった車中泊、ぜひ体験してみませんか?