焚き火の基本を覚えよう
森や浜で燃料を集め、火をつけ、自分でコントロールする。それだけで、奥深い体験になるのが、焚き火のおもしろさ。子供でも初心者でも、手順をおえば火を起こすのは簡単。一人前のタキビストになるための基本と10のコツをご紹介します。
1 焚き火をどこで楽しむか?
多くの場合、河原や海岸での「軽微な」焚き火は容認されているが、管理する自治体ごとにルールが異なる。
キャンプ場も直火禁止、焚き火台必須などそれぞれに条件が異なるので、出かける前に確認を。
火床の場所はテントや木から4~5m離し、万一に備えて水場も近いと安心。植物が生えているところは避け、砂地や赤土の上を選ぶ。
もとが腐葉土の黒土は、土が燃えることがあるので注意すること。
2 焚き火の基本道具
薪を小割りにするための両刃(繊維、に沿って割りやすい)の鉈のほか、薪から焚きつけを削り出すために小回りのきくナイフもあるとよい。
木のささくれや焚き火の熱から手を保護するのに、耐熱性の手袋(革手袋でもOK)も必須だ。
点火具には防水マッチなどを。不慣れなうちはノズルの長いライターが便利。
火のついた薪を組み直すための火ばさみも忘れずに。
3 薪ひろい
針葉樹(左)は繊維の密度が低く、空気が入りやすい。そのため燃えやすいが火もちが悪い。
逆に広葉樹(右)は繊維の密度が高いぶん、火つきが悪く、火もちがいい。
針葉樹と広葉樹は葉を見れば区別しやすい。できれば両方集め、最初は針葉樹で火を。おこし、安定してきたら広葉樹に代えていくとよい。
枝は地面に落ちて湿っているものより、立ち枯れたものがよく燃える。
4 焚きつけ材料
ライターの炎を直接薪に近づけても火はつかない。まずは火口(ほくち)となる焚きつけに火をつけ、小さな炎を作る。
焚きつけが少ないと薪に燃え移る前に燃え尽きてしまうので、多めに用意するのが失敗しないコツ。身近なところに良材があるので、探してみよう。
マツの葉
極細の葉は大量に集めるのが大変だが、松脂が含まれるため、着火材に最適。都会の公園などでもすぐ拾える。
麻ひも
家庭にある荷造り用の麻ひもも、よい燃料となる。編んである物を指でよくほぐし、毛羽立たせておくと火がつきやすい。
マツボックリ
マツ葉同様、松脂を含むマツボックリ。乾いていればマッチ1本で着火し、火もちもほどほど。着火材としても燃料としても重宝する。
スギの葉
焚きつけの代表選手。茶色く枯れたものを拾うこと。はじめは煙を大量に出すが落ち着くと勢いよく燃え上がり、火力も十分。
シラカバの皮
カンバ類の樹皮は東北から中部高地で使われる。樹脂を多く含み、火が強く、火もちがよい。採集は立ち枯れの木や倒木から取ること。
5 薪の下準備
野外で拾える太い薪は、樹種や乾燥状態も不揃いで慣れるまで扱いづらい。市販されている薪はよく乾いており使いやすい。
購入した薪はたいてい太すぎるので、火がつきやすいように鉈で小割りにして使用する。
また、皮がついたままの木や表面が濡れた木は燃えにくいので、皮をナイフで毛羽立たせておくと、焚きつけからスムーズに火が燃え移る。
刃先が定まるように、薪の中心に鉈をおき、 ほかの薪などで背を叩いて木口に食い込ませる。
鉈の頭を叩いて途中まで食い込ませたら、あとは薪ごと振り上げて下に叩き付けて割る。
ナイフで皮をめくるように切り込みを入れる。この部分から火が燃え移りやすくなる。
6 薪の整列
細い薪から太い薪へ徐々に火を移していくのが焚き火の基本。最初は爪楊枝程度の太さのもの、そこから割り箸、鉛筆程度の太さと、どんどん太くしていく。
最初はよく燃え上がるようにたくさんの細い薪を投入するが、太くなるほど、一度に加える量は少なくする。
上の写真で、だいたい総重量が3〜4㎏。これだけあれば、火を楽しむだけではなく、一家4人分の飯炊きにも十分。
7 かまど作り
熱を逃がさず、防風性をアップさせるのがかまど。しかも、火が広がらないようにする防火の働きもある。
石と石の間にはすき間を作って空気の通り道を作り、効率よく薪を燃焼させる。
4人家族なら直径30~40cm程度が使いやすい。あまり大きいと効率が悪い。
三方を石3つで囲んだり、太い薪を風向きと平行に2本並べ、その間で焚き火をしてもいい。
8 火をおこす
かまどの中央によく乾いた焚きつけ(スギの葉など)を多めに置く。密集させること。
その上に爪楊枝からストロー程度の小枝を同じ方向に揃え、ギュッと束にして置く。
もうひと回り太い枝を斜めに立てかけ、焚きつけに着火。火が広がったら徐々に薪を足す。
9 火おこしの秘密兵器
火がくすぶったり、煙が大量にでる原因は焚き火が酸欠状態のことが多い。そんなときにはうちわや扇子などで風を起こして酸素を送り込む。
ピンポイントに狙いを定める場合は、火吹き竹が便利。コツはなるべく燠おきに近づけて長く吹くこと。
新たな薪を添えて吹けば、消えかけた小さな燠からでも、もう一度大きく火を起こすことができる。
10 焚き火のあとかたづけ
立つ鳥あとを濁さず。焚き火は最後まで完全燃焼させるのがマナー。
最後まで燃やしきると火床は黒から白になり、目立たなくなる。燃え尽きたら灰の上に水をかけ、熱を完全に奪い取る。
直火OKのキャンプ場でも環境に与えるインパクトを最小に抑えるために、以前誰かが火をたいた場所(ファイアスポット)で焚き火をしたい。かまどの石はその目印にもなる。
薪は最後まで完全燃焼させたら、穴を掘って灰を入れ、水をかけてから土をかぶせる。
かまどの石を上に積み上げ、終了。こうしておくと、 ここがファイアスポットだとわかる。
最後まできれいに、美しく跡ををのこさずに。
大切な人と一緒に、とっておきの想い出を作ってください!
※キャンプ場などで行なう際は、必ず直火可能かどうかを確認してください。各キャンプ場のルールを守りましょう。