普段楽しむ焚き火について、どのくらい知っているだろうか。針葉樹と広葉樹の違いはわかっても、薪はどのくらい乾燥させるのが適切か、などは知らない人も多いはず。森林科学を研究する専門家が監修した、薪に関する豆知識を問題に。10問中何点採れるかな!?
監修された方
安江 恒先生
低質材の普及が森の環境改善にもつながる!
薪ストーブや暖炉、キャンプの焚き火に必要な燃料薪。その燃焼性や発熱量など、伝承や体験に基づく知識はあっても実際はどうなのか、科学的知見が少ないのが現状だ。
「薪や木質ペレットなどの燃料材は、カーボンニュートラルであり、地球に優しい。薪ストーブが普及するためには、燃料材の性質や性能などの情報がより適切なものでなければなりません」
とは、森林科学を研究する信州大学准教授の安江 恒先生。薪ストーブユーザーでもある先生は研究の一環で薪についても研究。薪のユーザーに向けた講演なども行なってきた。
「伐採丸太の半分近くを占める建築材料にならない低質材が薪として流通すれば、丸太の価格も上がって森林経営の安定や、荒れた森の環境改善にもつながります。そのためにも、薪についての正しい知識を身につけて、火のある暮らしを楽しんでください」
難易度 ★
Q1 同じ大きさの薪で燃えきるのが早いのはどっち?
a 針葉樹
b 広葉樹
答えは……
↓
↓
↓
A1
a 針葉樹
木材は細胞壁と空隙からできている。燃える部分の細胞壁の主成分は樹種によらず一定。比重の違いは空隙の間取りの違いで、一般的に針葉樹は広葉樹より体積あたりの細胞壁が少なく早く燃え尽きる。
難易度
★★
Q2 乾燥の速度が速いのはどっち?
a 針葉樹
b 広葉樹
答えは……
↓
↓
↓
A2
a 針葉樹
乾燥実験の結果、針葉樹(スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツ)は広葉樹(コナラ、クヌギ、サクラ、ハリエンジュ)より早く乾燥した。原因として、空気や水の通り道の透過性に違いがあるのではないかと考えられる。
難易度
★★
Q3 立木の用途で一般的に「薪」として売られる部分を3つ選びなさい
上のイラストの左から、
a 根曲部
b 一番玉
c 二番玉
d 小径木(14㎝以下)
e 梢端
答えは……
↓
↓
↓
A3
a 根曲部、 d 小径木、 e 梢端
建築製材用として使えない部分は、山に放置されたり製紙原料のチップとして利用。より付加価値の高い薪として使われるようになれば、森林経営の安定や荒れた森の環境改善にも役立つ。
難易度
★★
Q4 成長の速い樹木はどれ?
a クヌギ
b アカマツ
c スギ
答えは……
↓
↓
↓
A4
c スギ
スギは成長が速く、わが国で最も多く植えられている樹種。多量に発生するスギの間伐材(森林成長過程で密集する、立木を間引く過程で発生する木材)のうち、低質材の薪利用が求められる。
難易度
★★
Q5 推奨される薪の乾燥期間は?
針葉樹=約○か月
広葉樹=約○か月
答えは……
↓
↓
↓
A5
針葉樹=約3か月 広葉樹=約12か月
直径約20~30㎝の丸太を6分割し、春から乾燥させた場合の含水率の変化を検証。気乾状態(含水率20%)に達するまでの期間は、針葉樹は樹種に関係なく2~3か月間程度。広葉樹は6か月経っても気乾状態に達しなかった(広葉樹も8分割以下に割ると春~秋の6か月間で気乾状態になった)。
難易度
★★
Q6 伐採直後の生材を燃やしても暖かい?
a 乾燥させた薪より暖かい
b 乾燥させた薪と同じぐらい暖かい
c 暖かくない
答えは……
↓
↓
↓
A6
c 暖かくない
伐採の直後の木材には、燃える部分に対して、約50〜200%の水が含まれている。乾燥させずにそのまま生木を燃やすと、水の蒸発のために熱が奪われてしまい、なかなか暖かくならない。
難易度
★★Q7 薪ストーブに針葉樹は向かない?
a ススが多く煙突が詰まるから向かない
b 高温になってストーブが傷んでしまうから向かない
c 針葉樹でも問題ない
答えは……
↓
↓
↓
A7
c 針葉樹でも問題ない
薪ストーブや暖炉の煙突などにつくススは、一般的に低温での燃焼によって発生する。薪が湿っていたり、燃焼空気が十分でないと温度が上がらず、ススが発生し続ける。薪をしっかりと乾燥させて、空気を調節すれば、針葉樹でも問題なく使える。
難易度
★★★
Q8 薪にする樹木の伐採適期はいつ?
a 晩秋~冬
b 冬~春
c 夏
d どの時季に伐採しても良い
答えは……
↓
↓
↓
A8
d どの時季に伐採しても良い
毎月幹の含水率を調査すると、針葉樹も広葉樹も含水率に大きな季節変化はなかった。つまりどの時期に伐採しても良いと言える(ただしハチなど虫災害リスクが減るなどで冬伐採も多い)。
難易度
★★★
Q9 含水率が20%以下でないと薪として使えない?
a Yes
b No
答えは……
↓
↓
↓
A9
b No
木材は屋外でしっかり乾燥させた場合、20%程度まで含水率が下がる。含水率の異なる薪を燃焼させて薪ストーブからの発熱量を測定したところ、乾燥の甘い薪(含水率28%、46%)でも20%以下の乾燥材と同じ程度の発熱量が得られた。ただし、ススの発生量は増えると考えられる。
難易度
★★★
Q10 同じ重量の薪で、発熱量が大きいのは?
a 針葉樹より広葉樹のほうが発熱量が大きい
b 広葉樹より針葉樹のほうが発熱量が大きい
c 樹種に関係ない
答えは……
↓
↓
↓
A10
c 樹種に関係ない
重量当たりの発熱量は樹種にかかわらず一定なので、同じ重量ならスギもコナラも同じ発熱量。ただし一般に比重は広葉樹のほうが高いので、体積あたりの発熱量は広葉樹のほうが大きい。
※構成/松浦裕子 イラスト/近常奈央
(BE-PAL 2022年12月号より)