変化する車中泊スポット探し
少し前まで、車中泊スポット探しはユーザーのクチコミが頼りでした。トイレがあり、静かで、夜間駐車していても問題がなさそうなところ……いわばユーザーの“経験値”がインターネット上に蓄積されてきました。
その後「有料でもいいから安心できる場所に泊まりたい」というニーズの高まりを受け、RVパークや各種パークが整備。いまもなお数を増やしています。
さらに「タイムズのB」「Carstay」といった駐車場シェアリングサービスにも車中泊スポットの登録が増え、実用可能なレベルまで育ってきているように感じられます。
今回は、車中泊スポットをインターネット予約できる「RVパークsmart」「タイムズのB」「Carstay」を徹底比較してみました。
RVパークの進化形「RVパークsmart」
RVパークをベースとして、無人で予約・支払い・利用ができるよう整備されたのが「RVパークsmart」。九州を中心に、全国で55カ所(2022年12月現在)にあります。
利用にはインターネットが必須です。駐車場シェアシステム「軒先パーキング」を活用しているため、同サービスで無料会員登録を行い、車両情報(車種やナンバー)を入力します。
※「軒先パーキング」全体では「駐車場に駐車した車両内での就寝、飲酒を行わないこと」という規約がありますが、「RVパークsmart」は一部条項から除外されている形です。
支払いはクレジットカード払い、スマートフォンによる携帯キャリア決済、Apple Pay、PayPayにて事前に済ませます。
予約が済むと仮想のチケットとQRコードがスマートフォン上で発行されるので、現地のQR読取機に読み取らせる(チェックインする)ことで、電気が供給されるシステムです。
これまでもRVパークなどで無人チェックインを採用している施設はあり、たとえば「予約した人にだけ、電源ボックスやゴミ箱を解錠する暗証番号をメールで知らせる」といったものがありました。
しかし、これは私が実際に体験した例ですが、チェックイン当日になってもメールが届かず、現地から慌てて問い合わせたことがあります。このときは無事に連絡がつき、事なきを得たのですが、母体となる施設の営業時間が終了してからでは大変でした。
しかし「RVパークsmart」では予約からチケット発行までが自動化されており、全国どこでも基本的な使い方が統一されているという利点があります。
また、RVパークをベースとしているので、「電源がある」「トイレがある」「自サイト内であればテーブルやイスを出してよい」といった原則が共有されています。(トイレは施設内とは限らず、時間帯によって近隣の商店などの場合もあります)
QRコードをかざしても通電しないなど、万が一のときにはコールセンターが24時間対応してくれることも安心感があります。
RVパーク専用の車室が確保されているので、オーナーさんの都合によって利用可能日が流動するようなことも少なく、施設によっては当日夜まで予約が可能であるなど入出庫のルールが緩やかなのもよいです。
ただし一度予約が成立すると、利用日前日から100%のキャンセル料がかかります。これまではオーナーさんの裁量でキャンセル料を免除してもらっていたようなケースでも、しっかりキャンセル料がかかってくるのは自動化ゆえです。
総じて「全国で統一された設備を」「簡単なオンライン予約で」「直前でも気軽に利用できる」新しいタイプのRVパークと言えるでしょう。
タイムズが運営する「タイムズのB」
続いてはコインパーキングやレンタカーで知られるタイムズの駐車場シェアリングサービス「タイムズのB」。住宅・店舗などの空きスペース、月極駐車場の空き区画、一時的な遊休地などを予約制駐車場として利活用するシステムです。
通常のタイムズ(時間貸駐車場)との違いは、「事前予約できること」「1日単位の料金設定であること」「時間内ならば自由にクルマの出し入れができること」など。
登録されている多数の駐車場のうち、公式サイト上で「キャンピングカーをとめる」カテゴリーに出てくる駐車場が車中泊に対応しています。
2022年12月現在の登録は16か所。決して多くはありませんが、「え、こんなところに!」という穴場がありますよ。
利用にはタイムズクラブへの無料会員登録が必要です。予約と支払いを事前に済ませるのは他サービスと同じです。
注意点としては、RVパークとは異なり「必ずしもトイレや電源などの車中泊設備があるわけではないこと」「駐車場としての性質が強い場合があること」が挙げられます。
たとえば「箱根湯本キャンピングカー専用駐車場」は、トイレも水道設備もない本当の意味での「駐車場」です。少し殺風景に感じられるかもしれませんね。
車外で景色を楽しみながら食事をしよう、などと想像すると期待に添えない可能性があります。そのぶん料金は格安で、1泊1000円以下のところも。
「キャンピングカーをとめる」というカテゴリーにはなっていますが、キャンピングカーではない普通車でも利用できる場合があります。
※本当に「キャンピングカー専用」のこともあります。いろいろな理由が想像されますが、普通車での車中泊は暑さ・寒さへの備えが十分でなくアイドリング駐車につながりやすかったり、逆にアイドリング駐車を禁止した結果、健康被害が懸念されるなどリスクがあることも一因と思われます。
なお「タイムズのB」全体には数えきれないほどの駐車場が登録されており、「宿泊利用○」というカテゴリーもあります。ちょっと紛らわしいのですが、これは車中泊を指すのではなく、「24時をまたいでクルマを駐車することができる」という意味です。
そういった駐車場では、車中泊はできないのでしょうか?
実は「タイムズのB」全体としては、車中泊について統一した可否を定めておらず、各駐車場のオーナーの意向に従って欲しいそうです。
現実的には使いたい駐車場があったら、その都度、問い合わせることになりそうです。可能な場合でも近隣住民への配慮、アイドリングストップ、喫煙や話し声などに十分に注意して利用して欲しいとのことでした。
バンライフの普及を推進する「Carstay」
キャンピングカーのレンタルやカーシェア、車中泊スポット&キャンプ場のスペースシェアサービスとして、ぐんぐん知名度を上げている「Carstay」。
キャンプ場や湯YOUパークなど他サービスとの重複もありますが、全国で300か所以上の車中泊スポットが登録されているなど急成長しています。日本初の高速道路上の車中泊地として話題になった「RVステーション鈴鹿PA」も同システムを利用。
入浴施設やショッピングセンターの駐車場から、個人が所有する遊休地まで立地のバリエーションは豊かです。長期利用を前提としたシェアハウス併設のスポットなどは、家をもたず旅をしている本格的なバンライファーにも人気だそう。
施設のバリエーションが豊富なぶん、オーナーさんの都合で細かく利用不可日があったり、メッセージの交換をしながら詳細を詰めるようなところもあり、統一された利用手順はありません。
前述の「RVパークsmart」や「タイムズのB」ではサイト上で機械的に手続きが進むのに対し、よりコミュニケーションが必要となる印象です。(大規模な入浴施設など、ビジネスライクな施設ももちろんありましたが)
サイトやアプリにも、直接オーナーさんと連絡をとるチャット機能が装備されていることから、“オーナーとユーザーをつなぐサービス”といった色合いが強いかもしれません。
トイレの有無など、設備はさまざま。車中泊スポットとしてしっかり整備されているところもあれば、駐車場の要素が強いところもありそうです。料金も幅広いですが、1泊500円程度など格安なところもたくさんあります。
それぞれのサービスのメリット・デメリット
では、実際にクルマ旅をするなら、どのサービスがおすすめでしょうか?いちユーザーである私の印象ですが、それぞれのサービスの特徴をまとめてみます。
「RVパークsmart」の特徴
- 登録数は全国で55か所(RVパーク全体では300か所以上)
- 電源やトイレなど車中泊向けに整備された施設
- 予約からチェックアウトまで決まった流れがあり手続きが簡単
- 非接触・非対面で利用できる
- 利用料金は比較的高め
RVパークsmart:https://rvparksmart.jp/
「タイムズのB」の特徴
- 登録数は全国で16か所(それ以外でも車中泊できる場合あり)
- 予約からチェックアウトまで決まった流れがあり手続きが簡単
- 非接触・非対面で利用できる
- 設備はさまざまで、敷地内にトイレがないことも
- 利用料金は安め
タイムズのB(キャンピングカーをとめる):https://btimes.jp/feature/campingcar/
「Carstay」の特徴
- 登録数は全国で300か所以上
- 長期滞在者向けなどユニークなスポット多数
- 設備はさまざまで、敷地内にトイレがないことも
- 利用手順も千差万別で、オーナーさんと複数回のやりとりが必要となるケースも
- 利用料金は安め
Carstay:https://carstay.jp/
クルマ旅でもっとも大事なことは、目的地の近辺やルート上にちょうどよい車中泊スポットがあるかということ。選択肢はひとつでも多いほうがよいです。そのため「3つすべて使うべし!」というのが私の結論です。
たとえば私は目的の方向が決まったら「くるま旅クラブ(RVパークや湯YOUパーク)」「Carstay」「タイムズのB」……と順番に見ていくことが多いです。
これまではRVパークや湯YOUパークへの電話一択だったのですが、インターネットでの直前予約が可能なことから「Carstay」や「タイムズのB」をチョイスすることがだいぶ増えました。
いずれも初回は会員登録などの手間がありますが、一度登録してしまえば次回からは簡単に予約できます。賢く活用したいですね。