南カリフォルニアとは行政上の区分ではなく、一般的に北はロサンゼルスから南はサンディエゴくらいまでを指す地域です。西側は太平洋に面し、東側はサンタロサ山脈が聳えています。地中海性気候に属すると言われ、1年を通して気候温暖で降雨量も少なく、いつでもトレイルランやマウンテンバイクを楽しむことができます。
フィールドとなるトレイルにも事欠きません。自然保護のため、広大な土地を計画的にそのまま保存(Preserve)してあるからです。別の言い方をすれば、そうした場所はトレイル以外には何もありません。
トレイルヘッドと呼ばれる出入口にはトイレだけがあり、そしてトレイルには歩行者、自転車、そして馬しか入ることができません。売店はおろか自動販売機もありませんので、長距離を走るときは水や食べ物を入れたバックパックを担ぐことになります。
遥か彼方にまで広がる視界、しかし強い日差しから隠れる場所はない
海と山の両方を眺めることができるトレイルが多いことも魅力のひとつです。ただ、南カリフォルニアのトレイルは日本のそれとは様子が多少異なります。一言で言えば、日陰がほとんどないのです。
半分砂漠のような荒野のなかをアップダウンが激しい砂利道が続いているといったトレイルがほとんどです。木がまったくないというわけではありませんが、トレイルランやマウンテンバイクにでかけたときは最初から最後まで陽光を浴び続ける覚悟が必要になります。
それは視界を遮るものが少なく、遙か遠方まで見渡すことができるという側面にもなります。走りながら息を呑むような絶景にあたることも少なくありません。
しかし、日焼け対策は必要になります。日差しも強烈ですので、少なくとも筆者はトレイルに出かけるときは帽子とサングラスが必携です。以前は腕や脚に日焼け止めスプレーをかけてから走っていましたが、面倒になってやめてしまいました。おかげで一年中、衣服で隠れている部分と露出して日焼けした部分を分ける線が消えることがありません。
念のため、これは南カリフォルニアの特殊事情です。カリフォルニアでも北部に行けば、日本のような木と緑に覆われたトレイルを楽しむことができます。日陰ももちろんあります。
レースのエイドは最低限、だけど安心
南カリフォルニアでは、ほとんどのトレイルは誰でも自由に出入りできますが、なかには年に数回の公開日や許可をえたレース団体しか入れないトレイルもあります。トレイルランやトライアスロンのシリーズを開催している地元の団体もいくつかあり、そうしたレースに参加すると、コースを知らなくても安心です。
エイドステーションは水やスポーツドリンクの他にバナナなどの軽食が置いてあります。特に珍しいものが置いてあるわけではありませんが、レース中の水分と栄養を補給するには十分です。ゴミを最小限にするために紙コップを使わず、ランナーが携行しているボトルに補給する形式をとるレースもよくあります。
エイドステーションのボランティアは緊急時の救助活動にも従事します。私自身は幸いお世話になったことはありませんが、知人があるレース途中で倒れたときにボランティアの人にゴール付近まで車で運ばれ、救急車を呼んでもらったことがありました。
南カリフォルニアのトレイルは春がおすすめ
南カリフォルニアでは1年中トレイルを楽しめると上に書きましたが、もしベストの時期を選べるなら、私は2月から4月の春をおすすめします。
夏はまず暑すぎます。日中の最高気温が40度を越えることも珍しくありませんので、快適に走ることができるのは早朝の数時間だけになります。
冬は逆に走るには寒すぎると感じるかもしれません。海に近いせいか、朝晩の気温は意外に低いのです。夏とは逆に、快適に走れるのは正午を挟んだ数時間だけになります。
冬の間はわずかながらも雨も降ります。そのおかげで、春が近くなると普段は枯草ばかりの地面が一面の緑になり、野生の花が一斉に咲くのです。雨が降ると空気が澄み、夏の間はスモッグで見えない遠くの山の稜線や水平線がこの季節にははっきり見えてきます。
年によって多少異なりますが、その絶好の時期が2月から4月くらいの数か月なのです。アウトドアを愛する人にぜひこの季節の南カリフォルニアを訪れて頂きたいと思います。
米国在住ライター
角谷剛
日本生まれ米国在住。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。
世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員