常識と思われている事柄を深堀りできる書籍、好奇心をかきたてる、豊かな気持ちになれる書籍など…3冊を厳選してお届け。
BOOK 01
ダーウィンとファーブルも明らかにしたかった「問い」
『「死んだふり」で生きのびる生き物たちの奇妙な戦略』
宮竹貴久著
岩波書店
¥1,430
クマに遭ったら死んだふり。そんな回避術が信じられていたのはひと昔だが、「ロミオとジュリエット」しかり、綿々と使われてきた生きのびる戦略でもある。ヒトだけでなく、ブタ、ニワトリ、カエル、サメ……ミジンコも擬死するという。昆虫では30目中10目で死んだふりが確認されている。「本当に生きのびるうえで役に立っているのか?」著者はその問いに挑んだ。
コクヌストモドキ、アズキゾウムシの「長く死んだふりをするもの」と、「死んだふりをしないもの」を育種。捕食実験の結果、死んだふりが捕食者回避に役立っていたことを示す研究成果を得て世界で初めて発表した。さらに寿命、羽化率など長く死んだふりをするほうが有利であることも。しかし、本当に有利ならばそう進化するはずだが、実際は(野生は)そうなってはいない。さらなる研究で突き止めた死んだふりのデメリットとは─。著者の自宅で百均の自作キットから始まった死んだふり研究に、科学の面白さと夢を感じる。
BOOK 02
食べてみたい! 旅に出たくなるやわらかめ風土記
『むう風土記』
松鳥むう著
エイアンドエフ
¥1,980
離島や民俗行事を巡る旅をライフワークとするイラストエッセイストの著者が、「食」をテーマに綴る。本書では10地域の食、祭りや風習を紹介。終戦直後はモービル油が使われていた「沖縄の天ぷら」、五島列島に根ざした「鯨食文化」、庄内と関西の「あんかけ文化」。出会った人たちのそのままの言葉が書き表わされ、地域の暮らしぶりが温度とともに感じられる。旅ルポ形式だが、現地の図書館で調べる(その土地にしかない資料は多い)など、著者の好奇心は視座に富んでいる。
BOOK 03
普段の生活も軽く、真のミニマル化で幸せになろう
『超ミニマル主義』
四角大輔著
ダイヤモンド社
¥2,090
「最小」「軽量化」アウトドアではこんな言葉がよく使われる。それを普段の生活にもビジネスにも用いて最大限の力を発揮しようというのが本書。物質的に身軽になる方法から、精神面でのミニマル化、PCのデータ、1日の時間の使い方、スケジューリングまで具体的な72のメソッドが並ぶ。著者はかつて多忙を極めた会社員だが、巧みな計画で取得した休暇は登山や釣りでリフレッシュ、社内貢献度も高かった。実体験を元にした方法論が忙しすぎるアナタにひと筋の光を差す。
※構成/須藤ナオミ
(BE-PAL 2022年12月号より)