いつまでも豊かな自然の中で楽しく遊ぶために、選ぶべきクルマは? アウトドアに出かけているからこそ知りうる自然環境の変化。そんなことを意識しつつ、持続可能なクルマ選びを伝えてきた本誌の歴史をひもとこう。
アウトドアを愛するからこそクルマの可能性を探り続けてきた
脱炭素、地球温暖化抑制などの意識が希薄だった’90年代初頭。本誌は、創刊10周年記念の目玉企画として、ソーラーカーの世界大会「ワールド・ソーラー・チャレンジ」の出場を目指した。鉱物燃料を一切使わず、太陽光発電だけで3,000㎞を走破できるのか? そんな本誌のチャレンジをけん引したチームリーダー高橋団吉さんに、挑戦の秘話を伺った。
「当時は、なるべく無駄な燃料や資源を使わない活動=エコロジーと、ビジネスを組み合わせたエコビジネスが脚光を浴び始めた時代です。自分たちの手でなにかを作り経験して、なにがほんとうにエコなのかを伝えることこそが、創刊10周年記念企画として相応しいのでは? と提案しました。それが、ワールド・ソーラー・チャレンジ出場でした。自分たちの手でゼロからマシンを開発、実践し、そこで見えたものを当事者の立場から伝える。それこそがジャーナリズムじゃないかって」
高橋さんを中心としたチームビーパルは、自転車のフレームに使われる技術をベースに、手作りのソーラーカーを完成。大手自動車メーカーなどが参戦するソーラーカーレースに果敢に挑戦。最後は目標だったワールド・ソーラー・チャレンジで、見事10位でゴールに入った。
「当時のソーラーパネルの技術や価格を考えると、約30年で、ここまで太陽光発電が普及するとは夢にも思いませんでした。太陽光に限らず、風力でも水力でも、エネルギーは、けっこう簡単に手作りできることをこの挑戦で学びました。皆が、もっと楽しんで電気を手作りすれば未来は変わりますよ」
’91年に開催された「東京モーターショー」では、代替エネルギー車、EVなどのコンセプトカーが、華々しく展示された。エコカーという考え方が生まれたばかりの時代に、本誌ではソーラーカーを作り、そこで得た知識とスピリットをもとに、これまで世界の最新技術や取り組みを紹介してきた。楽しくアウトドアに繰り出す遊びグルマのなかでも、環境に配慮したエコなクルマに注目し続けた、約30年の歴史を振り返ってみた。
ビーパル号の軌跡
94年1月号
「ビーパル号Ⅲ世界第10位のキセキ!」
平均速度62㎞/h。5日半で灼熱のオーストラリア大陸3,013㎞を完走し、見事10位に入賞した軌跡をレポート。ホンダ、トヨタ、日産などの大企業が挑戦した大会に低予算の手作りマシンで挑んだ。
91年7月号
「手づくりソーラー・カー"ビーパル号"計画始動!!」
創刊10周年記念連載としてスタートした「ゼロtoダーウィン・プロジェクト」。太陽エネルギーの可能性を求め、ソーラーカー作りが本格スタートした。
91年12月号
「スイスの電気&ソーラー・レンタカー」
スイスで運用を開始したEVレンタカーの人気っぷりを紹介。ツェルマットの市街地が、当時からEV専用だったことも伝えている。
93年7月号
「国産最高性能実用電気自動車レポート」
まだ実証実験中だったEVにいち早く試乗し、音の静かさや振動の少なさ、改善すべき問題点などをレポート。実用化に夢を膨らませた。
95年3月号
「90%リサイクル可能なフランス車」
再生しやすいポリプロピレンの使用や、プラスチック部品の95%に素材名を印し、リサイクル性を向上させたルノーの取り組みを紹介。
98年7月号
「エコ・レンタカー発進!」
神戸でスタートした、RAV4のEVやプリウスなどのエコカーだけを配備した、日本初のエコレンタカー会社を取り上げた。
02年10月号
「超低排出ガス車(U-LEV)全46台ぜーんぶみせます!」
国産ミニバン初のHV、エスティマ・ハイブリッドが登場した時代。燃費性能だけではなく、税制的にもお得になった低排ガス車にも注目。
04年9月号
「燃料電池車の最新事情」
世界初の一般向けの燃料電池車「MIRAI」が発売される10年前に、実用化にどこまで迫っているかを調査。併せて、燃料電池車のメリットをわかりやすく紹介した。
07年2月号
「環境の未来を灯すバイオ燃料」
植物由来のバイオ燃料を使うことで、二酸化炭素排出量を増やさない。そんなテーマで、世界のバイオ燃料事情や最新の対応車種、問題点などを含めて幅広くレポート。
10年9月号
「世界のEV最前線リポート」
テスラが初の量販車「ロードスター」を発表。日本でも日産がリーフの一般発売を開始し、EV時代が幕開けした。成長著しい中国のEV企業BYDにも注目している。
※構成/山本修二
(BE-PAL 2023年1月号より)