古いクルマを廃棄することなく再活用することだって「エコ」なはず。そこで自分好みの中古車を見つけ出し、動力となる燃料や外装に工夫を凝らしたこだわり派のオーナーさんを紹介しよう。
BIOFUEL
#1 バイオ燃料
燃料費 0円
使用済み食用油で約30万㎞を走破!?
バイオディーゼルのランクルは最強のエコカー
山田周生さん(65歳)

バイクでサハラ砂漠を走ったことがきっかけで、ダカールラリーをはじめ、さまざまな冒険イベントを取材するフォトジャーナリストに。現在は釜石で循環型の地域づくりに尽力。一般社団法人ユナイテッドグリーン代表。
BDFは排気がクリーンかつカーボンニュートラル
山田さんはフォトジャーナリストとして約30年にわたってダカールラリーやアドベンチャーレースといった大自然の中で行なわれる競技を取材してきた。そうした長年の取材活動で実感したのが急速に悪化してゆく地球環境だった。現状に強い危機感を覚えた山田さんは「持続可能な暮らし」を模索するための活動も行なうように。早くから使用済み天ぷら油からでも精製可能なバイオディーゼル燃料(以下「BDF」)の有用性に着目し、小型燃料精製機を搭載したバスコファイブ号での地球一周プロジェクトなどを敢行。自然と共生する暮らしの在り方ついて啓蒙してきた。
トヨタ/ランドクルーザー(バスコファイブ号)

自ら設計した小型BDF精製装置を搭載。金から緑へグラデーションする車体色は廃油をクリーンエネルギーへ変換する様をイメージしたもの。
岩手県の釜石でオフグリッド生活を実践

岩手県釜石市で山田さんが運営する「橋野ECOハウス」。古民家を廃材でDIYリノベーションし、自然再生エネルギーを最大限に活用した持続可能な暮らしを実践する。電力は太陽光・風力・バイオディーゼル発電で完全自給できるシステムを構築。刈り払い機やDIY用の電動工具、軽トラなどもすべて自家発電した電力を使う。米や野菜も生産する。
「ディーゼルエンジンというのは元々ピーナッツ油を燃料にした発動機として発明されました。だからバイオディーゼルカーといっても、エンジン自体は市販車に搭載されているものとまったく同じです。さらにBDFは軽油に比べ有害物質の含有量が少ないので、排気がクリーンかつカーボンニュートラルであることも特徴です」
BDFをエンジンで燃焼すると二酸化炭素が排出されるが、それは原料である植物が生長過程で取り込んだ空気中の二酸化炭素。地中に閉じ込められていた化石燃料を燃焼させるのとは異なり、地上の二酸化炭素の総量が増えることはない。
岩手県花巻で東日本大震災に遭遇した山田さんは大きな転機を迎える。ガソリンが入手できなくなった沿岸の被災地はクルマで立ち入れない状況にあったが、山田さんは比較的被害の少なかった内陸部の農家や商店などの協力を得て廃油を集め、バスコファイブ号でBDFを精製。支援物資を大量に詰め込んで被災地へ向かった。
食用油をバイオディーゼル燃料に精製できる

廃食用油からBDFを作る小型プラント。不純物を除去した廃食用油をアルカリ触媒で化学反応させ、グリセリンと軽油に近い性質をもつ脂肪酸メチルエステルに分離させて精製する。

精製機で使う電力は、ルーフ上の太陽光パネルから大容量ディープサイクルバッテリーに常時充電することで確保。

精製されたBDFはこのように給油。ディーゼルエンジンは市販状態のまま。28万㎞以上を走ってもノントラブルだとか。

山田さんが循環型地域を目指して取り組んでいるのが津波で被災した農地での菜の花栽培。景観を良くしつつ土壌の塩分を浄化する試みだ。菜種油は地元産直で販売し、災害時には燃料として活用することも。
「バスコファイブ号は燃料を自給できることに加え、4WDで走破性が高く、シベリアなどの広大な無人地帯をクリアするために無給油で3000㎞を走れるように作ってあったんです。だから、救援物資の運搬や情報収集といった支援活動を、震災4日後から行なうことができました。毎日500㎞以上を支援のために走りましたね」
この経験から山田さんは、自然災害などの緊急事態に遭遇してもダウンしないエネルギーシステムを構築することの重要性を痛感したという。そして現在は、岩手県釜石で自然と共生する循環型の暮らしの普及に取り組む。拠点の「橋野ECOハウス」では、地域に伝わる昔ながらの暮らしと先進的なテクノロジーを融合した自給自足生活が実践されている。
エネルギーを自給し、環境に優しく、災害時にも強い――バスコファイブ号は未来の暮らしの縮図。究極のエコロジーカーなのだ。
廃油だけで地球一周!さらに被災地でも活躍

2007年に廃食用油から作る燃料だけで地球一周するプロジェクトに挑戦。旅先で廃油を集めながら、シベリアの永久凍土や灼熱の砂漠地帯も含む4万7853㎞の距離を360日間で走破。BDFの有用性を広く証明した。

日本一周中に岩手県で東日本大震災に遭遇する。ガソリンや軽油が入手できなくなった沿岸部の被災地でも燃料を自給できるバスコファイブ号は、物資の運搬や情報収集などで大いに活躍した。
※構成/佐藤旅宇 撮影/松井 進 写真提供/山田周生