1989年の初登場以来、冬の大人気アイテムとしてすっかりお馴染みとなったダウンセーターが、今季はさらにサステイナブルに進化したぞ! 全天候型アウトドアライターのホーボージュンが注目モデルをレビュー!
海洋プラスチック汚染を削減する
NetPlus
漁網
パタゴニア/ダウン・セーター・フーディ
大人気のダウン・セーター・フーディを再デザイン。シェル素材に漁網からリサイクルされたネットプラスナイロンを採用し、中わたには強制給餌や生きたままの羽毛採取をしていないRDS認証済みの高品質800FPダウンを使用。より良い動物福祉を実践している。
¥41,800
問い合わせ先:パタゴニア日本支社カスタマーサービス 0800-8887-447
SPEC
●サイズ=XXS~XL
●カラー=ウェービーブルーなど5色
●重量=420g
ことしの9月、アウトドア業界に衝撃的なニュースがもたらされた。パタゴニアの創業者であり社主であるイヴォン・シュイナード氏が同社の所有権を完全に手放し、自身と家族が所有する株式のすべてを環境団体などに譲渡すると発表したのだ。その額はなんと30億ドル(約4300億円)に相当する。
シュイナード氏は「自然から価値あるものを収奪して投資家の富に変えるのではなく、今後パタゴニアが生み出す富はすべての富の源である地球を守るために使用される」と宣言。以前から氏の環境保護に対する真摯な姿勢はずば抜けていたが最後まで“ガチ”だった。
そんな姿勢を象徴するのがこのダウン・セーターだ。もうお馴染みの大ヒット製品だが、今年はシェルに漁網からリサイクルされた「ネットプラス」ナイロンを100%使用。深刻化する海洋プラスチック問題に実践的なソリューションを示した。
個人的に僕がスゴイと思うのはこの環境素材をカジュアルアイテムではなく、本作のような高所登山にも使われるトップモデルに採用したことだ。単にエコなだけではなく、つねに最高レベルの機能を併せ持つあたりは、トップクライマーであったシュイナード氏のデザイン哲学そのものだと思う。
ここがスゴい!
廃棄された漁網を原料として再利用
再利用によりこれまで884トン以上の有害海洋プラスチックの流出を防いだ。’22年秋冬シーズンは344トンの漁網が同社製品に生まれ変わっている。
リユースを勧めるお下がりタグ付き
リペアして着続けられるように製品に修理パッチが付属するほか、もし不要になったら人に譲って着続けてもらえるように「お下がりタグ」が付いている。
ポケットに圧縮しコンパクトに携行
圧縮回復力の高い高品質ダウンを使用しているので、内ポケットにたくし込むと非常にコンパクトになる。カラビナループも付属する。
石油代替で炭素排出量を大幅削減
SugarDown
サトウキビ
パタゴニア/シュガーダウン・フーディ
パタゴニア初となる完全バイオベース素材を使用したダウン。シェルはサトウキビから抽出されたバイオ原料ベースのポリエステルで、その他のパーツはヒマシ油や植物ベースのナイロン製。羽毛はRDS認証済みの800FPダウンを使用。天然素材のジャケットである。
¥45,100
問い合わせ先:パタゴニア 日本支社カスタマーサービス 0800-8887-447
SPEC
●サイズ=XS~XL
●カラー=フォージグレイなど2色
●重量=329g
それだけではない。今年のダウン・セーターにはもうひとつ画期的な試みが行なわれた。それがサトウキビを原料とするバイオ・ポリエステルをシェルに採用した「シュガーダウン」である。
ごく簡単にいうとこれはサトウキビからオイルを抽出し、これを精製してパラキシレンという原料を作り、石油由来原料の代わりにパラキシレンを使ってポリエステルを作る方法。
原材料となるサトウキビは育成段階で二酸化炭素を吸収するため、ライフサイクル全体では石油原料のバージン素材に比べて二酸化炭素排出量を70%も削減することができるという。
さらにジッパーやその他のパーツはヒマシ油やその他の植物ベースのナイロンを採用。これによりシュガーダウン・フーディはパタゴニア初の「完全バイオベース素材の保温ジャケット」となった。同社のひとつの金字塔といっても過言ではない。
もちろん羽毛はRDS認定を受けたレスポンシブルダウンを100%使用。生産を担当するベトナムの工場従業員には、プレミアム賃金が支払われるフェアトレード・サーティファイドの縫製を採用している。
今年の冬は体も心も温かくなる、こんなサステイナブルなダウンを着て過ごしたい。
ここがスゴい!
サトウキビ油脂からポリエステルを製造
サトウキビの油脂はバイオ燃料の分野でも注目されている。育成時にCO2を吸収してくれるので石油依存からの脱却と二酸化炭素削減の両面で効果がある。
バイオファブリックであることを示すタグ
タグにはこれまでの石油由来やリサイクルポリエステルではなく、純粋なバイオファブリックであることが記されている。今後もますます増えるだろう。
立体的デザインのフードを備える
フィッティングの調整機構は備えていないが、立体的なカッティングにより頭部にフィットする。視界も広いので、荒天や降雪時にも安心して行動できる。
※撮影/中村文隆
(BE-PAL 2023年1月号より)