「キャンプという非日常体験と、過去へのタイムトラベルが混ざりあったような、まったく新しい体験ができました」
今回の取材キャンプを終え、感想を聞かれた私はそう答えました。
訪れたのは、廃校を改修してつくられたキャンプ場「CAMPiece君津」。
誰もが一度は憧れた夜の学校で、火を焚き、お酒を飲み、ノスタルジーに浸りながら過ごすキャンプ。CAMPiece君津は、そんな、これまで味わったことのない特別な一夜を過ごすことできる、眩しいほど個性輝くキャンプ場でした。
この記事では、先日公開したキャンプ場へのインタビューを実施したあと、著者が実際にその場所でキャンプをした様子をレポートします。
廃校の魅力が光るキャンプ場
東京からアクアラインを使い、車で約1時間。千葉県君津市にある亀山湖のほど近く、木々の生い茂る高台の上に「CAMPiece君津」はあります。
廃校を利用してできたこのキャンプ場は、大きく分けると「校庭」と「校舎」の2つのエリアで構成されています。
特に、校舎内には様々な施設が集約。
先日公開したインタビュー記事でもお伝えしたように、校舎内の体育館や音楽室、図書室、卓球台など多くの施設の入室・利用が自由に行えます。
キャンプ当日は、キャンプ場の代表(校長)の榎本さんに、その校舎内を案内してもらいました。
魅力が絶えない「手つかずの校舎」
校舎内に入って、まず目につくのが驚くほど立派な木造りの内装。
壁一面の窓からの、惜しみない陽の光に照らされた室内は、木材の色合いも手伝ってひときわ暖かな空間が広がっていました。
さすが、オープンしたばかりのキャンプ場という感じです。校舎内もきれいにリフォームされているなと感心していたところ、校長の榎本さんから驚きのひと言が。
「オープンにあたって校舎内装の工事はいっさい行ってません」
手を加えていない廃校がこんなにも綺麗なことにも驚きましたが、そこにはもう1つ大きな意味がありました。
それは、この校舎には「学校を模した施設」や「廃校を綺麗に改装してしまった施設」には出せない「本物の学校のリアリティー」が残されているという点です。
当初私は「校舎内の施設(体育館、音楽室、図書室などの各種教室)は子供を退屈させないために用意されているもの」だと思っていました。
もちろん、そのような側面もあると思います。
ですが、取材を通して実感したのは「子どもより、むしろ大の大人を興奮させる場所」だということでした。
例えば、理科室。
ここは体育館や音楽室とは違い、中に入っても「見て回る」ぐらいしか、することがありません。
ですので正直なところ、実際に案内してもらう前は「見なくてもいいんじゃないだろうか」と高を括っていました。
ところが、実際に訪れてみて実感したのは「見て回るだけでびっくりするほど楽しい」ということでした。
学生時代は多くの人が経験しているもの。学校という舞台に懐かしさを感じない人はいないはずです。
そのため、この手つかずの校内は、自然と「どんな大人でも心動かされてしまう」ほどの優秀なアトラクションとして成立していました。
しかも、それらの光景は学校から縁遠くなってしまった私たち大人にこそ新鮮に感じられるもの。そのため、手つかずの校内は子供よりも大人の方が魅力を感じるものになっているのです。
しかし、これらの魅力はまだ序の口にすぎません。なぜなら、廃校キャンプ場の真骨頂は夜にこそあったからです。
焚き火、お酒、星空を、誰もが憧れた夜の学校で
日も落ちかけた17時ごろ。
場内の見学とインタビューを終えた私は、いちキャンプ客として校庭に張ったテントで薪の準備をしていました。
すると、校庭中に懐かしい音が響き渡りました。その音色は毎日学校で聞いていた、あの「下校チャイムの音」。
今日何度目かわからない、ノスタルジックな気持ちがまた滲んできます。ですがこの時は、そこに少し寂しさのようなものも混じっている気がしました。
下校のチャイムは友達との「さよなら」を告げる音でもあります。そのときの感情も一緒に思い起こされてしまったのかもしれません。
だけど今日は、チャイムを聞いたあとも帰らなくていい。そう思うと、放課後の時間が延長されたような特別感、まるで友達の家でお泊り会をするときのような、そんな胸踊る高揚感がありました。
いつも以上に待ちきれない気持ちで、薪を組み、火を焚き、肉を焼く。そしてビールを片手に乾杯。最高の夜が幕を開けました。
「なんで自分は夜の学校で酒を飲んでいるのだろう」
そんないぶかしさを俯瞰して面白がり、それを肴にまた酒をひと口。そうやって、いつものキャンプとはちょっと違う、贅沢な時間が流れていきます。
夜の校舎を探検
ふと、トイレに行きたくなり校舎の中へ。すると夜の校舎は、昼間とはまったく違う雰囲気に染まっていました。
中でも印象的だったのが夜の教室。
お酒の酔いも手伝ってか、なんとも表現できない気持ちが滲んできます。椅子に座り、10分ぐらい、ただボーっと黒板を眺めていました。
センチメンタルな気持ちをテントに持ち帰るため、教室をあとに。また、その気分を肴に、焚き火に当たりながら飲み直します。空を見上げると星が綺麗でした。
こうして格別な夜が過ぎていきました。
CAMPiece君津には、ここにしかない体験がある
朝の学校の淡い色の景色。自然と思い出すのは、朝練、寒稽古、0時限目の課外授業など、緊張感を伴うものばかり。
ですが、今日は「稽古」も「課外」も「厳しい先生」も不在です。
そのギャップに何か得をしたような気分、まるで、朝、憂鬱な気分で目覚めた月曜日が、実は祝日だったときの、降って湧いたような解放感。そのおかげなのか、よりリラックスした気持ちで爽やかな朝を堪能できました。
廃校を利用したキャンプ場「CAMPiece君津」。
朝、昼、夜と表情を変える学校の景色の中で、そこに紐付けられた思い出を巡るような体験ができました。
キャンプをする中で体験する、焚き火も、酒も、星空も、朝の肌寒さと陽の光も、思い出にひたるのにはぴったりで、まるでそのために用意されているかのようでした。
廃校とキャンプ、その2つが交わる場所でしかできない不思議で貴重な体験ができる、そんな素敵なキャンプ場でした。
CAMPiece君津
〒292-0532
千葉県君津市坂畑223-1 旧亀山中学校・旧坂畑小学校
TEL:080-6270-3096
HP:https://campiece.com/area/kimitsu/
キャンプ場へのインタビュー記事はこちら