同僚から「釣りに行こうよ」とうれしいお誘いが
1年間の無職・海外放浪生活を経て、ようやくニュージーランドで仕事に着いたと思えばいきなり11連勤でゲッソリしかけていたところ、「釣りに行こうよ」とホームステイ先のジョックさんが声をかけてくれました。
私の職業は狩猟関係のお仕事なのですが、今のところお客さんは男性しかみたことがないし、10人弱いる従業員のうち、女性は私1人だけ。ほとんどみんな山の中の農場育ちの同僚だから、話すこととといえば、狩りか、釣りか、そうでなければ、女か酒か。
みんなちょっぴりガラが悪いところもあるけれど、いい人たちなんです。だだ、東京育ちの私には、正直ついていけない話題ばかりなので、一人黙々と手を動かしながら、みんなの会話に聞き耳を立てています。どうやら最近はマグロがよく釣れるシーズンらしく、ご近所さんでマグロの切り身と野菜を物々交換している様子。
「海釣りかあ。私も行きたいなあ」
ちょうどそう思っていたところ、ジョックさんが、とある秘密を打ち明けてくれました。ニュージーランドの南島の海の近く、ジャングルのまま開拓されていない農業用地に、自力で釣り小屋を建てたというのです。
秘密の釣り小屋に潜入
「秘密」というのは、建物としての建築許可が必要な床面積を超えているんだか、超えていないんだかギリギリのラインで勝手に建てたから。森の中にあって、もちろん道路からは見えないし、最近建てたばかりだからグーグルの衛生写真にも写っていないのです。
総工費およそ280万円。建てる間は寝る場所がないので、隣にキャンピングカーを置いて寝泊まりしたそう。
ベッドは2人用のベッドの上に1人用ベッドが載った2段ベッド。これが2台あるので最大6人がベッドで寝れる仕様。トイレは別にあって、用を足したあとにおがくずを被せるコンポスト式。シャワーはこれから建設するそうですが、南半球の1月は真夏。私は近くの川を泳いで済ませました。
「雑草がボーボーなのはまだ良いのだけど、このゴーストが厄介でね」
ジョックさんが指差すトゲトゲの植物が、通称「ゴースト」とよばれるもの。もともとニュージーランド固有の植物ではなく、イギリスから入植してきた農民が、土地の境界線を示すバリケードとして植えたもの。それが今やすっかり地域に根付いて、あちこちに生えているのです。
しかし、そんなゴーストをものともせず、どんどんジャングルに分け入って探検に繰り出すジョックさん。細い獣道のような跡を辿ってみるも、途中で消えてしまいました。
「きっとシカが通った跡だと思うんだ。あいつら、どんなに濃い森もすり抜けて行くんだ」
実際この日、道路でシカと遭遇すること2回。隙間なく緑に埋め尽くされた森の中から、いきなり飛び出してきたかと思うと、一瞬で姿が見えなくなってしまいました。
小さなボートで海釣りに初挑戦
ニュージーランドで魚釣りをするときの注意点は?
私は全くの釣り初心者で、カヤックフィッシングを1度体験した以外は、海の船釣りは今回が初体験です。この船で15km沖に出てビンチョウマグロを釣ることもあるそうですが、今回は海岸線の近くでのんびりと釣りをすることに。
ニュージーランドで釣りをするにあたり、気を付けなければいけないのがフィッシング・ライセンス。川や湖など淡水の釣りにはフィッシング・ライセンスを購入する決まりになっているそう。
一方、海釣りの場合はライセンスなしで釣りをすることができるものの、魚介類の種類に応じて持ち帰れる大きさや個数が違うため事前確認が必要です。
最初の1匹はなんと…
ベーコンを餌に釣竿を垂らすこと15分。ジョックさんの竿にさっそく当たりが。
この日はきっと大漁だ。一瞬、そう思ったのですが、釣りってなかなかうまくいかないものですね。
サメが釣れてしまいました。しかも3匹連続で。針を外す拍子に、背びれの棘(キョク)に腕を刺されてしまいました。よっぽどお腹がすいているのでしょうか、サメがほとんど入れ食い状態で、どんどん釣れてしまいます。
うーん、ここは場所が良くないんじゃないか。そう思い少し移動してトローリングをするも、今度はなかなか食いついてもらえません。
やっぱり餌を変えてみよう。船の操縦が忙しいジョックさんに代わり、釣り糸を巻き上げます。
クルクル、クルクル。トローリングってことは、かなり遠くまで釣り糸が出てるのかなあ。なかなか巻き終わらないなあ。
と、ここで、なんだか急に竿が重たくなった気がする。というか竿の先端がピョコピョコ引っ張られている。あ、当たりだ!!!
待望のヒット。釣れたのは?
釣れました!あきらめて餌を変えようとしたまさにそのとき、釣れてしまいました!!
しっかり食べ応えのある大きさ。このお魚は、「カウアイ」と呼ばれているそうです。
カウアイ?オーストラリアンサーモン?
結局、この日釣れたカウアイは2匹。
どうやらニュージーランドでは、魚を締めるときには頭をこん棒でたたくのが主流だそうで。ボコンと1発殴ったら、氷を詰めたクーラーボックスに入れて持ち帰ります。
「カウアイ」というのはニュージーランドではよく釣れるお魚で、釣れてもリリースもしくは餌として使うなど、いわゆる雑魚扱いされています。
だけどそれにしては案外身がぷっくりとしていて、美味しそう。やや目が小さいことと、体と鱗の形がサーモンに似ているせいか、別名「イースタン・オーストラリアン・サーモン」とも呼ばれているそう。
だけどカウアイは、サーモンとはまったく別のお魚で、スズキ目マルスズキ科に分類されるそう。このマルスズキ科というのは、オーストラリアやニュージーランド周辺にのみ生息する4種のお魚のこと。
シーバス釣りでもお馴染みの日本で釣れるスズキには主に3種類あって、タイリクスズキ、ヒラスズキ、そして一般的なスズキは通称マルスズキとも呼ばれているそう。しかし日本のマルスズキはあくまで通称でありスズキ目スズキ亜目スズキ科に分類されるため、分類学上のマルスズキとは異なるようです。
ちなみにカウアイが1日に食べる餌の量は体重の0.9~1.6%だそう。これは同様の大きさで分類的にも近しいオキスズキが5~6%とされていることに比べると、かなり少食であるといわれています。
参考URL
https://www.fishingworld.com.au/fish-facts/fish-facts-australian-salmon
刺身で食すカウアイの味は?
カウアイが食用として人気がないのは、独特の臭みがあるという悪評から。だけど、新鮮な状態でお刺身にしてみるとあまり臭みもなく、クセのない淡白で美味しいお刺身に仕上がりました。
海外でこんなにおいしいお刺身が食べれるなんて。釣り、最高です。