楽しむことが持続可能な森づくりの第一歩。広葉樹のクラフトを楽しんだり、森を散歩したり、堅苦しく考えずに里山の保全と関われる活動や施設を紹介しよう。
国産の生木を使って森づくり!グリーンウッドワークの楽しみ方
グリーンウッドワーカー 福畑慎吾さん
グリーンウッドワークとは、身近な森から伐ったばかりの生木を、ナイフや斧などの手道具を使って作る木工のこと。薪炭林が残る大阪府能勢町でカフェを営みながら、グリーンウッドワーカーとして活動をする福畑慎吾さんに話をうかがった。
「元々は農村で暮らす人たちが、生活道具を自給するためになされた技術のこと。言葉は欧米発祥ですが、昔は日本でも、お椀、杓子、お盆、竹籠などは生木から作るのが当たり前でした」
生木加工の利点は、材が柔らかく、電動工具に頼らず、手道具で作業ができること。
「皮付きの枝が、自分の力で使える道具に変わるということが、自信や喜びにつながります」
色やにおい、堅さなど、樹種で異なるので、木の個性を感じられるのも楽しい。講習会ではスプーンを作ることが多いが、
「何の木にするか、どれくらい削るかなど、迷うときりがない。簡単そうですが、スプーン作りに終わりはありません(笑)」
スプーンの加工に向くのはサクラやホオノキなど、雑木林の広葉樹。椅子作りには、クヌギ、コナラ、クリなど。適度な堅さのあるヒノキも利用しやすい。しかし、生木の入手は難しい。
「販売もされていますが、基本は地産地消。生木を手に入れるために、地域で森づくりをしている人とつながれば、間伐材にも価値が生まれ、新しい循環ができる。自分もそうでしたが、立木が材に見えはじめると、いろんな意味で世界が変わります。楽しんで生木を削っていたら、荒れていた森に手が入り、結果的に日本の森が元気になっていた。そんなカタチが理想ですね」
さまざまなナイフワーク
削り馬&ドローナイフ
削り馬は材料を載せて固定する木製の道具。ドローナイフは長い棒などを削るときに使う。
カービングナイフ
斧などで粗く成形した材を細かく削り、形を整えるときに使う両刃のナイフ。小刀でもOK。
フックナイフ
スプーンのくぼんだ面を削るときに使う。材を台に固定せず、手に持って使えるので便利。
樹種で表情がこんなに違う!
樹種により表情はさまざま。ビギナーにオススメなのは削りやすいサクラ、ホオノキ、カエデ、リョウブなど。
グリーンウッドワーク基本の道具
スプーンバージョン
スプーン作りに必要な道具。左から、カービングナイフ、フックナイフ、カービング用斧、木槌、ノコギリ。少ない道具で楽しめるのが魅力だ。
cafe soto
●大阪府能勢町
問い合わせ先:https://cafesoto.wixsite.com/school
森づくりに参加できる施設&プログラムはこちら!
広葉樹を積極的に活用する下川町で森で遊び、学ぶ機会を提供!
森の生活
●北海道下川町
北海道北部に位置する下川町は、町の面積の9割が森林を占める森の町。1950年代から「伐っては植える」循環型の森林経営を実践している。森の生活では、森や地域の資源を活かした、「もりさんぽ」などの体験や、宿泊施設「ヨックル」での滞在型ツーリズム事業などを展開。有効活用されていなかった広葉樹の原木にも注目し、木工製品の開発にも取り組んでいる。
2月6日(月)の満月の日に「ムーンウォーク」を実施予定。1年を通じて定期的に「もりさんぽ」を開催している。
問い合わせ先:https://morinoseikatsu.org/
里山資源活用の情報を発信!森づくりプログラムも実施
八百材舎
●兵庫県丹波篠山市
里山資源活用の情報発信となるプラットフォームで、山林資源を地域内で循環する仕組みづくりを目ざしている。原木、枝丸太、薪など、資源を無駄なく提供するほか、木材の商品開発をしたり、間伐や搬出・保全整備などの山林体験プログラムも実施。現在、集落の山林から搬出された間伐材木を一時集積する「木の駅サテライト」を整備中。
間伐や搬出など、山林作業の体験プログラムや、木材の新しい活用提案や商品開発などにも取り組んでいる。
問い合わせ先:https://www.yaozaiya.com/
バイオマス先進地に登場した森林活用型アウトドア施設
ボウケンノモリHIRUZEN
●岡山県真庭市
木質バイオマス発電の先進地として知られる真庭市の、広葉樹の森を活用した施設。以前は行政、地域、企業が協働で森づくりをしていたが、新たな活用方法として「子供たちの声が聞こえる明るい森にしたい」との声が上がり、アドベンチャー施設が開設された。体験を通じて森に愛着を持つ子供たちが増えれば、森と人間の距離がさらに近づくに違いない。
子供も楽しめるチャレンジコース、スリル満点のアドベンチャーコース、フォレストセグウェイツアーを提供。
問い合わせ先:https://bouken.co.jp/facility.php?id=3
(BE-PAL 2023年2月号より)