ゴール地点「三条大橋」に到達
東海道キャンピングカーひとり旅。東京の日本橋を出発してから理論値500km、実測値744kmを走破して京都の三条大橋にやってきました。
かつて東海道にあった53の宿場に日本橋、三条大橋を加えた55枚の浮世絵が、一般的な「東海道五拾三次」です。かなりルーズなルートでしたが、一応のゴールとします。
ただし日本橋と同じく、キャンピングカーは拠点に置いて公共交通機関で訪れました。京都観光におすすめの車中泊スポットを別記事にまとめています。
京都は私にとって、名古屋に次いで運転難度の高い街です。体感的には東京都心よりも難しい!すれ違いもできないような狭い道を、バス、クルマ、バイク、自転車、歩行者が縦横無尽に入り乱れ、よく事故が起きないなと驚嘆してしまいます。
高架に覆われた日本橋に比べると、だいぶ往時の姿が感じられる三条大橋。擬宝珠(ぎぼし)には、池田屋事件の刀傷が残っているとか!
すぐ近くには、浮世絵にも登場した「弥次さん・喜多さん」の像があります。創作ではありますが、現代でいう旅小説やロードムービーのように親しまれたのでしょう。
優れた旅行記には、自分が同じ行程をたどっているかのような面白さがあります。近年は車中泊やキャンピングカーがテーマのYouTubeチャンネルも人気ですね。
橋のたもとには、景観に溶け込むようにたたずむスターバックスが。三条大橋を眺めながらコーヒータイムとしました。
ここまで長かったような、短かったような。少し前に旅した北海道に比べると「大きな街が絶え間なく続いている」という感覚が強くありました。見どころが連続するので移動距離も短く、一日に30~40kmほどしか走っていない日もあります。
一方で渋滞も多いことから距離の割には時間がかかり、体感的には「ずいぶん長いことクルマに乗っていたなぁ」という気がします。
少しだけ京都市内観光
私は特別「歴史好き」というわけではないのですが、映画や小説で取り上げられたというミーハーな理由で、いくつか“胸アツ”な時代があります。その前後のエピソードなら、日本史や世界史の試験に出ても満点解答できる自信あり!
たとえば少女漫画で夢中になったフランス革命やロシア革命。あるいは大衆文化が面白い江戸時代から、激動の明治時代にかけて。
『坂の上の雲』や『燃えよ剣』などの時代小説にもかなり影響されました。とりわけ明治維新は少年漫画から大河ドラマまで、数々の作品のテーマになっています。
各地で宿をとりながら江戸ー京都間を移動した大集団といえば新選組があります。しかし彼らが選んだのは、東海道ではなく中山道。いろいろな理由があったと言われていますが、新選組ファンの私としては今回の旅と重ならず少々残念です。
少しでもゆかりのある場所……ということで金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)を訪ねました。新選組の庇護者であった、会津藩の本陣が置かれた場所です。
この場所が選ばれた理由のひとつに、交通の便があるのだとか。京都御所に近く、東海道の起点である三条大橋東までもわずか1.5km。
いまでは住宅が連なり視界がさえぎられますが、山門からは南に位置する東海道がすぐ見下ろせたそうです。「京都守護職」の名のもと周囲に目を光らせる要塞であり軍事拠点。歴史を作った場所でもあります。
境内には会津藩士の墓所も。紅葉シーズンにはまだ少し早かったためか、参拝者もまばらで静謐な空気が漂っています。
コロナ禍によるオーバーツーリズムの軽減で、静かな京都がいまなお続いている印象。人が戻って活気づくのがよいのか、観光業の停滞とトレードオフの静けさがよいのか、判断が難しいですね。
そろそろ昼食時間。せっかくなので京都らしいものを……と思いましたが行き当たりばったりで動いてしまったためノープラン。慌ててスマートフォンで調べて、近くにあった「丸太町十二段家」を訪れました。
失礼ながら後から知ったのですが、昼営業の終わる時間まで人が並ぶ大変有名なお茶漬け店。入店できたのは幸運でした。
こちらは違いますが、ひとり旅だとたまに飲食店などで「カウンターでよければ」などとすぐに入店できることがあります。広いテーブルがあったり眺望がよかったりといった長所のない、いわゆる末席だったりしますが、ひとりなら十分。同伴者とおしゃべりする楽しさと引き換えに、ちょっと得する瞬間です。
注文したのは元祖お茶漬け「すずしろ」(税込1130円)。出し巻、赤出し、お漬物盛り合わせ、ご飯のセットです。
まず目を奪われるのが黄色く輝く出し巻。湯気をあげながら運ばれてきた玉子はふわっふわ。優しい味で、歩き疲れがすっと消えていくようです。
芸術品のように盛りつけられた「お漬物盛り合わせ」も必見。
私の故郷も冬が厳しく漬物文化のあるところで、祖母世代では手づくりする人も多くいます。しかし、どちらかといえば日常のありふれた常備菜で、味も濃いためご飯やお酒を引き立てる役割。決して主役ではありません。
ところが、何種類も立体的に盛りつけられた漬物は本当に美しく、お茶をかけるとまた上品な味わいで、イメージが一変しました。
最後の車中泊
車中泊スポットに戻ってきました。年によっては京都に長期滞在することもありますが、今年はスケジュールの都合もあって、すぐにUターンしたいと思っています。
京都の車中泊スポットは、どこも人々の暮らしと近接しています。地方だと「半径10km以内に存在する人類は自分ひとりだな…」というスポットもたびたびあり、ちょっと怖かったり、かえって気楽だったり人によって印象さまざまでしょう。
私がひとり旅のときにもっとも重視しているのは「安心できること」「治安に不安を感じないこと」です。
夜でも明るい、人通りがある、すぐ近くに民家がある、野生動物がいない、といった要素はマイナスではなく、むしろ高評価ポイントだったりします。クルマの走行音や、周囲の生活音も多少なら気になりません。
家族旅のときはまた少し違うかもしれません。多少のトラブルもこちらが複数人いればなんとかなる、という安心感がありますから、広さや静けさを重視すると思います。
徒歩数分でコンビニエンスストアにもファミリーレストランにもたどり着けるのは都市部の車中泊スポットならでは。安心して最後の夜を過ごしました。