海に潜って初めてわかる、生き物たちの美しい姿と生態。それを写真で誰にでも知らしめてくれるのが、水中カメラマンです。堀口和重さんは2022年12月、オランダのネイチャーフォトコンテスト「Nature Photographer Of The Year 2022」で水中部門グランプリを受賞した、その道のトップランナー。今回は千葉県で撮影した水中写真をお届けします。
日本中の海がスタジオだ! 水中カメラマン堀口和重の「美しき海の世界」第6回
山口県の青海島から、次に向かった撮影地は千葉県館山市の波左間海中公園。
位置は千葉の内房で東京湾と太平洋の境界にあたる場所です。
今回は波左間海中公園に設置されているある物と人気の魚を撮影してきました。
水中の神社
私が住んでいる静岡県の伊豆からは、高速道路を利用して約3時間半で波左間海中公園に到着します。
波左間海中公園には、神社が設置されています。
洲崎神社を分社して設置された日本唯一の海底神社であり、テレビやウェブサイトなどでも取り上げられています。
水難事故防止を願い、海底神社は置かれているようです。
また、波左間海中公園は神社以外にも、定置網に深海ザメのメガマウスが3回入ったことで話題になりました。
コブダイ
神社の近くには大きな鳥居もあります。
鳥居の周りはメジナやイシダイ、イシガキダイなど、たくさんの魚たちが泳ぎ回っています。
中でも特に大きく目立つ魚がいました。
その魚がダイバーにとって波左間のアイドル的存在のコブダイです。
波左間の海には小さい個体から大きな個体まで、数多くのコブダイが生息しています。
『頼子』と名付けられた一番古株のコブダイは、神社の周辺を縄張りとしています。
コブダイはメスからオスに性転換する魚です。
『頼子』というメスを想像させる名前ですが、現在は成長して性別はオスです。
この『頼子』ですが年齢は30年以上観察されているようです。
コブダイの寿命は20年前後と言われているので、かなり高齢のコブダイということになります。。
撮影中も元気に泳いでいました。
この先も元気な姿でいてほしいです。
ヤナギウミエラの群生
神社やコブダイだけでもインパクトが強い波左間の海ですが、もう一つ紹介したい珍しい光景があります。
それが砂地一面に広がるヤナギウミエラの群生です。
ウミエラとはソフトコーラルと呼ばれる、八放サンゴ亜網の仲間です。
普段は体を縮ませて砂の中に潜り込んでいますが、潮や流れ、時間帯により体の大半を砂から出していることがあります。
その行動はプランクトンを捕食するためだと考えられています。私が知っているヤナギウミエラが一面に群生してるところは、千葉県の波左間と熊本県の牛深以外では見たことも聞いたこともありません。
世界的にも珍しい光景だと思います。
秋にもまた撮影へ行く予定なので、その時は冬とは違う波左間の海を紹介したいと思います。
次回の撮影地は山口県の青海島。
2週間前に訪れた青海島で、今度はクサウオの孵化を撮影で狙いに行きます。
今回までの撮影径路
START→伊豆(大瀬崎)→沖縄(石垣島・黒島・竹富島)→伊豆(赤沢)→山口(青海島)→千葉(波左間)
撮影協力:千葉ダイビングスクール・オーシャンドリーム