海に潜って初めてわかる、生き物たちの美しい姿と生態。それを写真で誰にでも知らしめてくれるのが、水中カメラマンです。堀口和重さんは2022年12月、オランダのネイチャーフォトコンテスト「Nature Photographer Of The Year 2022」で水中部門グランプリを受賞した、その道のトップランナー。今回も水中写真の魅力をお届けします。
日本中の海がスタジオだ! 水中カメラマン堀口和重の「美しき海の世界」第7回
今回は以前に紹介したクサウオの卵保護「大きくて愛嬌のあるクサウオの貴重な卵保護シーンを捉えた! 」の、その後の様子を撮影してきました。
青海島での撮影から2週間が経ちました。静岡県の伊豆に戻ってからも現地でダイビングガイドをしている笹川さんと、クサウオの状況について連絡を取り合っていました。
私が伊豆に戻ってから、クサウオの卵は次々に孵化していたようです。
もうすぐ孵化が終わってしまうかもしれないと笹川さんから連絡をいただいたので、すぐさま撮影の準備をして山口県の青海島へ向かいました。
青海島に到着
伊豆からの長い移動を終えて、青海島に到着しました。前回来た時よりも北風が強く外海側の船越は凄い荒れ方をしていました。
クサウオが生息している内湾側の紫津浦は前回撮影に来た時と同じで穏やかでした。
クサウオの状況
気になっていたクサウオの状況ですが、この2週間で変化が起きていました。
前回撮影した、水中に放置された釣り糸を利用して卵を保護していたクサウオのオスは死んでしまい、その後に別のオスが代わりに卵を保護していたようです。
さらに、そのオスも死んでしまいました。
撮影初日は3個体目の別のオスが卵を保護していました。
しかし、撮影2日目になるとそのオスも姿が見えなくなってしまい、卵塊は放置されていました。
卵はオスがいなくなると他の魚やヒトデ、貝などの天敵に食べられてしまう可能性が高くなります。オスが戻ってきてくれるといいのですが……。網についた卵塊を守っているクサウオのオスも2回入れ替わっていたようです。
現在観察できているオスも寿命があと少しなのか、弱っていますが、懸命に卵の世話をしていました。滞在している間に新しい卵も増えていたので、孵化するまでの約2週間を頑張ってもらいたいものです。
ハッチアウトの瞬間
釣り糸に絡んである卵塊と網についている卵塊のほとんどが、孵化してなくなっていました。
残りの卵は中の仔魚が動いていつでも生まれそうな状態でした。
少し待っていると卵から飛び出して、仔魚が孵化(ハッチアウト)しました。
飛び出してくる数ミリの仔魚にピントを合わせるのは難しかったですが、なんとか撮影に成功することができました。
大海原に旅立つ仔魚たちの姿は感動的な瞬間でした。
クサウオは1年しか生きない年魚のようです。
また来年、大きく育ったクサウオに再会できたら嬉しいです。
次に私が青海島へ訪れるのは4月下旬を予定しています。4月の青海島は海藻が広がり、冬とは違う景色となっています。
春の青海島の様子も楽しみにしていてください。
次回の撮影予定地は鹿児島県です。山口県から車で鹿児島県へ向かいます。
今回の撮影径路
START→伊豆(大瀬崎)→沖縄(石垣島・黒島・竹富島)→伊豆(赤沢)→山口(青海島)→千葉(波左間)→山口(青海島)
撮影協力:シーアゲイン