農林水産省が提示したデータによれば、日本における魚介類の1人1年当たりの消費量は2001年度の40.2kgをピークに減少傾向となり、2018年度には23.9kgまで減っています。
そんな危機的な状況を打破すべく、魚の魅力を知ってもらおうと企画された「SAKANA& JAPAN FESTIVAL(魚ジャパンフェス)2023」。コロナ禍での休止を経て、4年ぶりに代々木公園にて2023年2月23日~26日の日程で開催されました。
今回はその会場のなかから、SDGsや地域活性化など、さまざまな観点から魚料理を提供しているブースをピックアップしてご紹介します。
廃棄されがちな「未利用魚」を活用した料理に注目!
日本の漁港に揚げられる魚の3割程が、大きさがやや小ぶり、下処理が大変、あまり市場に流通していない種類であるといった理由で「未利用魚」として廃棄されている現状があります。当イベントでは、そんな未利用魚を有効活用した料理を味わう体験ができました。
未利用魚を使った「ZACO YAKI」とは?
未利用魚の新たな活用を考える活動を行う「ZACO PROJECT」からは、それを加工し、たい焼きの型で焼いた「ZACOYAKI」が提供されていました。
2021年11月に行われた江の島のイベントを皮切りに、漁港や水族館などのイベントにキッチンカーで出店。「ZACO PROJECT」を運営するSocial Business Studio SIGNINGは、社会課題を解決することでビジネスを行っている企業です。海の資源に興味を持つメンバーが集まり、「次世代に海の資源を残すため、何かできないか?」と考えた結果、未利用魚という問題を見つけたことが「ZACO YAKI」のきっかけになったそうです。
「地域や漁港によって未利用魚の定義も違っています。未利用魚の啓蒙活動を行ってくるなかで、徐々に認知されてきたことに手ごたえを感じています。今後はビジネスパートナーを見つけて、もっと新たな挑戦をしていかないといけないなと思っています」(Social Business Studio SIGNING 山縣太希さん)
ほぼ流通していない「ウツボ」が蒲焼に!?
「静岡県西伊豆町」ブースでは、“海のギャング”ともいわれるウツボを使った「ウツボ串」を販売。ウツボはウナギ目の肉食魚。その身にはゼラチン質を多く含み、旨味も濃くおいしい魚ですが、一般にほとんど流通していません。ここでは串に刺して蒲焼にし、提供していました。
適切な数の捕鯨の必要性について考えるブースも
いま世界的に保護の対象となっている鯨ですが、1日に体長の4%ほどのエサを食べると言われています。捕鯨と鯨肉の販売を手掛ける共同船舶の久保好氏によると、鯨だけを極端に保護すると、鯨のエサとなるほかの魚の生息数が減ってしまい、バランスが崩れる懸念があるといいます。
そこで、共同船舶のブースでは鯨を使ったフードや物販を通して、環境保護における鯨を食べることの必要性を伝えていました。
今回のイベント会場では、調査捕鯨で同社が捕獲した鯨の肉を使った「デミクジラシチュー」、「鯨のさえずり 煮込み汁」、「甘辛くじら焼きそば」を販売。一押しの「デミクジラシチュー」には高級で希少な霜降り肉「須子(スノコ)」が使われていました。
福島の海鮮を食べて震災の復興応援
会場では東日本大震災からの復興応援を目的に、「常磐もの」と呼ばれる福島県の海の幸を味わえる「発見!ふくしまお魚まつり」も同時開催。福島県産の海産物から野菜、日本酒やワインなどのブースが並んでいました。
一番人気だったのは、福島のご当地海鮮丼を提供するブース。福島県いわき市の「小名浜海星高校」の生徒たちが実習船「福島丸」で獲ってきたマグロを使った「いわきの福島丸中トロ入りマグロ丼」や、相馬市のノドグロとヒラメ、浪江町のシラウオ、いわき市のアナゴがのった「ノドグロ入りふくしま全部のせ丼」が販売されていました。
また、福島県西郷村の人気スポット「ますつり公園」が出張し、ニジマス釣り体験も実施していました。
同イベントは2023年3月17日より5日間、大阪の万博記念公園お祭り広場でも開催予定。出展数や内容は一部変更となりますが、今回同様に盛り上がることが予想されます。こちらは入場料300円が必要です。
SAKANA&JAPAN PROJECT
https://37sakana.jp/sakanajapanfes/
取材・文/北本祐子