山岳写真家・荒井裕介さんの案内でドキドキのブッシュクラフト初体験
「ブッシュクラフト」とは、「最低限の装備だけを持ち込み、その場にある様々なものを利用して、大自然の中で過ごすこと」と教えてくれたのは、山岳写真家にして、この道15年の荒井裕介さん。
薪は当然として、着火剤となる白樺の皮、食べられる植物なども、判別して採集。その日の糧にする。クラフトといっても何かを作るという意味ではなく、工夫と知恵を駆使する行為だそう。
実際に荒井さんと一緒に森の中に入ると、驚かされることが多い。「そこに生えているサルノコシカケというキノコは、火種として重宝するので採っておいてください。あ、こっちにはキクラゲが生えてますよ」。
この日発見したサルノコシカケ。全部は採らずに使う分だけ、がブッシュクラフトの基本
ほかにも焚き火の自在鉤を作るための枝など、次から次へと、利用できるものを採集していく。そうしていくと自然に対する見方が変わってくる。
焚き火の上に鍋などを吊るすための自在鉤を自作。適当な長さに枝を切り、ナイフで溝を作れば、立派な自在鉤の完成だ。火に近づけるものなので燃えにくい生木を使う。子供と一緒にクラフトしても楽しそうだ。
枝を落としたり、割ったりするのに使うハチェット。小型のノコギリは適当なサイズにカットする際に必須。ナイフは繊細な作業をする小型のものと、ナタ代わりにも使える刃の厚いものを用意している。
ただの歩くという行為に「なにか落ちてないかな?」という採集の視線が入ってくることによって、通常のキャンプなどでは気付かない、自然の豊かさが見えてくるのだ。
ただ、いきなりすべてを自然の中から得ようとするのはハードルが高い。
これがブッシュクラフト流の火おこし道具だ!
白樺の皮の表面を削って木屑を作り、そこにファイヤースターターで火花を散らす。その火種を地衣類やサルノコシカケなどに移し、焚きつけにする。新聞紙などなくても、これで十分火がおこせる。缶に入った油(ラードとカモ油を混合)で簡易キャンドルも作れる。
ガレージブランドSHARA PROJECT主宰。アメリカ在住のときにブッシュクラフトに出会い、自身のスタイルとして取り入れている。狩猟やウルトラライトにも造詣が深い。
◎構成/櫻井 卓 ◎撮影/山田真人