ゴールデンウィークの予定はもう決まっただろうか? 外遊び派も、家でまったり派も、空いた時間に本を手に取ってみては? ネイチャー&アウトドアの世界が広がる良書を2冊ご紹介しよう。
BOOK 01
サスペンスのごとき予測不能な展開!
『人類初の南極越冬船―ベルジカ号の記録』
ジュリアン・サンクトン著 越智正子訳
パンローリング ¥2,200
探検家たちがこぞって極地を目指した、1800年代中盤から1900年代前半。数々の探検譚は今も人びとの心を奮わせる。しかし、生きて帰れなければその一部始終を自ら書き残すことはできない。本書は1897年に南極を目指したベルギー南極探検隊、ベルジカ号の記録だ。隊を率いたのはアドリアン・ド・ジェルラッシュ。ベルギーの名家に生まれ、幼いころから海への憧れを抱き、自ら遠征を計画して資金集めに奔走する。
ベルジカ号は船出からすでに波乱に満ちていた。海の荒くれ者たちの統率に難儀し、途中の寄港地では数名の乗組員を解雇。船を下りた中には料理人もいて大きな痛手を負うこととなる。「越冬はしない」と宣言していたにも拘わらず、半ば確信犯的に南進した氷の世界。色濃いサスペンスのような展開に実録であることをつい忘れてしまう。ときどき口絵のベルジカ号や船員たちの姿を眺めて感じる126年前のリアリティー。
この船には、後に〝北極点初到達〟を巡って大論争を巻き起こすフレデリック・クックと、南極点到達を果たすロアール・アムンセンも乗船している。隊では重要な役割を果たしたふたり。生涯続く彼らの友情の始まりにも注目したい。
BOOK 02
長生きの秘訣とは? ヒントは生き物から
『「老いない」動物がヒトの未来を変える』
スティーヴン・N・オースタッド著 黒木章人訳
原書房 ¥2,750
60歳でも繁殖力みなぎる雌のコアホウドリ、ゆうに300歳を超えたニシオンデンザメ……。長寿のカギは自然界にあると研究する著者。体が小さなものより大きなもののほうが長生きとされているが、そうではない例もあると独自に考案した長寿指数で生き物の寿命と生態を探る。野生生物や人間の寿命を遥かに超える生き物の年齢判定は難しい。世の中にはいかに眉唾モノが多いかも明らかにする。
※構成/須藤ナオミ(BOOK)
(BE-PAL 2023年3月号より)