まだまだ冬服が手放せないでいるが、外を歩けばつぼみや新芽があちこちで顔を出していることに気づく。寒くても春に向けて着々と準備をしているんだなあと眺めていたら、木々が芽吹くように体の中から歩きたい欲求が沸き起こってきた。よし、防寒対策を万全にしてハイキングに出かけよう!
今回は朝比奈ハイキングコースを歩くことにした。「朝夷奈(朝比奈)切通」を抜け、ちょうど2月下旬から3月上旬にかけて見頃を迎える鎌倉の梅の名所「十二所果樹園」にも立ち寄るというルートでいざ出発。
十二所神社の停留所でバスを降りたら、住宅街を通ってハイキングコースに突入。道に沿って流れる小川を見つけた途端、「ちょっと待って!」と6歳の息子から制止の声がかかる。どうしたのかと思ったら、葉っぱを拾って川に流し始めた。流れ行く様子をじーっと観察し、「よし、もう一回!」というのを何度繰り返しただろうか。日陰でひたすら見守るだけの大人たちは、すっかり体が冷えてしまったよ……。
ふたたび歩き出したと思ったらまたストップ。ここは「三郎の滝」。チョロチョロと流れる滝を眺め、その先にある水路でまたまた葉っぱ流しに精を出し、結局、水場で1時間以上遊んでいた。コースを踏破することが目的ではなく、道中を楽しみながら自分のペースで進む息子のほうがハイキングを満喫しているといえるのかも。見習いたいところだが、今はとにかく寒くて仕方がないから、しばらくは歩き続けたいけれど。
水路が途絶えたことも功を奏して、こちらの要望通り、黙々と歩く時間が続いた。と、登り切ったところにぽっかり開けた場所が。「朝夷奈切通」だ。切通(きりどおし)とは、山を削って作った道のこと。その昔、トンネルを掘る技術が発達していなかった頃は、こうやって道を切り開いていたのだ。鎌倉にはこのような切通がほかにもあり、とくに重要な7つを指して「鎌倉七口」と呼ぶ。朝夷奈切通もそのうちのひとつに入っている。