人の手で掘ったとはにわかに信じがたい切通をひとしきり眺めたら、また歩き出す。次に目指すのは「熊野神社」。ハイキングコースからは外れるが、杉林の中の一本道が神秘的な雰囲気を醸し出しているから、これは寄らずにはいられない。実際に歩いてみたら、想像通りのとても気持ち良い道だった。
鳥居をくぐり、階段を登って参拝してから、持参したおにぎりで昼食を取る。この時期、屋外でも日なたなら意外と平気。ただ、少しでも日が陰ると急に寒くなるので、やはり防寒対策は必須だと思った。
おなかも満たされたし、さあ下山しつつ十二所果樹園に向かおう……、あれ? どの道を進めばいいんだ? メインのルートではないせいか、標識がない。たまたま通りかかった人がいたため、道を尋ねることができて事なきを得たが、どうしてもわからない場合はハイキングコースに戻らなければいけなかったかもしれない。
その後は一本道だから、迷う心配もなくて安心。両脇を背の高い植物に囲まれた、探検気分を盛り上げる道は息子にも大好評だった。
「十二所果樹園」に到着。肝心の梅の花だが、まだ早かったようでそれほど咲いてはいなかった。もし、これが満開のときだったら、混雑のため自分たちのペースで進むのは難しかっただろう。息子はといえば梅の花そっちのけで、拾った木片で遊んでいるし、これでよかったのかな。
だんだん太陽が傾いてきて、息子の鼻をすする回数が増えてきたあたりで、帰路についた。
※「十二所果樹園」を訪問したのは2月下旬。3月中旬の現在、満開を迎えています。
◎文=旅音(たびおと)
カメラマン(林澄里)、ライター(林加奈子)のふたりによる、旅にまつわるさまざまな仕事を手がける夫婦ユニット。単行本や雑誌の撮影・執筆、トークイベント出演など、活動は多岐にわたる。近年は息子といっしょに海外へ出かけるのが恒例行事に。著書に『インドホリック』(SPACE SHOWER BOOKS)、『中南米スイッチ』(新紀元社)。
http://tabioto.com