太平洋側の都市部では雪の心配がなくなりつつありますが、アウトドアフィールドを駆け回るなら、まだまだスタッドレスタイヤが活躍。そして、安全な外遊びには、雪道でも確かな走りを見せるクルマがあってこそ。そこで、新潟出身の自動車ライターが、雪の多い地域では絶大な人気を誇るスバル車のフラッグシップ、レガシィ アウトバックをテスト。帰省を兼ねてのドライブでわかった「総合雪国性能」の高さとは? 『総距離850kmのロングツーリングでわかった、スバルの「総合雪国性能」』の後編をお届けします。
雪上の性能だけで語れない総合性能
星峠の棚田を後にし、有馬温泉(兵庫県)、草津温泉(群馬県)とともに日本三大薬湯と称されている越後松之山温泉へと向かった。肌を優しく包み込む薬湯温泉と美味しい里山食事が自慢の「ひなの宿 ちとせ」が本日の宿。到着してすぐに夕食を済ませ、少し休んでから湯船に体を沈める。
少しヌルっとした感触のお湯が肌に優しく絡んでくる。刺激的な匂いもなく、静かに身を任せていると、徐々に肌が滑らかになるのが分かる。なんとも優しいお湯であると同時に、一度体が暖まると朝、目覚めるまで冷えを感じることがなく、安らいだまま朝を迎えることができた。松之山や十日町周辺にはキャンプ場も少なくないので、外遊びの帰りに立ち寄り湯などを松之山温泉で楽しむのもおすすめだ(ちとせでは立ち寄り湯のみのプランはありません)。
宿の心づくしの朝食を頂き、実家へ向けて出発する。すでに昨晩降り積もった雪は路上にほとんどなかったが、日陰には溶けきれていない雪が点々と残っている。油断はできない。なによりも、こうしたシャーベット状の雪を左右に飛ばしながら走ることは、歩行者や道の両端にある建物に迷惑となるから、十分に気を付けるのもマナーだ。
路面からすっかり雪の消えた十日町市街と六日町を抜け、再び関越道に乗って長岡市を目指した。十日町と比べれば長岡の市街地周辺の田畑には雪が少なく、数十センチ程度。融雪パイプが張り巡らされた道には、まったく雪はない。ここ長岡には子供のころからの競技スキー仲間が住んでいて、久し振りに会うことになっていた。
待ち合わせ場所は、彼の自宅から近いスキー場。彼はいまもスキーに夢中で、年に一度のイタリア遠征をはじめ、アルペンのシニア大会にも積極的に参戦している。
そんな彼の愛車は、2年前に購入したスバル レヴォーグのGT-H。
「これでスバルは6台目、30年以上もスバルで他のメーカーは乗ったことがないな」
彼はレガシィを4台、さらにレヴォーグを2台乗り継いできた筋金入りのスバリストなのだ。だが、スバリストという言葉を出すと、こんな返事が。
「趣味の世界とは違うんだよ。こっちで使うならコイツがなにより安全だし、役に立つから」
安全に走りきることの大切さ
新潟県は富山県境から山形県境まで南北に約300キロの長さがある上に、積雪2メートルを越える十日町や湯沢から、そこまで雪の積もらない(今年はかなり積もったが)長岡や、ほとんど雪が積もらない新潟市など、都市部まで高速道路を使えば1時間もかからずに降りてこられる。
路面状況はあっという間に変化するし、おまけにフラットな圧雪路になることなども少ない。路面はアスファルトと雪道が入り交じった状態で、いつもガタガタしていて、いわば“たちの悪い雪道”。そこでの安定した走りだけでなく、スタッドレスタイヤを履いた上での乗り心地の良さや軽快な走りなど、求められる条件は雪道だけではない。そうした諸々の条件をクリアする存在を選ばなければいけないと、幼馴染の彼は言う。
「単に雪道を走るだけならオフロード用の4WDでもいいかもしれないが、普段使いも考え、ドライでの乗り心地や使い勝手、そして燃費などのことを総合的に考えるとスバルが一番なんだよね」
単に雪道での走りだけで「総合雪国性能」は評価できないことを、改めて彼に教えられた思いであった。そして別れ際、「ちょっとアウトバックに座ってもいい?」と聞いてきた。ステアリングを握りながら「いいなぁ、やっぱりプレミアムの香りがするなぁ」と嬉しそうに話している。きっと次のクルマもスバルになるだろうが、そのとき彼のガレージにはどんなモデルが収まっているか、ちょっと楽しみである。
長岡を後にして、今度は実家へのお土産を購入するため、“魚のアメ横”として知られる寺泊漁港の市場に立ち寄る。すでに周辺の雪は消えている。だが、北風はまだ吹き付け、日本海には白波が立つほどであった。心配しているだろうから実家へと急ぐことにした。
新潟市周辺はまったく雪がなく、昨日の十日町の吹雪が別の国の出来事のようですらある。春の温もりを感じさせる陽射しに包まれ、実家に到着。久し振りに母の顔を見て一安心した。そして夕食を共にするため、みんなでレガシィ アウトバックに乗り込み、昔からの行きつけの中華料理店へ。母はなによりも私たちが安全に着いてくれたことを喜んでいる様子だ。
そして翌日、わずかな逢瀬を過ごした我々はふたたびレガシィ アウトバックに乗り込み、東京に向けて走りだした。玄関先でいつまでもクルマを見送る母の姿が、ルームミラーの中で少しずつ小さくなっていく。私が上京して以来、妻や子供を連れて帰省するたびに繰り返されてきた光景だったが、今回はいつにも増して愛おしく感じた。
スバル・アウトバック Limited EX
- 全長×全幅×全高:4,870×1,875×1,675mm
- 車両重量:1,710kg※オプション付き
- 最低地上高:213mm
- 最小回転半径:5.5m
- エンジン:水冷水平対向4気筒DOHC 1,795cc
- 最高出力:130kw(177PS)/5,200―5,600rpm
- 最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1,600-3,600rpm
- トランスミッション:CVT
- WLTCモード燃費:13.0km/l
- 車両本体価格:¥4,290,000(税込み)
問い合わせ先:スバルコール TEL0120-052215
越後松之山温泉「ひなの宿 ちとせ」
新潟県十日町市松之山湯本49-1 Tel.025-596-2525(受付時間:9:00~18:00)
自動車ライター
佐藤篤司
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行なう自動車ライター。著書『クルマ界歴史の証人』(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。