画家・写真家・ナチュラリストのおくやまひさしさんによる、美しいイラストと写真付きの自然エッセイをお届け。今回はヨウシュヤマゴボウです。
根は、子供の背丈よりも長く育ち、切ってみたら、何とはっきりとした年輪があった
ヨウシュヤマゴボウは、ヤマゴボウ科の多年草で、明治期に渡来した北アメリカ原産の帰化植物だが、今では各地に野生化している。都会でも空き地や原っぱなどでよく目にする、2~3mほどの巨大な野草で、赤みを帯びる茎は子供の腕ほどの太さになる。
6~9月ごろには、たくさんの枝を分けて、5~6㎜ほどの白い花を房状につけ、やがて8㎜ほどの黒紫色に熟れる実が、まるでブドウのように房になって垂れ下がる。
アメリカではインクベリーと呼び、色水遊びなどに利用されるが、ヨウシュヤマゴボウにはアルカロイドのフィトラッカトキシンや、アグリコンのフィトラッキゲニンなどの有毒成分があるから、けっして食べてはいけない。
草の根……なんて、特に気にする人はいないと思うが、もの好きな私は、何でヤマゴボウなんだろう…? と、地上部が枯れるのを待って、友人とふたりで掘ってみた。
根は地中深く伸びていて、掘り出してみたら子供の背丈よりもずっと大きかった。
水気の多い根を輪切りにしてみたら、何とはっきりとした年輪があった。木の断面などの年輪なら誰でも知っているが、草の場合も(ここでは根だが)年輪と呼ぶんだろうか?
地方の土産もの店などには、ヤマゴボウの味噌漬けや粕漬けが並ぶが、これは野生のモリアザミの根を利用したもので、長野県や岐阜県では栽培もされている。
黒紫色に熟れた実を搾った汁で絵を描いてみたが、何と半年ほどしたらすっかり色あせていた。
注・色水遊びをした後は、必ず手を洗うようにしよう。もちろん、汁を口に入れてはいけない。
汁で描いた絵はいつの間にか消えてしまう。
根にははっきりとした年輪があった。
子供の背丈よりも大きかった根。
実はブドウのように房になって垂れ下がる。
イラスト・写真・文 おくやまひさし
(BE-PAL 2022年3月号より)