キャンピングカーにはプラスアルファのケア
すべてのドライバーはクルマの状態を良好に整え、安全な運行をする義務があります。
それに加えてキャンピングカーでは、居住空間を快適に保ち、キャンピング装備を長く使うという観点からも「プラスアルファ」の手入れが必要なことがあります。
今回は、キャンピングカーのメンテナンスについて概観します。どれもその場では「まあいいか」と先延ばししがちなのですが、怠ると後悔することばかりです。
帰宅直後に行うメンテナンス
普通車に比べるとクルマに常備しておける荷物も多く、旅の荷造りや荷下ろしが楽なキャンピングカーではありますが、帰宅直後にはいくつかの作業が必要です。
水回りのお手入れ
旅行中にキッチンで水を使ったなら、シンク・清水タンク・排水タンクをよく洗浄し、乾燥させることが大切です。中身が入ったまま、あるいは濡れたまま放置すると雑菌が繁殖するおそれがあります。
水タンクには取り外し可能なタイプと、大容量の据え置きタイプがあります。
洗浄には台所用洗剤やクエン酸、哺乳瓶用洗剤など、各ユーザーが工夫を凝らしています。ポリタンクなら、キャンプ用のウォータージャグのお手入れ方法が参考になります。
休日だけ、あるいは長期休暇だけ、といった使い方をしてる場合は、とくに念入りに除菌・乾燥させておきたいです。ポリタンクタイプなら1,000円~5,000円程度で交換可能なので、汚れたら買い換えも選択肢のひとつです。
トイレの後始末
車内トイレを使った場合は、汚水の廃棄とタンク洗浄を行います。ダンプステーションを利用する、自宅のトイレに流すといった方法のほか、自宅敷地内の汚水ますに簡易的なダンプステーションを作る例も。
清水タンク・汚水タンクには、あらかじめケミカルを入れることで汚れが付着しにくくなるほか、薬剤を入れて放置するだけでカルシウムなどの汚れが取れるタンククリーナーが市販されています。
キャンピングカーではタンクに汚水を溜めるカセット式トイレやポータブルトイレが一般的ですが、もしラップ式の「ラップポン」や「ラップル」を搭載しているなら、後始末はほとんど必要ありません。
次々に新しいフィルムが表に出てくる構造なので、本体が汚れたら拭く程度のケアでOK。帰宅後にラップされた汚物を回収し、自治体の定めに応じて廃棄するだけです。
サイドオーニングの乾燥や車内清掃
もしサイドオーニングやポップアップルーフを使ったならば、展開して完全に乾燥させることが望ましいです。雨天ではなくても夜露で濡れることもあります。濡れたまま格納していると、カビなどの原因になります。
電子レンジやガスコンロなどの調理家電、シャワーを使った後のマルチルームなどは、汚れが固定化する前に清掃・換気するのがよいでしょう。
ベッドにはシーツかマルチカバーを使い、それ1枚をはぎとるだけで後始末が済むようにするのがおすすめです。
忘れてはならないのが冷蔵庫。自宅に着いてスイッチを切り、室温に戻るときに発生した水滴を放置すると、次に扉を開けたときに庫内がびしょ濡れに。
一度食品をすべて取り出し、乾燥させたりアルコール消毒したりというひと手間が必要です。
水回りも調理家電も、「次に使うときまでに間があく」というキャンピングカーの特性ゆえに、1回ごとの清掃の面倒さがあります。
そもそも車内というのが高温・低温・結露・振動などにさらされる過酷な環境なので、食品や薬品を放置しない、定期的に各所の扉を開閉する、通気を確保してよく乾燥させる、といったことは大切だと考えます。
定期的に行うメンテナンス
続いて、旅行をしていない期間に定期的に行うメンテナンスです。
まずはサブバッテリーの充電。走行充電システムがあっても普段の通勤や買い物では微々たる量ですし、ソーラーパネルでの発電は天候に左右されます。
家電を使っていなくても、しばらく駐車しているうちに自然放電していることがあります。放電しすぎるとバッテリーの寿命を縮めることにつながり、私も過去に新品を使用不可にしてしまった経験があります。定期的に電圧を確認するのが望ましいです。
もしFFヒーターを搭載しているなら、夏場などオフシーズンにも定期的に燃焼させることが必要です。月1回、室温30℃以下の日に最大出力で10分間以上燃焼させます。
配管の中に残ったガソリンが劣化し、異臭や異常燃焼の原因となるのを防ぐためで、とても大切な作業とされています。
この作業、意識せずとも自然に暖房を使う冬季には問題ないのですが、温暖なシーズンには記憶に留めておくことが大変です。真夏には室温30℃以下の時間帯を見つけるのにも苦労します。
私は毎月決まった日に動作するスマートフォンのリマインダー機能を使い、夏のあいだも忘れないようにしています。
さらに5~6年に1度は専門業者に依頼し、FFヒーターを分解して内部清掃をする「オーバーホール」が必要とされています。
もうひとつ、それほど頻繁なトラブルではないようなのですが、私のクルマではリモコン式ベンチレーターのカバーがパッキンに張りつき、開閉できなくなることがあります。
無理に開けようとするとモーターが空回りし、いまにも故障しそうに。定期的に開閉して風を通し、あまり強く張りつかないように気をつけています。
日常的なメンテナンス
見た目の美しさのためにも、コーティングを長持ちさせるためにも、洗車はこまめにしたいところですが、多くの付属品があるキャンピングカーは洗車機を使えません。
ルーフベントやサイドオーニングなどの付属品を避け、慎重に手洗いします。脚立などの足場があるとルーフの上まで見えてよいですね。
余談ですが、ソーラーパネルがあることを忘れてルーフに豪快にスノーブラシをこすりつけてしまったのは私の実体験です。
FRPの雨染みやバーコード汚れに適したケミカルも市販されています。ホームセンターなどで見つからない場合は、キャンピングカー用品専門店のオンラインストアがおすすめです。
自宅で洗えるならよいのですが、大型キャンピングカーは入庫できる洗車場が少なく、場所探しに苦労するという声も。普段から近隣の洗車場をチェックしておくことが欠かせません。
ビルダーやディーラーのアフターサービスとしてキャンピングカー専用洗車場を使えたり、洗車スペースを設けるモータープールもあります。
逆に一般的なカーショップやガソリンスタンドの洗車サブスクリプションプランなどは、8ナンバー車は対象外であることが多いようです。
このほか、クルマとしての性能を保つメンテナンスが必要であることは言うまでもありません。とくに車両重量のあるキャブコンは、タイヤ周りのトラブルが多いとされています。
バースト(破裂)やパンクによる横転などの大事故を防ぐためにも、タイヤの空気圧や溝の深さ、ゴムの劣化などのチェックは欠かさず行いたいところです。
キャンピングカーに限りませんが、ディーゼル車ではAdBlue(尿素水溶液)の補充も欠かせない作業です。ハイエースの場合、タンク容量7.4Lで1,000km走行ごとに1L消費ですから、体感的にはかなり頻繁に警告が出る印象です。
補充は簡単ですが、空になるとエンジン再始動ができなくなるため、旅行中でも先延ばしのきかない作業です。
メンテナンスの手間を減らす工夫
キャンピングカーで必要とされる日常の手入れを列挙しましたが、実際のところ私はこのすべてを行っているわけではありません。
安全に関わる部分のメンテナンスは省略不可ですが、居住空間に関する部分は、使い方によってかなり省力化が可能です。
たとえば水回りですが、清掃や乾燥の手間を避けるため、シンクは一切使わないという人もいます。「宝の持ち腐れ」のような気もしますが、実は私もその一人です。
幸いなことに日本はどこにでも清潔な手洗い場がありますし、ウエットティッシュなども簡単に入手できますから、手入れの手間と天秤にかけた結論です。
また、ラップ式ポータブルトイレで帰宅後のタンク処理の手間を大幅に軽減しています。直線的な横向きベンチシートを選択し、隙間があまりない構造にしたことで清掃もかなり簡便になっています。
装備が増えるほど、また構造が複雑になるほどメンテナンス箇所も多くなるのが自明の理。構造的にシンプルなキャンピングカーは、メンテナンスもシンプルです。