皆さんが日頃楽しんでいるキャンプにも、資格があることをご存知でしょうか?
その名もキャンプインストラクター。このたび、私は資格の取得に挑戦しました。
資格自体の詳細な説明や申し込み方法について解説した前回の記事に続き、今回は資格取得に必要な講義と試験が実施される養成講習会の様子を、受験者の視点からレポートします。
※この記事では筆者が申し込んだ山梨県キャンプ協会主催の講習会の流れを紹介します。講習会の内容は都道府県によって異なる可能性があるので、詳しくは各都道府県のキャンプ協会のHPをご覧ください。
\前回の記事はこちら/
「キャンプインストラクター」って知ってる?資格の取得に挑戦してみた【前編】
養成講習会の会場は県立少年自然の家
甲府盆地を一望できる標高423mの愛宕山。その上に立つ、山梨県立・愛宕山少年自然の家が養成講習会の会場でした。
屋上からの眺めは絶景で、南東には富士山を望むこともできます。甲府から富士山を見るのは初めてでしたが、その雄大な立ち姿にはやはり見惚れてしまいます。
この会場で1泊2日の対面講義、資格取得のための実技講習・試験が行われました。
甲府の里山の豊かな自然にも囲まれ、とても恵まれた環境で2日間の講習会に臨むことができました。
なお、この対面講義に出席する前までに自宅でキャンプの理論に関する学習(動画講義受講と4つのレポート提出。学習範囲については下表を参照)を済ませておく必要があります。
科目 | 内容 |
キャンプの特性 | キャンプの歴史に始まり、キャンプの要件や意義を学びます。 |
キャンプの対象 | キャンプの対象は人と自然です。「生理学的観点から見たキャンプの注意点」や「天候、地形、モラル、環境問題、安全面などの観点から見た自然との向き合い方」を学びます。 |
キャンプの指導 | キャンプの指導者としての在り方を、心理学や教育学の観点から学習します。 |
キャンプの安全 | キャンプにおけるリスクアセスメントの考え方を学びます。 |
キャンプの生活技術 | テント・タープの設営、ロープワーク、薪割り、火おこし、撤収などについて、その方法や心得を学びます。 |
参加者の経歴はさまざま
若い会社員の方、キャンプ関連会社の経営者の方、来年には定年を控えキャンプ場開設を考えている方、学生の方など、参加者の肩書きや経歴はさまざま。ただ、キャンプが好きでもっと深く学びたいという意欲を持っている点は共通していました。
一方、講師陣は山梨県キャンプ協会の会長、副会長を務める方たちを始め、一流のキャンプ指導者の方々が集まっていました。
1泊2日の講義の流れ
講義のほとんどは実技で、2日目の最後に試験が行われます。
ロープワークに始まり、テント・タープ設営、薪割り・火おこし、野外炊事、キャンプファイヤー。これらの実技講習をグループワークで実施します。
参加者同士は初対面ということもあり、会場には緊張が漂っていました。
とはいえ、一流のキャンプ指導者である講師陣の実力を見た途端に圧倒され、そんな緊張は一瞬で吹き飛んでいきました。
実は重要なアイスブレイク
まずは、アイスブレイクから養成講習会が始まりました。
講習中は“キャンプネーム”というニックネームでお互いを呼び合うというもの。
ちなみに、山梨県キャンプ協会会長の大和田さんは「ジャムじい(「ジャムおじさん」が由来だそうです)」、副会長の染谷さんは「そめたろう」がキャンプネーム。呼ぶ際は、かしこまって「さん」を付ける必要はありません。
参加者も各自キャンプネームを決めたら、次は仲を深めるためのゲームへ。
このゲームが、参加者のキャンプネームを覚えていないと負けてしまうようなルールになっており、「名前を覚えること」と「緊張をほぐすこと」の2つが同時にクリアされるものになっていました。
キャンプインストラクターが行うキャンプの心得に「誰にでも開かれたキャンプにすること」「参加者ひとりひとりを尊重すること」というものがあります。この講義自体のプログラムでも、まさにそれが体現されていました。
つまり、参加者同士の距離感を縮めるプログラムは、私達へのもてなしであると同時に、キャンプ指導者としての在り方を学ぶ教育でもあるように感じました。
新たなキャンプの気付きに出会える実技講義
そして始まった実技講習。
ロープワーク、テント・タープ設営、火おこしなど、キャンプで頻繁に行う作業について、専門家から改めて指導をもらえるのはありがたい機会でした。
自分の中での一番の気付きは、ネイチャーゲームやキャンプファイヤーの講義にありました。
なぜなら、これらのアクティビティは自分の普段のキャンプでは候補に挙がることもないくらい縁のないものだったから。とても新鮮に感じられました。
何より、自分が行なっているキャンプが、実はワンパターンであることに気付かされました。毎回のキャンプで「使うキャンプギア」や「夕飯のメニュー」、「キャンプ場」などは変えていましたが、もっと大枠で見たときにはやっていることがほぼ一緒だった、という点に気付かされたのです。
講義を通し、普段関心を寄せていなかったことに触れる機会を用意してもらえたおかげで、ソロキャンプを行う上でも新しい選択肢が見えてきたほか、社会的な面でのキャンプの有用性も再発見できたように思います。自分の中でのキャンプの可能性が広がっていくのを感じました。
他の参加者に話を聞くと、「講師陣のキャンプ指導者としての立ち回りに感銘を受け、今後インストラクターとして見習いたい」といったコメントもありました。講義を通じて、それぞれに気付きがあったようです。
2日目の最後に合格発表!
実技講習を終え、2日目に試験が行われました。オンラインの動画講義と実技での習得度をチェックする内容です。
私も無事合格することができ、晴れて日本キャンプ協会認定のキャンプインストラクターになることができました。
会長に聞いた「どんな人に資格を取ってほしいか?」
最後にジャムじい(大和田会長)に、「どんな人にキャンプインストラクターの資格を取りに来てほしいか」と伺いました。
「基本的には誰でもウェルカムです。ただ、強いてあげるなら、“自分はソロキャンプしか興味ない”と思っている人。あるいは、ボーイスカウトなどの経験があって、“ソロキャンプなんて本当のキャンプじゃない”と思っている人、なんかに来てほしいですね。講習会を通じてキャンプはもっと自由であることをお伝えしていきたいです」
もらった回答には、今回私が感じたことと通ずる部分があるように感じました。
また、ある参加者になぜこの講習会に参加したのか聞いたところ、次のような答えが返ってきました。
「同じようなキャンプ好きとのご縁を見つけたかったのが一番ですね」
思えば私も今回、参加者、講師陣ともに、ここでしか出会えないキャンプ好きと知り合うことができ、大きな財産となりました。彼らと色んな話や約束もして、また新しいキャンプが始められそうです。資格はもちろん、それ以外にも得られるものがたくさんあった、貴重な1泊2日の経験でした。
取材協力:日本キャンプ協会、山梨県キャンプ協会