満月の夜、月の光の意外な明るさに驚いたこと、ありませんか?
自分の影が地面にくっきり映り、遠くの山の稜線や木々のシルエットが意外にしっかりと見えたりして、あれれ?今夜はそんなに暗くないぞ、なるほど満月か!なんてこと、ありますよね。
月の光をめいっぱい浴びているうちに、夜の闇にたいする怖さがすっと消えて、なんだかひろびろした気分になって――。
満月の夜、月の光の下に広がる美しさを、数多くの傑作写真作品で伝えてきたのが、「月光写真家」こと石川賢治さんです。今回は、月の光を浴びにいきたくなる石川さんの最新写真集と写真展をご紹介します。
石川賢治(いしかわけんじ)さんプロフィール
1945年福岡市大濠生まれ。1967年日本大学芸術学部写真学科卒業。ライトパブリシティ入社。1976年よりフリーランス・フォトグラファーとして活動を始め、CF・スチールを数多く手掛ける。1984年秋より月光写真に取り組み、初の写真集『月光浴』(1990年小学館)が一大センセーショナルを巻き起こす。『宙の月光浴 』(2012年小学館)、『月光浴 青い星』(2017年小学館)ほか写真集多数。2016年福岡県の糸島半島に移住。新たな月光写真の創作に挑む。公式HP http://gekkouyoku.com
日本中を震撼させた『月光浴』の衝撃
写真家・石川賢治さんは、1984年にハワイで出会った満月の風景に衝撃を受け、月の光だけで風景写真を撮る試みをはじめました。
月の光は、太陽の光の46万5000分の1の明るさしかありません。
ごくかすかな光でとらえた月光風景の写真集『月光浴』が1990年に発売されると、その硬質なブルーの美しい世界が多くの人々の胸の奥を強く揺すぶり、『月光浴』は一大センセーションをまきおこしました。
美しい月に出会うための必須条件とは
イグアスの滝からヒマラヤ、知床半島、竹富島まで世界中の大自然を旅しながら月の光で撮影を続けた後、石川さんは2016年に都会を離れ、福岡県の北西部に位置する糸島半島に移住します。
そこは夜になると星と月以外の光がなく、人間と草花や虫たち、地上のすべてのものが、宇宙とひとつながりに変貌するような場所でした。そう、暗闇こそが、月を美しく輝かせるのです。
糸島半島に残る“真の暗闇”で、満月の夜に石川さんが外に出るときの感覚は、古代の人たちが体験していたような感覚だったかもしれません。大昔の人もきっと、満月の夜の風景に息を飲み、さまざまな思いをめぐらせたのではないでしょうか。
古代の人たちにとって月とは、地球から38万km離れた遠くの星ではなく、季節の変化や収穫の時期を教えてくれる親しみ深い、とても近しい存在だったはずです。
月下でしか体験できないあの感覚
満月の夜、外に出たときに感じるあの独特の感覚、気分は、なかなか言葉にできない感覚ですが、とてもすばらしいものであることはまちがいありません。
長年、満月の下で時を過ごしてきた石川さんは、あの満月特有の感じを、どのようにとらえているのでしょうか?
この5月、11年ぶりに撮り下ろしの新作写真集を刊行するにあたり、石川さんは月夜のすばらしさについて次のような言葉で綴っています。
人類は宇宙時代に入ったと言われています。民間人による国際宇宙ステーションへの宇宙旅行の実現や、数多くの宇宙探査機が地球に映像を送り、人々が宇宙を理解する機会はますます増えるでしょうが、しかし宇宙をどれだけ実感しているでしょうか。
満月の明るさは太陽光の46万5000分の1。タヒチ、ヒマラヤ、ケニヤ、ハワイ島、ウユニ塩湖など、満月の光を求めて世界を巡った30 年間の旅にひとくぎりをつけ、2016 年、福岡県の自然豊かな糸島半島へ移住しました。
真の暗闇のある場所に暮らしながら、いにしえから多くの人たちが愛でた月夜の晩に“地上の宇宙実感”をテーマに撮影しました。
四季折々、満月の夜。月光に照らし出された草花やいきものに古来からの力強い生命力を感じます。足もとの草花や昆虫を通して天空を見上げると満天の星とひと繋がりになり、宇宙本来の姿に見えます。私たちは宇宙と繋がっているのです。
石川賢治
11年ぶりの新作撮り下ろし月光浴写真集発売!
いにしえの人々も愛でたであろう月の満ち欠け、潮の満ち引きを感じながら、「地上の宇宙実感」をテーマに石川さんが撮影した最新作品が、写真集『月夜の晩に』として5月19日に発売されます。
月の光がもたらす世界の美しさ、その奇跡的な静謐感をあますことなく伝えてくれる石川さんの新作写真集。全国の書店などで、ぜひ手に取ってそのすばらしい世界を体感してみてください。そして満月の夜には外に出て、ひろびろとした宇宙を感じてみてください。
石川賢治さんの最新写真集『月夜の晩に』
日本の春夏秋冬を舞台に、宇宙と繋がる神秘の世界を最高品質の印刷で表現した最新作。写真集としては例を見ない右開き仕様で、春夏秋冬の折々に添えられた石川賢治さんの言葉と、『月夜の晩に』に寄せる想いも縦書きにして、日本の書物の美しい佇まいを感じさせる本に仕上がりました。日本人の心象を深く愛し、古今和歌集など日本の古典文学を海外に広く伝えているピーター・J・マクミランさんが英訳を担当。箔押し、チリ1ミリの造本で、まるで宝箱のような美しい本に仕上がっています。https://www.shogakukan.co.jp/books/09682430
大丸梅田店で写真展を開催!
5月17日から5月30日まで大丸梅田の大丸ミュージアム開催される写真展では、すばらしいオリジナルプリントで月光浴を体感することができます。関西在住の方はぜひ、関西以外の方も大阪にお越しの際は、ぜひとも足を運んでみてください!
石川賢治月光写真展 月光浴『月夜の晩に』
会期: 2023年(令和5年)5月17日(水)~5月30(火)会期中無休 ご入場は午前10時から19時30分(20時閉場)最終日は17時30分まで(18時閉場)
会場:大丸ミュージアム<梅田>(大丸梅田店15階)
入場料:一般1000円(800円)、大高生800円(600円)、小中生400円(300円)※( )内は前売り料金、及びご優待料金です。詳細は大丸松坂屋展覧会ホームページへ。前売り券は、ローソンチケット(Lコード59600)にて発売。
主催: 石川賢治月光写真展 月光浴『月夜の晩に』実行委員会
協力: 小学館、キヤノンマーケティングジャパン、富士フイルムイメージングシステムズ
キャラリートーク・サイン会:ギャラリートークは5月20日(土)、5月28日(日)の14時~開催。サイン会は同日15時~。
※ギャラリートークのご参加には、本展の入場券が必要となります。
※当日グッズコーナーにて写真集・DVDをお買い上げいただいた方、各日先着40名にサイン会の参加券を配布いたします。
※グッズコーナーについては、入場券なしでご利用いただけます。
大丸松坂屋展覧会ホームページ: https://dmdepart.jp/museum/umeda/gekkouyoku/