かほなんの 無人島21日間 サバイバル記録~第2回「食料も水もある、歩いて見つけた島の恵みに感謝」
無人島で自給自足をしながら暮らすことを夢みるアイドルの女子が、約6年間、サバイバルの修業を積んできた。身につけたスキルを試すべく、21日間限定で無人島に渡り過ごした記録をレポートする短期集中連載の第2回。
(第1回はこちら)
念願の夢が叶い21日間の無人島生活を始めたかほなん。初日の昼過ぎに拠点は完成した。次は、夜が来る前に食料と水を確保しなければならない。ナイフとわずかな道具を持ち、地図のない島を歩きだした。
※この挑戦は、島の管理者の許可を得て行なっています。

さばいどる かほなん 岐阜県出身。チャンネル登録者数46万越えの『さばいどるチャンネル』では、釣り、キャンプ、車中泊旅、料理、登山などの動画を公開中。2019年に購入した山のほか、2020年からは、レンタル山を拠点にサバイバルの修業を積んでいる。著書『アウトドアが100倍楽しくなる! さばいどるのワイルドキャンプ』(すばる舎)ほか。
島の裏側は水と食料の宝庫だった
小さな崖から、わずかに染み出る水を発見して、拠点へと持ち帰ったかほなん。実は、ペットボトルと麻縄を使って水を溜めている間に、目の前の浜でカキを採取していた。
その浜の水辺は、砂や小石よりも多くのカキの殻で覆われていた。貝殻のなかには、アサリやオオアサリもある。かほなんは、大潮の干潮で現われた水辺を歩き小さな岩を持ち上げた。
「いや~、無人島にサバイバルに来て、こんなにいいものが採れるとは。これはまるでカキマンションですね」
かほなんが持ち上げた岩には、いくつものカキが付着していた。それを石で叩いて落とし、持参した野菜収穫袋(メッシュ)に集める。あっという間にカキで袋が満たされた。
夕方、拠点では、無人島最初の食事づくりが始まった。持参した焚き火台を組み立て、火をおこす。あたりに落ちている流木を集め、それを燃料に。
「まずは飲み水を作ります。集めた水を持参した浄水器でろ過して、それを煮沸します。カキは、網の上で焼いてみます」
飯盒で煮沸した水を美味しそうに飲むかほなん。その水が、島で初めての飲水だった。
「まん丸でプリップリ。美味しい~」とカキを食べ笑顔に。
飲み水に続き、島のご馳走まで大量に確保。幸先のいいスタートに「島から命をいただいている感じがします」と、安堵の声を漏らした。

かほなんが拠点とした場所から歩いて15分ほど。島の反対側の崖の下で、わずかに染み出る湧水を発見。「これで生きていける!」

落ちていたペットボトルと麻縄を使って、丁寧に水を汲むかほなん。目の前にある材料を瞬時に加工して道具に変えるのもお手のもの。
カキは採れる。しかし、飽きる
それから毎日、かほなんは命を繋ぐためカキを食べ続けた。
「カキは、3日で辛くなりました。日数を重ねるにつれ、徐々に食欲不振となり、朝と夜の2食になりましたね」
チャレンジをはじめて7日目。再び島を訪れたときのかほなんは、どこか疲れていて、見た目にも明らかに痩せたことがわかるほどだった。
それでも、カキは1食で20個程度を食べる。無駄な体力を使わないよう、一度、拠点を離れたら、水汲み、カキ採取、その他のものを集めるなど、無駄のない動きを考え実践してきたという。それだけ、過酷なチャレンジなのだ。
「島には調味料は持ち込んでいません。塩は、海水を飯盒に入れて煮詰めて作ります。本に出ていた天日塩作りも試しましたが、時間ばかりかかり、少ししか取れなかったので、自分で考えた方法に変えました」
水は毎日組んで貯めておく

「湧水地に置いたバケツに水を貯め、朝と晩にポリタンクを持って取りに行ってました」。手間のかかる水汲み、浄水、煮沸を繰り返し、生活を死守した。
かほなんが、万能調味料として常備するお爺ちゃんから伝授されたすき焼きのタレもない。ただひたすら、塩だけですべての材料に味付けをして食した。
「毎日、同じ食材でも、それを飽きずに食べるために、調味料がどれだけ役に立っていたかを学びました。油があれば、マヨネーズがあれば、せめて味噌があれば、なんて考えては、それを自分で打ち消して、食べることに集中しました。近所のスーパーって素晴らしいですね」
やっぱり釣りは楽しい!

持ち込んだ釣り具を使うと、20㎝程度のタケノコメバルがおもしろいように釣れた。小さな魚は、イワシ?「弱っていたのを手ですくいました。美味しかったです!」
かほなんは、カキ以外の食材を調達するため、釣りや小さなトラップを作り試していた。
「2日目に、捕まえたカニを使って防波堤でイシダイを狙いましたが釣れませんでした。次に、巻き貝を潰したエサを付けて、波消しブロックの間に落としたら、小さなタケノコメバルが釣れました。でも、あまりにも小さかったのでリリース。翌日、同じようにやったら大きいのがヒョイヒョイ釣れました」
無人島の食卓が、徐々に豊かになっていった。道端にいたカナヘビを捕獲し、焼いて食べ、ハマダイコンのサヤを茹でて、カキも燻製にするなど、工夫を凝らした。
「何日目かに、アサリが採れて、それを食べたときがうれしかったですね。今まで買って食べていた馴染みのある味がしたからです。野草とかもいろいろと食べてみましたが、正直、味が苦手でノドを通りませんでした。それに、野草はたくさん食べなければ腹にたまらないから、あまり食べなくなりました」
野草では力が出ない

「ササノコは、そのまま焼いて、皮を剥いて食べるとタケノコみたいで美味しいです。でも力は出ないんですね」

あたりに生い茂るハマダイコンも食用に。花とサヤは茹でて食べ、ピリ辛い根の部分は魚を焼いたときに添えた。
無心で湧水地へ歩き、淡々と水を汲み、持ち帰る日々

シェルターは、風でバタつかないよう、周囲を石と重い流木で囲い、竹を支柱にして、前室も張りだした。日々進化。
忍耐と試行錯誤。これを繰り返し、かほなんは島の生活を続けてきた。その甲斐あって住み家と食は安定してきた。ところで衣食住の「衣」は、困らなかったのだろうか?
「水は、最初に見つけた湧水がすぐに枯れてしまったんです。でも、大雨のあとに別の湧水が見つかり、そこで貯めた水を朝と夕に持ち帰えりました。おかげで常に20ℓは、水をキープできてました。その水と重曹を使って洗濯したり、洗髪したり。水は、1日5ℓだとカツカツだけど、10ℓあるとリッチな生活ができます。20ℓなら、湧水が枯渇しても、すぐには困りません。余裕でしたよ」
塩も自分で作る

塩は、飯盒の蓋に海水を入れ、焚き火で煮沸して作る。火にかけて20分もすると水がなくなり、塩だけが残る。それをこそぎ落とし、集めて使う。

ある日の夕食。「カキは飯盒にたっぷり入れて焼くと、蒸し焼きになり美味しく食べられます」。ハマダイコンのサヤは茹で、ササノコは焼いて食べた。竹の器と箸も自作。
日を重ねるほどに、コメントもたくましくなるかほなん。この無人島に、水と食料が豊富にあったことへの感謝をことあるごとに口にしていた。
日々、落ちていく体力。そして、平穏ではない気候。遠くを通り過ぎる大型船を眺めながら、のんびりと過ごす暇はない。
「今日もいきましょう! 働かなくては生きていけないから」
同じものを飽きずに食べる。それが一番難しい

「牛乳飲みたいな~。いかん、胃を動かしては」。頭をよぎる雑念を振り払い、島の恵みに感謝しつつ、ただ動くため、生きるために腹を満たす日々が続いた。
かほなんが過ごした無人島の全景

かほなんが21日間を過ごしたのは、愛知県田原市にある姫島。周囲約1.5km、標高62mで、キキョウの自生地としても知られ、地元の方が大切に管理保全している。山頂は写真の左奥。標高62m。その右側が竹林 。右端が上陸ポイントで、ベースキャンプを張り、釣りもする。その下側には野草が採れるポイントがあり、さらに下に向かったところ(写真の下中央近く)が山頂への登り口。その少し上が暴風雨時などの避難予定地。海岸沿いに左へいくと、カキが採れるところや湧水ポイントがある。
島で手に入れた食料
陸で
•ハマダイコン
•ササノコ
•タケノコ
•サンショウ
•カラスノエンドウ
•ハマウド
•クズ
•カナヘビ
海で
•カキ
•アサリ
•ニシガイ
•タケノコメバル
•イワシ
•エビ
•ヤドカリ
•ナマコ
•カニ
•ワカメ
•メカブ
※構成/山本修二 撮影/花岡 凌 協力/姫島整備促進委員会
(BE-PAL 2022年9月号より)