「僕がMTBに乗り出したきっかけはビーパルなんですよ。特集で見た『MTBはどこでも行ける!』というコピーにやられちゃって」と語るプロMTBライダーの檀 拓磨さん。
1987年。少年ダンタクマは、お年玉を貯めた約15万円で、マングースの、当時手に入る最高級のレーシングモデルを買った。
「家から40分かけて山のてっぺんまで行って、ダーッと駆け下りる。どこでも行けると信じてるから、川は走るわ崖からジャンプするわ、何でもトライしましたね(笑)」
少年がプロのライダーになっていく過程とともに、MTBは急激に進化。フルサスペンションバイクが主流の今は、ママチャリのようなポジションで、サドルに腰掛けていてもダートを楽しめる。
1997年ごろ作ったMTB。短時間で結果を出したいレースにはアルミ製を選ぶそうだ。
「それは初心者にはいいことだと思う。ただ、僕らが乗りはじめたころは前も後ろもサスなんてなく、着地でミスると車輪やハンドルがぐにゃっと曲がるような時代だったので。そのぶん技術を磨くことに全身全霊で取り組んだ。というか、それが楽しかったんですね」
その原点に返って設計したのがこの一台。’04年、「DANN GmbH」で作ったDT-フィグ01。材質は体に心地いいチタン。ドロップハンドルにすると、顔がぐっと大地に近づく。そんなにスピードは出さなくてもワクワク感があり、里山を楽しく走れるそうだ。
キノコとりの人や野生動物もいる里山でレースのような走りはできない。だが、ドキドキする「スピード感」は味わいながら10代のように大地とたわむれたい。それにはドロップハンドルにして目線を低くすればいい……というのが彼の結論だった。
檀拓磨さん
1989~1997年、MTB世界選手権大会日本代表。日本人初のフルタイムワールドカップレーサー。現在は会員制のMTBクラブ「CLUB3719」の代表。
www.dantakuma.com
◎構成/かとうあづみ ◎撮影/後藤匡人