個人で広島県江田島市に「Hawk Nest Family Village」というキャンプ場をオープンしたコージさん。そんなコージさんがキャンプ場オーナーの立場から、キャンプ場での快適な過ごし方について考えます。第1回は、雨キャンプの楽しみ方です。
キャンプ好きにとって雨は敵…ではありません
アウトドア好き、キャンプ好きで、雨が好き…という方は少ないのではないでしょうか。テントを設営するときに何から何までびしょ濡れになり、テント内も快適とはほど遠い環境。そして撤収のときも、びしょ濡れのテントをたたむと水を吸ってやたら重く、帰ってから干すのもおっくう…。だいたい、焚き火も出来ず、何しに来たのかわからん、となってしまいかねません。
キャンプ場オーナーとしても、雨は大敵です。旅館やホテルでは、少々の雨でもキャンセルはそれほどありません。でも、キャンプ場は、宿泊の前後どっちか一日でも天気予報で雨マークが出ると、キャンセルが続出。いや、もともと予約が入りません。
しかし、まれに雨でもキャンプ場に足を運ぶ方がいます。雨キャンプの楽しみ方を知っている方ですね。
雨キャンプの良いところ、メリットとは——
- キャンプ場に人が少ないので、静かなキャンプが楽しめる。
- 雨音を聴きながらのキャンプ、という心地よさ。
- 雨対策さえすれば、テント設営も撤収も、キャンプ中も支障を来さない。
- 雨だからキャンプに行けない…と悶々とすることもない。
以下は、YouTubeでも人気のJJソロキャンプさんの見解です。
「お篭もりキャンプで好きな物を食べて好きな本や映画を見ながら雨音を楽しむ!雨音が心地良くて快眠できるし、普段より人も少ないので設営・撤収の手間以外は快適です。虫も少ないので、虫嫌いには良いと思います」
ところで、キャンプ場の稼働率がどの程度か、ご存知でしょうか。全国平均は17%程度です。さらに、毎年30件ほどのキャンプ場がクローズに追い込まれています。自分がキャンプ場のオーナーだから、こうしたことを問題視しているのではありません。
せっかくのブームでもキャンプ場が減っていくと、キャンパーのみなさんが楽しめる選択肢が徐々に減っていってしまいかねません。こうした観点からも、雨だからと外出を控えるのではなく、むしろ積極的に雨キャンプを楽しんでほしいと思っているのです。
そこで、どうすれば雨の中のキャンプを楽しめるのか、引いてはみんなのキャンプ場を守っていくことが出来るのか、いくつかのポイントを上げてみたいと思います。みなさんもぜひ一緒に考えてみてくだされば、と思います。
これを押さえて雨キャンプを快適&安全に
何事も、事前の準備や心構えが不可欠です。雨キャンプを楽しむにあたっての留意点を、以下にまとめました。
場の選定
- 水捌けの良いところ
まずは、水捌けの良いキャンプ地、あるいはサイトを事前に確認しましょう。普段、キャンプ場に行かれた際に、ここだったら大丈夫そうだ、と目星を付けておけば良いと思います。
ちなみに、コージのキャンプ場「Hawk Nest Family Village」は、もともと尾根だったところを市が別の場所の埋め立てのために削って出来た地なので、フラットな割に周囲より高い地にあり、さらに花崗岩の岩盤の上にあるので、水捌けは申し分ありません。また、テントを張る場所にはウッドチップを敷いてあるので豪雨ででも水溜まりにはなりません。それでも駐車場など別の箇所には豪雨の際にはところどころ水溜まりが出来るので、水を逃がす溝も適宜設けています。
- 天候悪化でも危険の少ない地
行き来での危険を考えると、地形など充分考えた選定が必要ですね!
タープ
- 生地:おおまかに2種類あり、選択する上で重要な要素になると思います。
①ポリエステル&ナイロン素材:
特長:化繊合成繊維で軽量で、かつ耐水性が高いです。
弱点:耐久性は➁より劣る。かつ火の粉に弱い。
②TC(テクニカルコットン)素材:
特長:丈夫で、火の粉にも強い。
弱点:①に比べて重く、また、雨水を少し吸うのでさらに重くなり、乾くのにも時間がかかる。なお②でも、火の強さ次第では燃え始めてしまう可能性もあるので、焚き火のコントロールには充分気を付けましょう。
※あくまで火の粉への耐性の強さを表現するもので、タープ直下での焚き火を推奨するものではありません。
- タープで、テント前の居住エリアをカバーするか、テントそのものをカバーするか。
これは過ごし方か、設営・撤収のし易さか、どちらを優先するかでしょうね。
テントそのものの耐水性が高いものを選び、水をはらってタープ下で畳むようにすれば、居住エリアをカバーする張り方が良いかと思います。
ちなみに当地「Hawk Nest Family Village」では、梅雨の時期から夏季8月末まで、いくつかタープ常設サイトを設けていますので、ホームページよりご確認ください。
過ごし方
普段のキャンピングの楽しみ方はもちろんですが、雨ならではの楽しみ方もあろうかと思います。
- 晴耕雨読
雨の日の読書はいかがでしょう?普段のネット漬けから、身も心も頭も解放して、ゆっくり読書を、雨音を聴きながら楽しんでみる。なんと素敵な時間でしょう! 雨上がりには鳥のさえずりに囲まれます。
ちなみに、「Hawk Nest Family Village」には、日本文学全集が置いてあり、閲覧自由&テント持ち込み可です。一気読みは難しくても次回来られた際に続きを読むということもありですし、気に入って手元に置きたければ本屋で買って自身のライブラリに加えるということも出来ると思います。
- 雨釣り
雨具さえ着れば、釣りも雨の楽しみ方になると思います。
海が荒れたり強風だったりしなければ、たまには釣り船に乗ってみるという手もありますね!
当地には、牡蛎イカダでの釣りも楽しめる往復運搬ボートの業者さんもあったりします。
ブームによってキャンプの楽しみ方が広がり、以前は考えにくかった冬キャンプが今では定着しつつあります。同様に、雨キャンプもアウトドアでの選択肢のひとつに加わればと思う次第です。そして、多くの人が利用する場所だからこそ、キャンプ場での心地よい過ごし方についても、みなさんと一緒に考えていく流れになればと思います!
何より、ひとりのキャンプ好きとして、キャンプブームが末永く続くよう、願っております。