日本最大級の朝市「館鼻岸壁朝市」
太平洋を望む青森県八戸市。漁船が並ぶ岸壁で、毎週日曜日に「東北一」とも「日本一」とも称される朝市が開かれることをご存じでしょうか。
まだ夜も明けきらぬ午前4時、数時間前まで何もなかった広大な岸壁に全長約800m、およそ300店が並ぶ巨大な朝市が出現します。
公共交通機関の運行前から始まるということで、来場にはクルマが便利。ワクワクしながらスタートを待つ「館鼻(たてはな)岸壁朝市」をレポートします。
駐車場所に注意しながら待機
会場となるのは、その名のとおり八戸漁港・館鼻岸壁。近くには北海道とつながるフェリーターミナルや、ウミネコの繁殖地として知られる蕪嶋(かぶしま)があります。
漁船の出入りのない日中は、ひっそりと静まりかえった漁港。本当に日本有数の朝市の舞台なのか疑ってしまうほどです。目印などもないので、どこからどこまでが会場なのかも一見わかりません。
参考になるのが駐車場案内図です。L字型の岸壁に沿って朝市が開催され、その両端が駐車場になることがわかります。キャンピングカーなどの大型車には、交差点付近に専用駐車場が用意されています。
駐車場利用の注意点がひとつ。到着時刻によっては出店場所を示すパイロンやロープなどがなく、駐車場との境目がわかりにくいです。
案内図をよく見て、L字の上端の場合は「漁港ストア」を目印に、右端の場合はクルマ入場口を基点として駐車するのが安心です。また、視界の悪いときに海に近づくのは大変危険なので、岸壁沿いも駐車禁止とされています。
白線などもありませんが、開始時間が近づくにつれてリピーターと思われるクルマを中心に徐々に秩序が生まれ、きれいに車列ができました。
駐車場は約500台が用意されていますが、天候に恵まれた日などは満車や渋滞になるそう。早めに到着するか、あるいは会場到着が6時以降になりますが、日曜朝市循環バス「いさば号」を利用する方法もあります。
公衆トイレは1か所。朝市の開催時間中は仮設トイレも増設されます。道路を渡った先には「ローソン 八戸夢の大橋店」もあるので、飲み物などの調達には困りません。朝市で食べ歩きを考えるなら、夕食は軽めにしておくのがおすすめ。
クルマを停めたら、あとは開店まで待機。このとき、車中泊仕様車やキャンピングカーなら仮眠ができて便利です。
午前2時頃には本部が設置され、続々と出店の軽トラックや来場者のクルマが集まってきました。出店エリアがぼんやりと光り、静かな高揚感が会場を包んでいきます。
このとき「少しでもトイレに近いところ……」と出店エリアに駐車していたら大変。深夜に「クルマを移動してください」とアナウンスされることになります。
私が目撃したところでも、クルマだけ置いてドライバーがどこかに行ってしまったのか、あるいは出るに出られなくなってしまったのか、屋台に交じってポツンと残されている一般車がありました。
朝市らしく、決まった開店時間や閉店時間はありません。全体の開催時間も「夜明け~午前9時」という緩やかな設定。準備ができた店舗から販売が始まり、午前4時にはほとんどの店舗がオープンしていました。
日中の静かな漁港とは一変。突如として現れた屋台群は、不夜城のような、あるいはアジアの街の夜市のような……。すでに行列ができている店舗もあり、活気に包まれています。
屋台で食べ歩きを楽しむ
ほんの数時間前までがらんとしていた空間に屋台がずらり!天候や開催日(定例か臨時か)によって異なりますが、全長約800mにも及ぶといいます。
一般的にイメージされる青果や乾物に留まらず、食べ歩きができるテイクアウトフードが多くあるのが館鼻岸壁朝市の特徴。
焼き鳥、焼きそば、たこ焼きといった屋台の定番から、コーヒー、パン、ラーメン、焼き魚、汁物、エスニック料理まで「ここで食べられないものはない!」と思わせるほどの豊富な品揃え。
全体としては食べ物が多いですが、金物、ミシン、ハンドメイド雑貨、工芸品、アクセサリーなどの変わり種も。かつては自動車まで売られていたとか……?
出店のおともは軽トラックやキッチンカー、普通乗用車などさまざま。多くの屋台が手慣れた様子でタープテントを立てています。
夜の気配が残る薄闇のなか、しかも雨という悪条件にもかかわらず、白い煙とともに次々と商品を揚げているのは大人気の「しおてばの大安食堂」!
その名のとおり塩手羽を看板メニューとする同店は午前4時でも大行列で、すでに完売の商品も出ているほどです。
飲食スペースを設ける店舗もあるようですが、複数の店を買い回りたい場合や、今回のように悪天候のこともあります。キャンピングカーならクルマに戻って食べられるので快適です。冷蔵庫があれば生鮮品も購入できます。
鍋や汁物に南部せんべいを入れた「せんべい汁」は八戸の郷土料理。だしを吸ったせんべいは、麩よりは硬く、けれど餅よりは軟らかく不思議な触感。ほっこりと心身が温まります。
「点心工房」のアツアツ十和田焼き小籠包も行列ができる人気でした。ほかにもタンドール窯でナンを焼いているお店があったり、海鮮を炭焼きしているお店があったり……。
時間とともに人が増え、空が完全に明るくなる頃には完売のお店も出てきます。通路も人で埋まり、すれ違うのがだんだん大変になってきました。
1日の来場者は1万人とも2万人とも言われます。これだけの規模の朝市が冬季を除いた毎週行われ、ときには臨時開催もあるというのは全国でも珍しいのではないでしょうか。
午前9時にはすっかり店じまい。あれだけの喧噪がウソのように、出店者も来客も跡形もなく消え去っていました。「もしかして夢だった?」と思わせる静けさが港に戻ってきます。
毎週日曜日、夜明けから開催
開催は3月中旬から12月までの毎週日曜日。多少の雨なら決行です。GWやお盆には臨時開催もあるので公式サイトをチェック。
時間は夜明けから9時頃までですが、店舗によって異なり、開店から1時間ほどで完売してしまう商品も。お目当ての品がある場合は、開店と同時に訪れるのがおすすめです。
現在のところ朝市の開始までは車内で仮眠・待機できますが、キャンプ行為やゴミ投棄などの迷惑行為があればルールが変わっていく可能性もあります。良識をもって楽しみたいですね。