「災害救助犬」に、どんなイメージを持っていますか?
みなさんは「災害救助犬」を知っていますか?
災害救助犬とは、大雨・台風・地震 といった災害等で行方不明になっている人を、優れた嗅覚で捜索するように訓練された犬のことです。人を捜す犬、と聞くと警察犬などをイメージしますが、警察犬が特定の人の臭いを追うのに対し、災害救助犬は空気中に漂う臭いを嗅ぎ分けて、不特定の人(行方不明者)を捜す訓練を受けています。
ニュースやSNSで、世界各国の被災地で活動をする救助犬の姿を目にしたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。日本では、自衛隊や警察に所属する救助犬のほかに、NPO団体や個人の民間ボランティアが育成・訓練をした災害救助犬たちが活動しています。
災害救助犬とハンドラーは、強い絆で結ばれている“バディ” となる
コアはホワイトスイスシェパードという犬種のオス。2018年にJKC(ジャパンケンネルクラブ)災害救助犬認定試験に合格して、民間ボランティアとして災害救助犬の活動をしています。そして、私はコアの家族でありハンドラーでもあります。
ハンドラーとは、災害救助犬とともに訓練を積み、現場で一緒に捜索をする相棒のことで、指導手とも呼ばれています。専門の訓練士がハンドラーを務めますが、民間ボランティアでは飼い主がハンドラーを務めることもあります。
捜索活動の現場では、ハンドラーが捜索の作戦を考え、救助犬の安全を確保しつつ、救助犬のボディシグナルや表情をよく見て、要救助者(災害に遭って救助を求めている人)の発見につなげます。要救助者を見つけた救助犬は、ハンドラーに吠えて知らせます。チームを組んで日々捜索訓練している救助犬とハンドラーは、強い絆で結ばれているバディなのです。
災害救助犬の訓練を始めたあの日のこと
「コア君は、どうして災害救助犬になったの?」と聞かれることがあります。コアと私が災害救助犬の活動を始めたきっかけは、5年前、友人の救助犬の訓練のお手伝いに行ったことでした。
その場で捜索訓練に参加してみたら、コアは水を得た魚の様に生き生きとしていたのです。その姿を見て、正式に訓練に参加させてもらうことにしました。
私自身も訓練に参加するたびに、犬たちの能力に驚き、犬と心を重ね、一体になって作業することにやり甲斐を感じるようになりました。日々の訓練や共同作業を通して、お互いに理解と信頼感が深まり、日常のコアとの関係もそれまで以上に良くなっていきました。
コアはとても嗅覚に優れていて、性格は意欲的でエネルギッシュ。甘えん坊ではありますが、自分に自信があり、決して途中であきらめません。家庭犬としては活動的過ぎて大変なこともありますが(笑)、救助犬としてはとても良い資質を持っています。
救助犬の捜索訓練に正解はないと私は思っています。ただ、訓練を始めたあの日から心がけてきたのは、バディであるコアを信頼し、バディの能力を引き出し、バディの意欲を生かす、ということでした。
被災地での捜索活動のレポート、そして、今、思うこと
2021年7月、静岡県熱海市伊豆山で発生した土石流災害で、コアは初めて災害現場の捜索に参加しました。たくさんの消防団員や自衛隊員に囲まれて緊張感でピリピリする空気の中、足を取られて埋まってしまうようなぬかるみでも、コアは全く怯むことなく意欲的に捜索しました。
その現場で感じたのは、優れた嗅覚による捜索能力だけではなく、一緒にいる人の心を和らげるという“犬の大きな力”も感じました。休憩の時間に、消防や自衛隊の人たちがコアと触れ合うことでホッとした表情になっていたのです。その日以来、災害が起きないことを願いながらも訓練を続け、災害時にはしっかり力になれるようになりたいと強く思うようになりました。
災害救助犬は、とても厳しい訓練を受け、自由のない生活を送っているようにイメージされる方もいらっしゃるようです。時々、SNSなどで「犬がかわいそう」というコメントを目にすることもあります。でも、救助犬の訓練自体は大好きなハンドラーと一緒に、犬自体も楽しみながら学んでいます。また、訓練や実働、防災イベントに参加しているとき以外は、コアは普通の家庭犬として、散歩をしたり、のんびり甘えん坊にして暮らしています。アウトドアで遊ぶのも大好き!
そんなコアと私のライフスタイルを、これからみなさんに紹介していけたらと思います。
災害救助犬としてがんばるコアのホームページはこちら。
子供の頃から動物とアウトドアが大好き。ロサンゼルスのアニマル・シェルターでボランティア・スタッフをしながら犬のことを学ぶ。コアとお互いに良いバディでありたいと日々奮闘中。